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夢具
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「消えた・・・・・・」
トレインが消えた事に驚き、アルフがそう呟いたその時、アルフの後方で『ベシャッ』という音が聞こえた。
後ろを振り返るとそこにはついさっき消えたばかりのトレインが倒れていた。
「ううう、いったーー、顔面を強く打っちゃいました。だから自分でやると言ったのに・・・・・・」
「おい、お前まさか本当にもう帰ってきたのか?」
「ええ、まあ、帰ってきたというか、帰ってこさせられたというか」
トレインは顔をさすりながら言った。
「それで、夢具とやらは持ってきたのか?」
「はい! バッチリです! 見てください、この輝かしい超絶レア級の夢具を!」
満面の笑みでトレインはアルフに二枚の紙切れを見せた。
その紙は紫色で、水晶を持ち、占い師の様な格好をしたバクの形だった。
「・・・・・・・・・・・・それは何だ?」
トレインは得意気な顔だったが、アルフの目にはただの紙切れとしか目に映っていなかった。
「何って夢具ですよ~」
「はあ・・・・・・、もういい、さっさと鍵の在処だけ教えろ」
「えええ、ちょっと待って下さいよー。この夢具本当に凄いんですよ!」
トレインは自分に背を向けるアルフの裾を引っ張り引き止めた。
「おいこら、引っ張るな! そんな紙切れに用は無い!」
アルフは縋り付くトレインの顔を掌で押し無理矢理引き剥がそうとした。
「そんな事言わずに~」
「あの、それ私のだし、私が貰ってもいい?」
二人の会話を聞いて、すっかり忘れられているエルリィスがおずおずとそう言うと、トレインが顔をパッと明るくさせた。
「流石はエルリィスさん! さ、こちらをどうぞ!」
トレインは檻の中のエルリィスの手を取り夢具を手渡した。
「それで、これはどう使ったらいいの?」
「はい、使い方は至って簡単です。その紙を枕の下に置いて寝るだけです。するとなんと! 未来に起こる出来事を夢で見る事が出来ま・・・・・・・・・・・・」
人差し指を立ててそこまで言うと、トレインはフリーズした。
そしてその場に居る物全員が沈黙し、トレインはその時間が重く、永遠に感じられた。
「ごめんなさい、それ、多分私には必要ないかも・・・・・・」
「ええっと、夢具の裏に知ってる人の名前を書くとその人の未来を見る事も出来るという裏技もあってですね!」
トレインは顔を青くしながら冷や汗を流し、そう言った。
「うーん、やっぱり・・・・・・それでもそれ要らないかも。知りたい人の未来とかも見ようと思えば自分で見られるし・・・・・・」
そして場は再び長い静寂に包まれた。
その静寂を真っ先に打ち破ったのはアルフだった。
「ふっざけんなよ! こんなの要るかっ!」
「そ、そんなあ~、でもこれ超絶レアなんですよ? 凄く価値があるんです」
「こいつにはただの紙くずに等しいだろ。こんなもんチェンジだチェンジ!」
「ええ、チェンジとかそんなの・・・・・・んぅっ」
無いと続けようとしてトレインはその言葉を紡ぐことが出来なかった。
なぜならば、口を後ろから大きな手で塞がれていたからだった。
「チェンジ? 上等じゃねえか」
トレインはその聞き慣れた声に驚き、アルフは気配も無く突如現れた男に目を見張り、エルリィスは足音すらしなかった知らない男の声に状況を飲み込もうと努めていた。
「かちょ、じゃなくてロギ様! なんでここに?」
口を塞いでいた手をずらし、トレインはそう言った。
「うん? 面白そうな事になってるし、せっかくこの姿になるのも久し振りだからな。俺様が直々に営業指導しに来てやったという訳だ。ありがたく思えよっ!」
ロギはトレインの背中を思い切りどついた。その弾みでトレインは廊下の端まで飛ばされていった。
「うう、いだい・・・・・・」
「・・・・・・今度はなんだ? そいつは誰だ?」
「ええっと、ロギ様は僕の上司です」
腰を擦りながらトレインはそう答えた。
「よう、青年、チェンジに挑みたいんだってなぁ?」
「え、ちょ、ロギ様、そんなルール初耳なんですけど!」
「うるせー、今作った」
「ええー、そんな無茶苦茶な・・・・・・バレたらクビですよクビ」
「ルールなんて破った方が楽しいんだよ! そんでもって、バレなきゃいい!」
ロギはドヤ顔でそう言った。トレインはこの人に何を言っても無駄だろうと諦めた。
「それで? チェンジすんのか?」
「その紙切れが少しでもマシな物になるんだったらな」
「そいつはお前次第だな。ルールは簡単、手元の夢具二枚と引き換えでこの箱から一枚だけ他の夢具を引いてもらう」
いつの間にかどこから出したのかロギは箱の真ん中に『?』が書かれた黒い箱を見せた。
「この中には超ウルトラスーパーレア級からただのカスまで入っている。当たりが出るか、ハズレが出るかはまさに運次第だ」
「ちょっと待って下さい、その夢具はエルリィスさんのですから一応エルリィスさんの意思を聞いた方が」
「エルリィス、俺に考えがある。俺を信じて全てを委ねろ」
そうアルフが言うのを聞いてエルリィスは頷いた。
「私の夢具はアルフに託します」
エルリィスは手にある夢具をアルフに渡した。
「よし、泣いても笑ってもチャンスは一回コッキリだ。せいぜい俺様を楽しませる為にいいのを引けよ?」
ロギはその獣の様な白い瞳を真っ直ぐにアルフに向けた。
「ああ、悪いがちょっとばかし本気を出させてもらおうか。これでも、運は人並み以上にあるんでな」
アルフは右手の拳を上げ、挑戦的な瞳でロギに視線を返した。その瞳の色はいつもの黒い瞳ではなく、金色の焔が灯っていた。
トレインが消えた事に驚き、アルフがそう呟いたその時、アルフの後方で『ベシャッ』という音が聞こえた。
後ろを振り返るとそこにはついさっき消えたばかりのトレインが倒れていた。
「ううう、いったーー、顔面を強く打っちゃいました。だから自分でやると言ったのに・・・・・・」
「おい、お前まさか本当にもう帰ってきたのか?」
「ええ、まあ、帰ってきたというか、帰ってこさせられたというか」
トレインは顔をさすりながら言った。
「それで、夢具とやらは持ってきたのか?」
「はい! バッチリです! 見てください、この輝かしい超絶レア級の夢具を!」
満面の笑みでトレインはアルフに二枚の紙切れを見せた。
その紙は紫色で、水晶を持ち、占い師の様な格好をしたバクの形だった。
「・・・・・・・・・・・・それは何だ?」
トレインは得意気な顔だったが、アルフの目にはただの紙切れとしか目に映っていなかった。
「何って夢具ですよ~」
「はあ・・・・・・、もういい、さっさと鍵の在処だけ教えろ」
「えええ、ちょっと待って下さいよー。この夢具本当に凄いんですよ!」
トレインは自分に背を向けるアルフの裾を引っ張り引き止めた。
「おいこら、引っ張るな! そんな紙切れに用は無い!」
アルフは縋り付くトレインの顔を掌で押し無理矢理引き剥がそうとした。
「そんな事言わずに~」
「あの、それ私のだし、私が貰ってもいい?」
二人の会話を聞いて、すっかり忘れられているエルリィスがおずおずとそう言うと、トレインが顔をパッと明るくさせた。
「流石はエルリィスさん! さ、こちらをどうぞ!」
トレインは檻の中のエルリィスの手を取り夢具を手渡した。
「それで、これはどう使ったらいいの?」
「はい、使い方は至って簡単です。その紙を枕の下に置いて寝るだけです。するとなんと! 未来に起こる出来事を夢で見る事が出来ま・・・・・・・・・・・・」
人差し指を立ててそこまで言うと、トレインはフリーズした。
そしてその場に居る物全員が沈黙し、トレインはその時間が重く、永遠に感じられた。
「ごめんなさい、それ、多分私には必要ないかも・・・・・・」
「ええっと、夢具の裏に知ってる人の名前を書くとその人の未来を見る事も出来るという裏技もあってですね!」
トレインは顔を青くしながら冷や汗を流し、そう言った。
「うーん、やっぱり・・・・・・それでもそれ要らないかも。知りたい人の未来とかも見ようと思えば自分で見られるし・・・・・・」
そして場は再び長い静寂に包まれた。
その静寂を真っ先に打ち破ったのはアルフだった。
「ふっざけんなよ! こんなの要るかっ!」
「そ、そんなあ~、でもこれ超絶レアなんですよ? 凄く価値があるんです」
「こいつにはただの紙くずに等しいだろ。こんなもんチェンジだチェンジ!」
「ええ、チェンジとかそんなの・・・・・・んぅっ」
無いと続けようとしてトレインはその言葉を紡ぐことが出来なかった。
なぜならば、口を後ろから大きな手で塞がれていたからだった。
「チェンジ? 上等じゃねえか」
トレインはその聞き慣れた声に驚き、アルフは気配も無く突如現れた男に目を見張り、エルリィスは足音すらしなかった知らない男の声に状況を飲み込もうと努めていた。
「かちょ、じゃなくてロギ様! なんでここに?」
口を塞いでいた手をずらし、トレインはそう言った。
「うん? 面白そうな事になってるし、せっかくこの姿になるのも久し振りだからな。俺様が直々に営業指導しに来てやったという訳だ。ありがたく思えよっ!」
ロギはトレインの背中を思い切りどついた。その弾みでトレインは廊下の端まで飛ばされていった。
「うう、いだい・・・・・・」
「・・・・・・今度はなんだ? そいつは誰だ?」
「ええっと、ロギ様は僕の上司です」
腰を擦りながらトレインはそう答えた。
「よう、青年、チェンジに挑みたいんだってなぁ?」
「え、ちょ、ロギ様、そんなルール初耳なんですけど!」
「うるせー、今作った」
「ええー、そんな無茶苦茶な・・・・・・バレたらクビですよクビ」
「ルールなんて破った方が楽しいんだよ! そんでもって、バレなきゃいい!」
ロギはドヤ顔でそう言った。トレインはこの人に何を言っても無駄だろうと諦めた。
「それで? チェンジすんのか?」
「その紙切れが少しでもマシな物になるんだったらな」
「そいつはお前次第だな。ルールは簡単、手元の夢具二枚と引き換えでこの箱から一枚だけ他の夢具を引いてもらう」
いつの間にかどこから出したのかロギは箱の真ん中に『?』が書かれた黒い箱を見せた。
「この中には超ウルトラスーパーレア級からただのカスまで入っている。当たりが出るか、ハズレが出るかはまさに運次第だ」
「ちょっと待って下さい、その夢具はエルリィスさんのですから一応エルリィスさんの意思を聞いた方が」
「エルリィス、俺に考えがある。俺を信じて全てを委ねろ」
そうアルフが言うのを聞いてエルリィスは頷いた。
「私の夢具はアルフに託します」
エルリィスは手にある夢具をアルフに渡した。
「よし、泣いても笑ってもチャンスは一回コッキリだ。せいぜい俺様を楽しませる為にいいのを引けよ?」
ロギはその獣の様な白い瞳を真っ直ぐにアルフに向けた。
「ああ、悪いがちょっとばかし本気を出させてもらおうか。これでも、運は人並み以上にあるんでな」
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