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逃走
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「これで手足は自由になりましたね」
ルドは檻の鍵とにらめっこをしながらそう言った。
「はい」
エルリィスはアルフの針金を使い、手足の枷を全て外してみせた。右手首の枷が一番時間が掛かったが、他の三ヶ所を外している間に少しずつ慣れていった為なんとか外す事が出来た。
「こちらもあと少しでどの鍵が牢屋の鍵か分かりそうですよ」
ルドはエルリィスが鍵を外している間に鍵束から鍵を全て外し、床に並べて観察していた。
「最初からこうしておけば良かったんです。大小ありますが、鍵穴からして牢屋の鍵はやや大きめ、この塔の牢屋は沢山ある割にガラガラです。まあ、オルディンと言う男は長く捕らえるよりさっさと殺してしまう方が好きなのでしょうね。毎日使う事を考えて、一番摩耗している鍵を選べば・・・・・・、恐らくこれでしょう」
ルドは無数に並べられた鍵の中から一つの鍵を選び取り、牢屋の鍵穴に差し込んだ。鍵はルドの推測通り、鍵穴の中で小気味よい音を奏でた。
「ふふふ、予想通り開きましたよ!」
「わあ、凄いですね!」
エルリィスは手足の枷無しに牢屋から出られる時が来るとは思っていなかっただけに心の底から嬉しく感じた。一歩牢屋の外に出るといつもと同じ廊下なのに、まるでいつもとは違う世界に感じられた。
「そもそも、私の辞典が記すには針金で鍵を開けるなんて論外です。あんなの、盗賊の様に長年の経験を積まなければ開けられる訳がないと書いてあるのですよ」
「あの・・・・・・」
エルリィスはルドに声を掛けたがルドはひたすら呟き続けた。
「よっぽど特殊な針金なのでしょうかこれ? まあ、エルリィスさんは十啓ですから特殊な力があるのか無いのか・・・・・・」
「あ、あのう!」
今度はもう少し強めに言うと、ルドはやっと返事をした。
「なんですか? エルリィスさん」
「そのー、今非常にまずい気がします」
エルリィスは人一倍耳が敏感だった。その為異変にはすぐ気がついた。
「え?」
ルドは廊下の先を見ると兵達がすっかり起きてしまい、こちらに向かってきていた。
「侵入者だ! 巫女を連れ出そうとしている。直ちに捕縛せよ!」
「げげぇ!」
すぐに逃げなければ。ルドの頭をよぎったのは当たり前の事であったが後ろは行き止まり、正面にはあまりに不利すぎる兵の数、兵を一掃しようにも自分に戦闘系の魔法は向いていない。
「エルリィスさん、一応お聞きしますが、実は超武術に長けているとか、高火力魔術が使えるとか、そんなのあったりします?」
「すみません、残念ながら・・・・・・」
幼い頃から長きに渡って閉じ込められていたエルリィスにはそんな技術は持ちえていなかった。
「はあ、ですよねーー」
ルドは脳を高速で回転させ、この状況を打破する方法を必死に考えた。
幸いアルフと幻術を使った後一眠りしていたのでそこそこ魔力は回復していたが、一か八かで高火力魔法を放ってみるかも考えたが、威力が弱くなる事、そして放てる数を計算すると中階層まで突破出来ないのがすぐに分かった。そして兵はもう目前まで迫って来ていた。
「あまり悩んでいる暇はなさそうですね」
ルドはある一冊の辞典を具現化させ左手に持つと、ページを素早く捲っていく。
その本は動物、魔獣、草花、ありとあらゆる生物が挿絵付きで書かれた辞典だった。
廊下は狭く、天井も高くはない・・・・・・ならばこれしかない、ルドはページを決めるとその挿絵に手をかざし、魔力を一気に込めた。
「我十啓が一人、全知なる辞典が命ず、我の声に応えて姿を現せ! 牙狼虎!」
ルドが呪文を唱え終わると足元に白い光を放ちながら魔法陣が描かれ、その上に白黒の縦縞模様の大きな体に、鋭く長い牙と爪、二本に分かれた長いしっぽ、耳や首元には宝玉が付いた獣が現れ、塔全体に猛々しい咆哮が響いた。
「あ、あれは神獣牙狼虎ではないか!」
「そんな馬鹿な! 伝説上の生き物ではないのか? 何故ここに!?」
牙狼虎を目にした兵達は口々に驚きの声を上げ、目には畏怖の色が出ていた。
ルドはすぐさま牙狼虎の背にエルリィスを抱えて飛び乗ると牙狼虎の首に呪符をかけた。するとルドの意識は牙狼虎に移りルド自身は意識を失った。
「エルリィスさん、お願いがあります」
ルドは牙狼虎の口を借りて言った。
「ルドさん?」
エルリィスにはどういう状況なのかは見る事は出来なかったが、なんとなくルドが召喚した獣の背に乗せられた事は理解出来た。
「これからひと暴れしますけど、くれぐれも振り落とされないようにして下さい。ついでに私の体も落ちないようにしてもらえると助かります」
「はい、分かりました」
エルリィスはルド落とさぬよう間に挟むようにして牙狼虎の首に掴まった。
牙狼虎は片脚を慣らす様に踏み込むと一気に走り出した。
「うわーーー、こっちに来るぞ!」
「おい、怯むな! 斬りかかれ!」
何人かの兵はその場で動けなくなり、何人かは逃げ出し、そして何人かは勇敢にも剣を振りかざしてきたが、牙狼虎は口から蒼い稲妻を含んだ炎を吐いた。
炎は元々そこまで熱さはなかったが、稲妻が当たった兵は痺れて動けなくなった。
「さあ、このまま行きますよ!」
牙狼虎は階段を駆けて下り、迫り来る兵は時に脚で跳ね飛ばし、時には炎を吐きかけた。
そして、あっという間に塔から脱出してみせた。
「さて、城の敷地からはまだ出られないので若様と合流するのが先決ですね」
ルドは城の中に入ると牙狼虎から意識を戻すとエルリィスとその背から飛び降りた。
そして、牙狼虎の召喚を解き姿を消した。
「もうその子は消しちゃったんですか?」
エルリィスはフワフワな背中が気に入っていたので少し残念そうに言った。
「ええ、一応神獣ですからねぇ、長時間の使役は魔力の消費が激しいんです。さて、若様はどこにおられるのか・・・・・・」
ルドがそう呟くと、エルリィスは耳を澄ませた。
どこかの部屋から微かにだが剣がぶつかる様な音がした。
その音はエルリィスにしか分からない音だった。
「多分あちらの方角は・・・・・・オルディンの寝室だと思います」
「分かるのですか?」
「はい、目が見えない分、耳にだけは自信があるんです」
「では、まずはそこに行ってみましょう」
ルドとエルリィスは城内を兵に見つからないように忍びながらオルディンの寝室へと急いだ。
ルドは檻の鍵とにらめっこをしながらそう言った。
「はい」
エルリィスはアルフの針金を使い、手足の枷を全て外してみせた。右手首の枷が一番時間が掛かったが、他の三ヶ所を外している間に少しずつ慣れていった為なんとか外す事が出来た。
「こちらもあと少しでどの鍵が牢屋の鍵か分かりそうですよ」
ルドはエルリィスが鍵を外している間に鍵束から鍵を全て外し、床に並べて観察していた。
「最初からこうしておけば良かったんです。大小ありますが、鍵穴からして牢屋の鍵はやや大きめ、この塔の牢屋は沢山ある割にガラガラです。まあ、オルディンと言う男は長く捕らえるよりさっさと殺してしまう方が好きなのでしょうね。毎日使う事を考えて、一番摩耗している鍵を選べば・・・・・・、恐らくこれでしょう」
ルドは無数に並べられた鍵の中から一つの鍵を選び取り、牢屋の鍵穴に差し込んだ。鍵はルドの推測通り、鍵穴の中で小気味よい音を奏でた。
「ふふふ、予想通り開きましたよ!」
「わあ、凄いですね!」
エルリィスは手足の枷無しに牢屋から出られる時が来るとは思っていなかっただけに心の底から嬉しく感じた。一歩牢屋の外に出るといつもと同じ廊下なのに、まるでいつもとは違う世界に感じられた。
「そもそも、私の辞典が記すには針金で鍵を開けるなんて論外です。あんなの、盗賊の様に長年の経験を積まなければ開けられる訳がないと書いてあるのですよ」
「あの・・・・・・」
エルリィスはルドに声を掛けたがルドはひたすら呟き続けた。
「よっぽど特殊な針金なのでしょうかこれ? まあ、エルリィスさんは十啓ですから特殊な力があるのか無いのか・・・・・・」
「あ、あのう!」
今度はもう少し強めに言うと、ルドはやっと返事をした。
「なんですか? エルリィスさん」
「そのー、今非常にまずい気がします」
エルリィスは人一倍耳が敏感だった。その為異変にはすぐ気がついた。
「え?」
ルドは廊下の先を見ると兵達がすっかり起きてしまい、こちらに向かってきていた。
「侵入者だ! 巫女を連れ出そうとしている。直ちに捕縛せよ!」
「げげぇ!」
すぐに逃げなければ。ルドの頭をよぎったのは当たり前の事であったが後ろは行き止まり、正面にはあまりに不利すぎる兵の数、兵を一掃しようにも自分に戦闘系の魔法は向いていない。
「エルリィスさん、一応お聞きしますが、実は超武術に長けているとか、高火力魔術が使えるとか、そんなのあったりします?」
「すみません、残念ながら・・・・・・」
幼い頃から長きに渡って閉じ込められていたエルリィスにはそんな技術は持ちえていなかった。
「はあ、ですよねーー」
ルドは脳を高速で回転させ、この状況を打破する方法を必死に考えた。
幸いアルフと幻術を使った後一眠りしていたのでそこそこ魔力は回復していたが、一か八かで高火力魔法を放ってみるかも考えたが、威力が弱くなる事、そして放てる数を計算すると中階層まで突破出来ないのがすぐに分かった。そして兵はもう目前まで迫って来ていた。
「あまり悩んでいる暇はなさそうですね」
ルドはある一冊の辞典を具現化させ左手に持つと、ページを素早く捲っていく。
その本は動物、魔獣、草花、ありとあらゆる生物が挿絵付きで書かれた辞典だった。
廊下は狭く、天井も高くはない・・・・・・ならばこれしかない、ルドはページを決めるとその挿絵に手をかざし、魔力を一気に込めた。
「我十啓が一人、全知なる辞典が命ず、我の声に応えて姿を現せ! 牙狼虎!」
ルドが呪文を唱え終わると足元に白い光を放ちながら魔法陣が描かれ、その上に白黒の縦縞模様の大きな体に、鋭く長い牙と爪、二本に分かれた長いしっぽ、耳や首元には宝玉が付いた獣が現れ、塔全体に猛々しい咆哮が響いた。
「あ、あれは神獣牙狼虎ではないか!」
「そんな馬鹿な! 伝説上の生き物ではないのか? 何故ここに!?」
牙狼虎を目にした兵達は口々に驚きの声を上げ、目には畏怖の色が出ていた。
ルドはすぐさま牙狼虎の背にエルリィスを抱えて飛び乗ると牙狼虎の首に呪符をかけた。するとルドの意識は牙狼虎に移りルド自身は意識を失った。
「エルリィスさん、お願いがあります」
ルドは牙狼虎の口を借りて言った。
「ルドさん?」
エルリィスにはどういう状況なのかは見る事は出来なかったが、なんとなくルドが召喚した獣の背に乗せられた事は理解出来た。
「これからひと暴れしますけど、くれぐれも振り落とされないようにして下さい。ついでに私の体も落ちないようにしてもらえると助かります」
「はい、分かりました」
エルリィスはルド落とさぬよう間に挟むようにして牙狼虎の首に掴まった。
牙狼虎は片脚を慣らす様に踏み込むと一気に走り出した。
「うわーーー、こっちに来るぞ!」
「おい、怯むな! 斬りかかれ!」
何人かの兵はその場で動けなくなり、何人かは逃げ出し、そして何人かは勇敢にも剣を振りかざしてきたが、牙狼虎は口から蒼い稲妻を含んだ炎を吐いた。
炎は元々そこまで熱さはなかったが、稲妻が当たった兵は痺れて動けなくなった。
「さあ、このまま行きますよ!」
牙狼虎は階段を駆けて下り、迫り来る兵は時に脚で跳ね飛ばし、時には炎を吐きかけた。
そして、あっという間に塔から脱出してみせた。
「さて、城の敷地からはまだ出られないので若様と合流するのが先決ですね」
ルドは城の中に入ると牙狼虎から意識を戻すとエルリィスとその背から飛び降りた。
そして、牙狼虎の召喚を解き姿を消した。
「もうその子は消しちゃったんですか?」
エルリィスはフワフワな背中が気に入っていたので少し残念そうに言った。
「ええ、一応神獣ですからねぇ、長時間の使役は魔力の消費が激しいんです。さて、若様はどこにおられるのか・・・・・・」
ルドがそう呟くと、エルリィスは耳を澄ませた。
どこかの部屋から微かにだが剣がぶつかる様な音がした。
その音はエルリィスにしか分からない音だった。
「多分あちらの方角は・・・・・・オルディンの寝室だと思います」
「分かるのですか?」
「はい、目が見えない分、耳にだけは自信があるんです」
「では、まずはそこに行ってみましょう」
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