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入学したよ〜
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前世の入学式と何ら変わらない光景に、郷愁にかられたランスは無意識に少し微笑んだ。
誇らしげに式へと臨むもの、緊張でそわそわしているもの、無関心に眠っているもの等、様々な生徒がいる中で、ランスのその微笑みは微かに愁いを帯びていた。
機微に疎いものにはわからないであろうその表情の変化は、見る人が見れば少し心配になる。そして特定の人物に庇護欲を抱かせるものだった。
実際は前世の小学校の入学式を思い出して、盛大にずっこけて鼻血を出してしまった自分を思い出していただけなのだが。
残念ながらそんなランスの思考が分からない大人たちは、これからの学園生活に不安を覚えているのかもしれない…全力でフォローしなければ!!とあさっての方向に決意していた。
学園長もその1人だ。
ランスは学園長にとってお気に入りの子供。
べっ別に美味しいお菓子を出せるからなんて…そんなんじゃないからね!!なんてことは言わないが。
庇護欲をバリバリに掻き立てられた学園長は、職権乱用ナニソレオイシイノ?とばかりにランスを呼び出すのはそう遠くはない。
何事もなく式が終わって教室へと向かうと、ランスのクラスは他とは違う様子だった。
まず他のクラスは40名ほどに対して、ランスのクラスもとい貴族科Sクラスは15名。
圧倒的に少ない。
やっぱり僕の魔法のせいかな?と怖々指定された机に座っていると、続々クラスメイトが着席していく。
またしても違和感が。
ランスは身長が小さめなので、1番前のど真ん中に座っているのはまだいい。納得ができる。
だが、自分の周りに明らかに顔面偏差値の高い人間が次々と着席していくのだ。
しかも見られている気がする…!
え…こわ。なに?いじめ…?
肩身の狭い思いで座っていると、程なく教師が入ってきた。
柔和な見た目の男の教師はニコリと微笑み、挨拶をする。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。このクラスは卒業まで僕が担当いたします。名前はルッツ・パルマーです。専門は防御魔法を教えています。これから5年間よろしくお願いしますね。なにか質問は?」
パルマー先生がそう言うと、数人からこのクラスの人数の少なさについて声が上がる。
「そうですね、では説明しましょうか。ランス・テールムくん、前に出てきてください」
ひぇ…やっぱり…いじめ…?
ぷるぷる震えながらパルマー先生の隣に立つと、そっと肩を引き寄せられ、逃げられないように押さえつけられている気がする。気のせいかもしれないけど。
そしてクラスメイト全員の視線が刺さった。
うぐぅ…。
「皆さんは入学前から魔法の授業を受けてきたと思いますが、魔法とは攻撃魔法、防御魔法、支援魔法だと教えられていますね」
うんうんと頷く数名のクラスメイト。なんかこの子達は良い子っぽい…。
僕の周りの顔面偏差値激高の男の子達は、じ…と見てるだけ。
「ですが、このランス・テールムくんはそのどれも使えません」
えっ!はぁ?どういう事?…なんでこのクラスに…?魔法が使えないならなんでここに…?
と言うような声が漏れる。
「はい、静かにしてくださいね。魔法が使えない訳ではありません。きちんと魔法実技試験を学園長自らが行った結果、合格を出しました。ランス・テールムくんは他にはない素晴らしい魔法を使えるのです」
「先生、それは今見せてもらえるのでしょうか?」
「そうよ。じゃないと納得できませんわ。攻撃でも防御でも支援でもない魔法なんて今まで聞いたこともないんですから」
「ええ、先生方も驚いていたんですよ。ですからランスくん、このクラス全員に1つずつ出して貰えますか?」
あ、そういう事ですか。いくらでも出しますよ。
僕を前に来させた理由は、お菓子をみんなの分出すっていう目的だったみたい。
まあ、実際見ないと納得できないもんね。
「わかりました。質問しても良いですか?この中で甘いものが苦手な方がいたら手をあげてください」
クラスメイトはハテナを浮かべていたが、3人ほど手をあげていた。
じゃあその3人は先にバター醤油味のポップコーンをあげようね。
「アクシオドルチェ!」
ポポポンッ
コトン。
手をあげていた3人の机の上に、ポップコーンの入ったフタ付き紙コップが現れた。
「「「「は?」」」」
「どうぞ、召し上がれ!しょっぱくて少し甘いポップコーンだよ!」
実はこの3年で、僕の魔法の実力が上がった。
初めは容器を用意しないとダメだったが、今では容器ごとお菓子を出せるようになったのだ!
前に兄上のチョコバナナクッキーの時に袋ごと出せたからね。はっきりとしたイメージがあればできる事がわかった時は感動したよ~。
しかも遠隔操作までできるの!すごくない?
だから教卓から各机にお菓子を出せたんだよ!
「………これ、なんですか……?」
「なんか白いふわふわしたものが…」
あ、そうか、見た事ないから食べ物に見えないもんね。
「それはコーンを乾燥させた後にフライパンで炒るとできるお菓子です。味付けはバターとしょっぱい調味料ですので、安心して食べてください」
「心配なら僕も同じものを食べますか?ランスくん、僕にも同じものをお願いします」
パルマー先生が味見……毒味?をしてくれるようなので、同じものをもう1つポンッと出す。
「それじゃあ他の皆は甘いお菓子を出しますね」
「あ、それも僕が食べてからの方が安心して皆さんも食べられると思うので、甘い方もお願いします」
「……先生…わかりました」
いや、先生食べたいだけだよね?
別にいいけど。
凄い期待した顔で見てくる。試験の時学園長が食べてたの羨ましそうに見てたもんね。全員。
「アクシオドルチェ!」
ポポポポンッ。
全員の机の上に8センチサイズのフルーツタルトを出した。
各々のタルトの飾りも変えて、12通りのタルトを作り出す。
今食べるもよし、持ち帰るもよしと思って個包装済み。
元日本人だからね!ドヤッ。
クラスメイトはいつも通りに唖然として固まり、パルマー先生は満面の笑みでフルーツタルトを眺めていた。
「うわぁ~凄く綺麗ですねぇ…何だか食べるのがもったいないです。飾っていてもおかしくないくらいですよ」
「あははっありがとうございます。でも生ものなので早めに食べた方がいいですよ?」
「それもそうだね。ではこの白いふわふわの方からいただきますね。皆さん、食べたい方はどうぞ召し上がってください」
パルマー先生の言葉に、我に返った生徒数人は恐る恐る袋やカップのフタを外し、口にした途端また固まった。
パルマー先生も思った以上に美味しかったみたいで笑顔で固まってた。
僕のお菓子、行動停止の効果でも付いてるのかな?ってくらい皆固まるよね。
誇らしげに式へと臨むもの、緊張でそわそわしているもの、無関心に眠っているもの等、様々な生徒がいる中で、ランスのその微笑みは微かに愁いを帯びていた。
機微に疎いものにはわからないであろうその表情の変化は、見る人が見れば少し心配になる。そして特定の人物に庇護欲を抱かせるものだった。
実際は前世の小学校の入学式を思い出して、盛大にずっこけて鼻血を出してしまった自分を思い出していただけなのだが。
残念ながらそんなランスの思考が分からない大人たちは、これからの学園生活に不安を覚えているのかもしれない…全力でフォローしなければ!!とあさっての方向に決意していた。
学園長もその1人だ。
ランスは学園長にとってお気に入りの子供。
べっ別に美味しいお菓子を出せるからなんて…そんなんじゃないからね!!なんてことは言わないが。
庇護欲をバリバリに掻き立てられた学園長は、職権乱用ナニソレオイシイノ?とばかりにランスを呼び出すのはそう遠くはない。
何事もなく式が終わって教室へと向かうと、ランスのクラスは他とは違う様子だった。
まず他のクラスは40名ほどに対して、ランスのクラスもとい貴族科Sクラスは15名。
圧倒的に少ない。
やっぱり僕の魔法のせいかな?と怖々指定された机に座っていると、続々クラスメイトが着席していく。
またしても違和感が。
ランスは身長が小さめなので、1番前のど真ん中に座っているのはまだいい。納得ができる。
だが、自分の周りに明らかに顔面偏差値の高い人間が次々と着席していくのだ。
しかも見られている気がする…!
え…こわ。なに?いじめ…?
肩身の狭い思いで座っていると、程なく教師が入ってきた。
柔和な見た目の男の教師はニコリと微笑み、挨拶をする。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。このクラスは卒業まで僕が担当いたします。名前はルッツ・パルマーです。専門は防御魔法を教えています。これから5年間よろしくお願いしますね。なにか質問は?」
パルマー先生がそう言うと、数人からこのクラスの人数の少なさについて声が上がる。
「そうですね、では説明しましょうか。ランス・テールムくん、前に出てきてください」
ひぇ…やっぱり…いじめ…?
ぷるぷる震えながらパルマー先生の隣に立つと、そっと肩を引き寄せられ、逃げられないように押さえつけられている気がする。気のせいかもしれないけど。
そしてクラスメイト全員の視線が刺さった。
うぐぅ…。
「皆さんは入学前から魔法の授業を受けてきたと思いますが、魔法とは攻撃魔法、防御魔法、支援魔法だと教えられていますね」
うんうんと頷く数名のクラスメイト。なんかこの子達は良い子っぽい…。
僕の周りの顔面偏差値激高の男の子達は、じ…と見てるだけ。
「ですが、このランス・テールムくんはそのどれも使えません」
えっ!はぁ?どういう事?…なんでこのクラスに…?魔法が使えないならなんでここに…?
と言うような声が漏れる。
「はい、静かにしてくださいね。魔法が使えない訳ではありません。きちんと魔法実技試験を学園長自らが行った結果、合格を出しました。ランス・テールムくんは他にはない素晴らしい魔法を使えるのです」
「先生、それは今見せてもらえるのでしょうか?」
「そうよ。じゃないと納得できませんわ。攻撃でも防御でも支援でもない魔法なんて今まで聞いたこともないんですから」
「ええ、先生方も驚いていたんですよ。ですからランスくん、このクラス全員に1つずつ出して貰えますか?」
あ、そういう事ですか。いくらでも出しますよ。
僕を前に来させた理由は、お菓子をみんなの分出すっていう目的だったみたい。
まあ、実際見ないと納得できないもんね。
「わかりました。質問しても良いですか?この中で甘いものが苦手な方がいたら手をあげてください」
クラスメイトはハテナを浮かべていたが、3人ほど手をあげていた。
じゃあその3人は先にバター醤油味のポップコーンをあげようね。
「アクシオドルチェ!」
ポポポンッ
コトン。
手をあげていた3人の机の上に、ポップコーンの入ったフタ付き紙コップが現れた。
「「「「は?」」」」
「どうぞ、召し上がれ!しょっぱくて少し甘いポップコーンだよ!」
実はこの3年で、僕の魔法の実力が上がった。
初めは容器を用意しないとダメだったが、今では容器ごとお菓子を出せるようになったのだ!
前に兄上のチョコバナナクッキーの時に袋ごと出せたからね。はっきりとしたイメージがあればできる事がわかった時は感動したよ~。
しかも遠隔操作までできるの!すごくない?
だから教卓から各机にお菓子を出せたんだよ!
「………これ、なんですか……?」
「なんか白いふわふわしたものが…」
あ、そうか、見た事ないから食べ物に見えないもんね。
「それはコーンを乾燥させた後にフライパンで炒るとできるお菓子です。味付けはバターとしょっぱい調味料ですので、安心して食べてください」
「心配なら僕も同じものを食べますか?ランスくん、僕にも同じものをお願いします」
パルマー先生が味見……毒味?をしてくれるようなので、同じものをもう1つポンッと出す。
「それじゃあ他の皆は甘いお菓子を出しますね」
「あ、それも僕が食べてからの方が安心して皆さんも食べられると思うので、甘い方もお願いします」
「……先生…わかりました」
いや、先生食べたいだけだよね?
別にいいけど。
凄い期待した顔で見てくる。試験の時学園長が食べてたの羨ましそうに見てたもんね。全員。
「アクシオドルチェ!」
ポポポポンッ。
全員の机の上に8センチサイズのフルーツタルトを出した。
各々のタルトの飾りも変えて、12通りのタルトを作り出す。
今食べるもよし、持ち帰るもよしと思って個包装済み。
元日本人だからね!ドヤッ。
クラスメイトはいつも通りに唖然として固まり、パルマー先生は満面の笑みでフルーツタルトを眺めていた。
「うわぁ~凄く綺麗ですねぇ…何だか食べるのがもったいないです。飾っていてもおかしくないくらいですよ」
「あははっありがとうございます。でも生ものなので早めに食べた方がいいですよ?」
「それもそうだね。ではこの白いふわふわの方からいただきますね。皆さん、食べたい方はどうぞ召し上がってください」
パルマー先生の言葉に、我に返った生徒数人は恐る恐る袋やカップのフタを外し、口にした途端また固まった。
パルマー先生も思った以上に美味しかったみたいで笑顔で固まってた。
僕のお菓子、行動停止の効果でも付いてるのかな?ってくらい皆固まるよね。
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