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覚悟
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男は常に一人だった。
周りにいくら従者を従えようと、信頼しているものはおらず、少しでも不穏な動きがあれば容赦なく殺してきた。
一代で巨万の富を得、国を築き、侵略し続け領地を広げていった。
たったの十年で五つの大国と、数十箇所の小国を手中に収めた事は男の伝説にもなった。
縁談の話は数多くあったが、いつ裏切られ、命を狙われるか分からず、結局妃を娶る事もなく、子も居なかった。
黙っていても一代で国が滅びる。
だが、そんな事は男にとってどうでも良かった。何故ならば、十啓を揃えた時、それ即ちこの世の全てを手に入れた時、死さえも超越する事が出来るとされていたからだった。
そんな男に、今窮地が訪れていた。
「小僧・・・・・・小賢しい、・・・・・・マネを・・・・・・・・・・・・」
オルディンは自らの首を短剣で刺そうとしている手を戦慄かせ、必死に抵抗していた。
「ふん、何とでも言え。そしてさっさとクタバレ」
アルフは冷徹な視線をオルディンに浴びせそう言った。
アルフはトレインから鍵の在処を聞き出した後、夢具に書いた内容は、オルディンが腕から鍵を取り出し、アルフに渡す事と、その後自害するという事だった。
「クククク・・・・・・クハハハハ」
「ん?」
急にオルディンが笑いだし、アルフは警戒した。最初は己の運命を受入れ、薄ら笑いを浮かべているのかとも思ったが、それは誤りだとすぐに悟った。
ギャン!! 擬音で表すならまさにそんな音が部屋に響いた。
それは一瞬の事だった。
オルディンはアルフとの間合いを一気に詰め、手にしていた短剣で斬りかかった。
アルフは持ち前の反射神経ですぐに短剣を抜きオルディンの重い刃を正面で受け止めた。
「くっ・・・・・・」
「ふははは、ガンダーヴよ、貴様に借りが出来たようだな」
「借り? はて? 借りを返してくれた事なぞ今まで記憶にございませんな」
ガンダーヴは小首を傾げて皮肉たっぷりに言った。
アルフは事態を飲み込んだ。オルディンが夢具の呪縛から自由になれたのは、あのガンダーヴという男が夢具を破壊し、オルディンが夢の中で死ぬ前に目が覚めたせいだった。
「はあああああっ!」
オルディンの咆哮が轟いた。攻撃の手を緩めることなくアルフに連撃した。その攻撃の速さにアルフは怯むことなく的確に剣を受け続けた。
だが、短剣での戦いなら得手に帆を揚げるのはアルフの方だった。
オルディンの斬撃を大きく跳ね除けた後、オルディンが短剣を長剣と同じ様に大きく振りかざした隙を狙い、瞬時に走り出した。その速さはオルディンの目視で認識出来ないほど素早かった。
「なっ、どこに・・・・・・ぐっ!」
アルフはオルディンの背後に回り込み、オルディンの剣を持つ右腕を動かないように捻りを加えて掴み、左手に持ち替えていた剣をオルディンの首元にあてがった。
「鍵さえ手に入ればもうあんたに用はない」
「狙いはあの巫女か?」
「夢見の巫女さえ居なければ、俺がわざわざ手を下さなくてもあんたは他国から命を狙われて、放っておいても死ぬのが目に見えている。それだけ周りから恨みを買っているからな」
するとオルディンは再び下卑た笑いを漏らした。
「手緩い。巫女を解放して、儂は生かそうとでも言うのか? ハハハハッ! 笑わせてくれる! お前もあの巫女も甘すぎて・・・・・・片腹痛いわっ!」
「くっ!」
オルディンはアルフとの体格差を利用して思い切り後ろに倒れ込み、アルフを壁に追いやった。アルフの性格から刺す度胸など無いと踏んでの行動だった。思惑通りにアルフの手から逃れると一定の間合いを取り直した。
「よく見るとその顔、どこかで見た事があるな・・・・・・」
闇に慣れてきたオルディンは、フードが後ろにずり落ちたアルフの顔を見てそう言った。
「・・・・・・そうかよ、どこにでもある顔だろ?」
アルフは今までずっと人前では顔を隠すようにしてきた。それは隠密行動が必要な仕事では素性を隠すにも好都合だった。人前に出る必要がある時はルドに任せればいい。そうやってずっと隠していた。
「いいや、思い出したぞ、間違いない。キ・・・・・・」
オルディンが何かを言おうとしてアルフは一気に斬り込んだ。
激しい刃と刃のぶつかる音が響いた。オルディンはギリギリの所でアルフの剣を受け止めた。今まで以上に強い力で押されオルディンはアルフの顔を見た。その顔は眉間に皺がより、先程までとは比べ物にならない明らかな殺気が溢れ出ていた。
「それ以上その名を口にするな。虫唾が走る」
「ククク・・・・・・いいぞ、その顔・・・・・・。面白くなってきたではないか! いい事を教えてやろう。覚悟の無い者には覇道は歩めぬ」
「覚悟・・・・・・だと?」
押しつ押されつの鍔迫り合いを続けていたが、オルディンが鬼気迫る形相で獣の様な声を張り上げアルフを押し返した。
「その覚悟を見せてやろう」
オルディンは短剣を捨て、壁に掛けていた斧を引っ掴んだ。
「こうやってな!!」
アルフはその一瞬の間で何が起こったのかが分からなかった。
オルディンは斧を振りかざし、肩から胸にかけて大きく斬り裂いた。
「あああぁああぁぁーーーっ」
部屋には断末魔の声が響いた。
周りにいくら従者を従えようと、信頼しているものはおらず、少しでも不穏な動きがあれば容赦なく殺してきた。
一代で巨万の富を得、国を築き、侵略し続け領地を広げていった。
たったの十年で五つの大国と、数十箇所の小国を手中に収めた事は男の伝説にもなった。
縁談の話は数多くあったが、いつ裏切られ、命を狙われるか分からず、結局妃を娶る事もなく、子も居なかった。
黙っていても一代で国が滅びる。
だが、そんな事は男にとってどうでも良かった。何故ならば、十啓を揃えた時、それ即ちこの世の全てを手に入れた時、死さえも超越する事が出来るとされていたからだった。
そんな男に、今窮地が訪れていた。
「小僧・・・・・・小賢しい、・・・・・・マネを・・・・・・・・・・・・」
オルディンは自らの首を短剣で刺そうとしている手を戦慄かせ、必死に抵抗していた。
「ふん、何とでも言え。そしてさっさとクタバレ」
アルフは冷徹な視線をオルディンに浴びせそう言った。
アルフはトレインから鍵の在処を聞き出した後、夢具に書いた内容は、オルディンが腕から鍵を取り出し、アルフに渡す事と、その後自害するという事だった。
「クククク・・・・・・クハハハハ」
「ん?」
急にオルディンが笑いだし、アルフは警戒した。最初は己の運命を受入れ、薄ら笑いを浮かべているのかとも思ったが、それは誤りだとすぐに悟った。
ギャン!! 擬音で表すならまさにそんな音が部屋に響いた。
それは一瞬の事だった。
オルディンはアルフとの間合いを一気に詰め、手にしていた短剣で斬りかかった。
アルフは持ち前の反射神経ですぐに短剣を抜きオルディンの重い刃を正面で受け止めた。
「くっ・・・・・・」
「ふははは、ガンダーヴよ、貴様に借りが出来たようだな」
「借り? はて? 借りを返してくれた事なぞ今まで記憶にございませんな」
ガンダーヴは小首を傾げて皮肉たっぷりに言った。
アルフは事態を飲み込んだ。オルディンが夢具の呪縛から自由になれたのは、あのガンダーヴという男が夢具を破壊し、オルディンが夢の中で死ぬ前に目が覚めたせいだった。
「はあああああっ!」
オルディンの咆哮が轟いた。攻撃の手を緩めることなくアルフに連撃した。その攻撃の速さにアルフは怯むことなく的確に剣を受け続けた。
だが、短剣での戦いなら得手に帆を揚げるのはアルフの方だった。
オルディンの斬撃を大きく跳ね除けた後、オルディンが短剣を長剣と同じ様に大きく振りかざした隙を狙い、瞬時に走り出した。その速さはオルディンの目視で認識出来ないほど素早かった。
「なっ、どこに・・・・・・ぐっ!」
アルフはオルディンの背後に回り込み、オルディンの剣を持つ右腕を動かないように捻りを加えて掴み、左手に持ち替えていた剣をオルディンの首元にあてがった。
「鍵さえ手に入ればもうあんたに用はない」
「狙いはあの巫女か?」
「夢見の巫女さえ居なければ、俺がわざわざ手を下さなくてもあんたは他国から命を狙われて、放っておいても死ぬのが目に見えている。それだけ周りから恨みを買っているからな」
するとオルディンは再び下卑た笑いを漏らした。
「手緩い。巫女を解放して、儂は生かそうとでも言うのか? ハハハハッ! 笑わせてくれる! お前もあの巫女も甘すぎて・・・・・・片腹痛いわっ!」
「くっ!」
オルディンはアルフとの体格差を利用して思い切り後ろに倒れ込み、アルフを壁に追いやった。アルフの性格から刺す度胸など無いと踏んでの行動だった。思惑通りにアルフの手から逃れると一定の間合いを取り直した。
「よく見るとその顔、どこかで見た事があるな・・・・・・」
闇に慣れてきたオルディンは、フードが後ろにずり落ちたアルフの顔を見てそう言った。
「・・・・・・そうかよ、どこにでもある顔だろ?」
アルフは今までずっと人前では顔を隠すようにしてきた。それは隠密行動が必要な仕事では素性を隠すにも好都合だった。人前に出る必要がある時はルドに任せればいい。そうやってずっと隠していた。
「いいや、思い出したぞ、間違いない。キ・・・・・・」
オルディンが何かを言おうとしてアルフは一気に斬り込んだ。
激しい刃と刃のぶつかる音が響いた。オルディンはギリギリの所でアルフの剣を受け止めた。今まで以上に強い力で押されオルディンはアルフの顔を見た。その顔は眉間に皺がより、先程までとは比べ物にならない明らかな殺気が溢れ出ていた。
「それ以上その名を口にするな。虫唾が走る」
「ククク・・・・・・いいぞ、その顔・・・・・・。面白くなってきたではないか! いい事を教えてやろう。覚悟の無い者には覇道は歩めぬ」
「覚悟・・・・・・だと?」
押しつ押されつの鍔迫り合いを続けていたが、オルディンが鬼気迫る形相で獣の様な声を張り上げアルフを押し返した。
「その覚悟を見せてやろう」
オルディンは短剣を捨て、壁に掛けていた斧を引っ掴んだ。
「こうやってな!!」
アルフはその一瞬の間で何が起こったのかが分からなかった。
オルディンは斧を振りかざし、肩から胸にかけて大きく斬り裂いた。
「あああぁああぁぁーーーっ」
部屋には断末魔の声が響いた。
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