101 / 128
トキオの部屋 『 ナジミの場合 』
しおりを挟む「それじゃ、そろそろ起こしますよ、先輩」
「う、うん」
アタシとハナ先輩が寝ているトキオに近づく。
夜明け前なので外はまだ暗い。
アタシは、さっき早起きして、というかほとんど寝てないのだが、ハナ先輩に連絡し、家に入れてもらった。
そして先輩と2人でトキオの部屋にいる。
トキオは寝ている。
ハナ先輩の言葉から推測すれば、トキオは夜明けにもきっと変身をする。
そしてその時、本当のトキオが一瞬、現れるはずだ。
まずは本当のトキオに会うことだ。
話しはそれからなのだ。
アタシとハナ先輩がトキオの枕元に立つ。
2人で顔を見合わせ、目で合図をする。
「トキオ・・・
起きて」
アタシが寝ているトキオの肩を揺らす。が、
トキオは起きない。
「トキオ、起きて」
アタシは強めにトキオの肩を揺らす。が、
トキオは全然起きない。
「ちょっと!トキオ!
起きなさいよ!」
アタシがガバガバとトキオの肩を揺らす。が、
トキオは全く起きない。
「どうしましょう、先輩。
こいつ、起きませんよ」
「そうね・・・」
ふと窓を見ると、薄っすらとカーテンの隙間が明るくなっている。
夜明けが近い。
「う、うう・・・」
トキオが小さくうめく。
「先輩!」
「ええ、起きるわよ」
「う、うう・・・」
トキオが眉間にシワを寄せて苦しみだす。
「ちょ!トキオ!大丈夫!?」
ナジミがトキオの両肩をつかんだ瞬間、トキオの目が、
カッ!
と開く。
トキオがアタシを見た瞬間、
「ナ!ナジミ!」
身を乗り出して叫ぶ。
トキオだ。
よかった・・・
いつものトキオだ。
目を見れば分かる。
こいつは紛れもなくトキオだ。
なんだか目頭が熱くなる。
トキオ・・・
が、今はそんな事は言っていられない。
「トキオ!
あんた一体どうなってんのよ!」
アタシが叫ぶ。
「ナ!ナジミ!ハナちゃん!
オレ!閉じ込められてる!出られないんだ!」
アタシと先輩を交互に見ながらトキオが叫ぶ。
「出られないって、何!?
どこから出られないのよ!?」
「ナジミ!ハナちゃん!助けてくれ!
オレを出してくれ!」
「だから、どこから出すのよ!?
どうすればいいの!?」
「うぁああ、来る!昼のヤツが来る!
ダメだ!ナジミ!ハナちゃん!
ダ、ダメだ・・・うう・・・
アイツを・・・信じちゃダメだッ!うああ!」
トキオが両手で頭をかかえて苦しみ出す。
「ちょっと!トキオ!!」
アタシが両手でトキオをおさえると、ピタッとトキオの動きが止まる。
「あの時と一緒だわ・・・」
ハナ先輩がつぶやく。
「あの時と一緒?」
「そう。よく見ててナジミ。
変身するわよ」
「変身・・・?」
動きの止まったトキオの頭が、小さくブルブルっと震える。
トキオがゆっくりと体を起こす。
トキオがニッコリと笑う。
「あ、おはよう。
ナジミちゃんに、お姉ちゃん」
違う・・・コイツ、違う・・・トキオじゃない。
アタシには、トキオの目の奥に、なにかが欠けているソレが分かった。
これが変身したってこと?
「お、お早うトキオ・・・」
アタシがつぶやく。
「2人で、何してるの?」
トキオが、アタシとハナ先輩をきょとんと見て言う。
「ううん。
何でもないの・・・
先輩!行きましょう!」
「う、うん」
「それじゃ、トキオ!
また後でな!」
バタン!
アタシとハナ先輩はトキオの部屋を後にする。
--- ハナの部屋 ---
「先輩、アレやばいっスよ」
アタシが小声で言う。
「でしょ?
それに、何か変なこと言ってたわね」
「信じるな・・・ですよね?」
「うん。誰の事かしら・・・」
「昼のトキオか、夜のトキオか・・・
それとも両方か?どうなんでしょう?」
「とりあえず、昼と夜のトキオには、本当のトキオが出てくる事は伏せておいた方が良さそうね」
「ですね。
お互いに、本当のトキオの記憶がないみたいですから・・・
あ、でも、」
「何?」
「ユイさんにはどうします?」
「・・・そうね。
今はまだ、黙っておいて、ナジミ」
「わかりました、先輩。
それと・・・
先輩、昼のトキオからは、お姉ちゃんって呼ばれてるんですか?」
「そ、そ、そうね・・・
それは、アイツが勝手にそう呼んでるのよ」
「夜のトキオからは、呼び捨てでしたよね?」
「そ、それもアイツが勝手に呼んでるのよ」
何で先輩、赤くなってんだろう?
すげー、モジモジしてるし。
ま、そんな事より、
「先輩、トキオが言ってた、閉じ込められてるって、どういう事でしょう?」
「それなんだけど・・・」
「何です?」
「トキオ、前に言ってたの」
「何をですか?」
「呪われてるって・・・」
「呪われてる?
それ・・・あの仮面の事ですか?」
「そうだと思う」
「あんなのウソに決まってるじゃないですか」
「でしょ?
だってあれ、」
プルルルル!
うわ!電話だ!アタシの電話だ!
「すみません!先輩!」
「いいわよ、気にしないで」
アタシがスマホを見る。
ん?誰?
知らない番号だ。
こんなに朝早くに電話?
どう考えても変だ。
どうする?出るか?
えーい、もう!
とりあえず出てみよう。
「はい、もしもし・・・」
『ナジミか!?』
え?
この声・・・
「マモル?」
『ああ、俺だ』
「どうしたの?こんな早くに!」
『悪い、緊急だ』
「緊急?」
『偽物が出た』
「え?」
『俺たちの偽物が出たんだ』
「だからどういう事よ?」
『ノッペラボウとスタンガンの女だ』
「それがどうしたのよ?」
『ヤクザ相手に、偽物が暴れ回ってるんだ』
「え?」
『恐らくその影響で北と南の抗争になる』
「え?」
『これから警察が本格的に動き出す。
まだ警察はお前たちには、気づいていない』
「・・・・・」
『だが、ヤクザからの情報が洩れる可能性がある。
お前たちは俺が必ず守る。
だから絶対に妙なマネはするな。
わかったな』
「・・・・・」
『聞いてるのか?ナジミ?』
「う、うん・・・
わかった・・・」
ブツン・・・
電話が切れる。
「どうしたの?ナジミ・・・」
ハナ先輩がつぶやく。
あ、これ。
ヤベー奴よね?
そうとうヤベー奴よね?
ど、どうしよう。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる