13 / 54
姫様、静かなスローライフを望んだらベリーハードだった件
姫様、自らの出自を誤魔化す
しおりを挟む
翌日の朝。
「ちょっとチヒロって子のところに行ってみたいんだけど、案内してくれない?」
朝食をとりながら私は向かいに座っているオカリナに頼んでみると、
「かしこまりました。近いですから徒歩でもよろしいでしょう」
朝食を終え、オカリナに案内される形でついていく。
建築ラッシュの一帯を抜けると静かな森が続く。住むために村を作るとはいえ、森を開拓し、環境破壊を指示していることに罪悪感を感じた。
「こちらです」
歩いて十分ほどで着いた先には、ちょっとした山に穴が掘ってある、かまくらみたいなものがあった。多分住居だろう。
その隣には小さな畑があった。
そこには、メロン以外にも、鮮やかな緑色のレタスや、ツヤツヤと光るトマトなど、どれも異世界とは思えないほど均整の取れた野菜が育っていた。
「へぇ、家はあれだけど思っていたよりも本格的ね」
私は感動すら覚えて野菜を見ていると、
「あら、昨日の今日で来たわけ?」
汗を垂らしながらチヒロが樽を持って帰ってきた。
「何してたの?」
「水を汲んで来たのよ。湖まで遠いったらありゃしない」
「大変そうね」
「当たり前じゃない。重いのなんの」
「そんな大変な思いをしているチヒロに昨日のお詫びとして、インフラをプレゼントしに来たわ」
「どういうこと?」
私はオカリナに、
「アクアを呼び出せる?」
「かしこまりました」
そう答えたオカリナは目を閉じて集中しているように見えた時、彼女の影からズズズ......と、上半身裸、貝殻パンツのアクアがマッスルポーズをしながら生えてきた。
「あんたら、さらに強盗致傷、拉致監禁の上、性犯罪を重ねるわけ? 魔族って犯罪が好きなの?」
ひきつった顔で後ずさりするチヒロ。
「なんかこれが正装らしくて、服を着ろって言っても聞いてくれないのよね。で、見た目はこんな変態だけど、彼の力で水道を通せるわよ。もちろん水洗トイレも!」
「マジで!?」
途端に目が輝く。やはり水道と水洗トイレは日本人には必要な物なのはわかる。
「住む家も私が手配するわ。希望があったら言って」
「あんた神なの?」
感激しまくりのチヒロに、私はフフンと鼻を鳴らす。
「ついでにと言ってはアレだけど、火は?」
痛いところをつかれた。私も今、とても火が欲しい。盗賊団の知識で火起こしを教えてもらったが、やってみると大変なのだ。
まあオカリナにやらせてるけど。
そんな知識も何もないチヒロは、生野菜で生活しているのだろう。野菜の種類がそれを物語っている。
「火の四天王の居場所はわかってて、今、女神が仲間になるよう説得に行っているんだけど、いつ戻ってくるのか見通しがついてないのよね」
「そっかぁ。でも女神様が説得に行ってるから大丈夫そうね」
「その女神、横領、着服の前科があるっていうかポンコツなのよね」
「この世界、みんな犯罪好きなの?」
「罪の意識が低いのよ。多分」
「ま、気長に待つよ」
「チヒロの家が建つまで、近くの空き家に住んでもかまわないよ。水道は通ってるし。さすがに洞窟に見えるこれじゃ、いつ何者かに襲われても文句言えないからね」
「うーん。そうしようかな。正直生きるだけで精一杯だし」
私たちは畑に水をやった後、チヒロを連れて来た道を戻ることにした。
「ねぇ、昨日も思ったけど、あのデカい建物なに?」
「あれはプリンセス・サーバンツっていう、簡単に言うとハローワークよ。しもべとして登録したら仕事をもらえて、報酬を得られるシステムにしようと思って。いずれ畑を手伝う人手も増やせるし、商店街も作るからチヒロも店を出すといいわ」
「考え方、日本人くさいけど、あんたも転生者?」
そう言われて正直に答えるか悩んだ。
ゴキブリと間違えられて死んだとは言いにくかったし、彼女は夏休みに死んだと言っていたからおそらく学生だったはずだ。
四十五歳で望んだことが、姫様扱いされたいとは言いにくかった。
「かつて私に知識を与えた人がそんなことを言っていたわ」
「そうなんだ。でもすごいね。実践するなんて。てっきりめっちゃ仕事が出来る経営者だと思ったよ」
将来働かずスローライフしたいから今頑張ってるとは言えなかった。
「でも今は森だけだけど、徐々に支配地域が増えそうだよね。そうなったら人口も増える一方だし、管理も大変になっていくね」
え?
「だって、プリンセスなんとかも事務仕事とはいえ管理大変そうじゃん」
言われて気づいた。
オカリナにやらせると、やって来たしもべを次々に抹殺したいとか言い出しそうだし、アクアにやらせたら、まず誰も来ないだろう。そもそも彼には炭酸水を作ってもらわないといけないし。
リィナは。やめておこう。仕事なんか危なくて任せられない。報酬もピンハネしそうだし。
そうなると、優秀な事務職が欲しい。
あと最終的には寝転がっている私に忠実な村長。
問題が山積みすぎる。
絶望の波動が私の体内から溢れ出す。
「何よこれ! 全身が痺れる感じ!」
チヒロが私から離れようとすると、オカリナが腕を掴んで阻止した。
「絶望の波動。溜め込まれた姫様の負の感情が解放され、聖女の結界も破る力を持っておられる」
「それってただのストレス発散じゃない!」
私はついイライラして大木を蹴ってしまった。
物にあたるとは情けない。
気を取り直すと、絶望の波動が静まる。
同時に木から何か落ちてきた。
三人は落ちてきたものを見て同時に言った。
「エルフ......?」
「ちょっとチヒロって子のところに行ってみたいんだけど、案内してくれない?」
朝食をとりながら私は向かいに座っているオカリナに頼んでみると、
「かしこまりました。近いですから徒歩でもよろしいでしょう」
朝食を終え、オカリナに案内される形でついていく。
建築ラッシュの一帯を抜けると静かな森が続く。住むために村を作るとはいえ、森を開拓し、環境破壊を指示していることに罪悪感を感じた。
「こちらです」
歩いて十分ほどで着いた先には、ちょっとした山に穴が掘ってある、かまくらみたいなものがあった。多分住居だろう。
その隣には小さな畑があった。
そこには、メロン以外にも、鮮やかな緑色のレタスや、ツヤツヤと光るトマトなど、どれも異世界とは思えないほど均整の取れた野菜が育っていた。
「へぇ、家はあれだけど思っていたよりも本格的ね」
私は感動すら覚えて野菜を見ていると、
「あら、昨日の今日で来たわけ?」
汗を垂らしながらチヒロが樽を持って帰ってきた。
「何してたの?」
「水を汲んで来たのよ。湖まで遠いったらありゃしない」
「大変そうね」
「当たり前じゃない。重いのなんの」
「そんな大変な思いをしているチヒロに昨日のお詫びとして、インフラをプレゼントしに来たわ」
「どういうこと?」
私はオカリナに、
「アクアを呼び出せる?」
「かしこまりました」
そう答えたオカリナは目を閉じて集中しているように見えた時、彼女の影からズズズ......と、上半身裸、貝殻パンツのアクアがマッスルポーズをしながら生えてきた。
「あんたら、さらに強盗致傷、拉致監禁の上、性犯罪を重ねるわけ? 魔族って犯罪が好きなの?」
ひきつった顔で後ずさりするチヒロ。
「なんかこれが正装らしくて、服を着ろって言っても聞いてくれないのよね。で、見た目はこんな変態だけど、彼の力で水道を通せるわよ。もちろん水洗トイレも!」
「マジで!?」
途端に目が輝く。やはり水道と水洗トイレは日本人には必要な物なのはわかる。
「住む家も私が手配するわ。希望があったら言って」
「あんた神なの?」
感激しまくりのチヒロに、私はフフンと鼻を鳴らす。
「ついでにと言ってはアレだけど、火は?」
痛いところをつかれた。私も今、とても火が欲しい。盗賊団の知識で火起こしを教えてもらったが、やってみると大変なのだ。
まあオカリナにやらせてるけど。
そんな知識も何もないチヒロは、生野菜で生活しているのだろう。野菜の種類がそれを物語っている。
「火の四天王の居場所はわかってて、今、女神が仲間になるよう説得に行っているんだけど、いつ戻ってくるのか見通しがついてないのよね」
「そっかぁ。でも女神様が説得に行ってるから大丈夫そうね」
「その女神、横領、着服の前科があるっていうかポンコツなのよね」
「この世界、みんな犯罪好きなの?」
「罪の意識が低いのよ。多分」
「ま、気長に待つよ」
「チヒロの家が建つまで、近くの空き家に住んでもかまわないよ。水道は通ってるし。さすがに洞窟に見えるこれじゃ、いつ何者かに襲われても文句言えないからね」
「うーん。そうしようかな。正直生きるだけで精一杯だし」
私たちは畑に水をやった後、チヒロを連れて来た道を戻ることにした。
「ねぇ、昨日も思ったけど、あのデカい建物なに?」
「あれはプリンセス・サーバンツっていう、簡単に言うとハローワークよ。しもべとして登録したら仕事をもらえて、報酬を得られるシステムにしようと思って。いずれ畑を手伝う人手も増やせるし、商店街も作るからチヒロも店を出すといいわ」
「考え方、日本人くさいけど、あんたも転生者?」
そう言われて正直に答えるか悩んだ。
ゴキブリと間違えられて死んだとは言いにくかったし、彼女は夏休みに死んだと言っていたからおそらく学生だったはずだ。
四十五歳で望んだことが、姫様扱いされたいとは言いにくかった。
「かつて私に知識を与えた人がそんなことを言っていたわ」
「そうなんだ。でもすごいね。実践するなんて。てっきりめっちゃ仕事が出来る経営者だと思ったよ」
将来働かずスローライフしたいから今頑張ってるとは言えなかった。
「でも今は森だけだけど、徐々に支配地域が増えそうだよね。そうなったら人口も増える一方だし、管理も大変になっていくね」
え?
「だって、プリンセスなんとかも事務仕事とはいえ管理大変そうじゃん」
言われて気づいた。
オカリナにやらせると、やって来たしもべを次々に抹殺したいとか言い出しそうだし、アクアにやらせたら、まず誰も来ないだろう。そもそも彼には炭酸水を作ってもらわないといけないし。
リィナは。やめておこう。仕事なんか危なくて任せられない。報酬もピンハネしそうだし。
そうなると、優秀な事務職が欲しい。
あと最終的には寝転がっている私に忠実な村長。
問題が山積みすぎる。
絶望の波動が私の体内から溢れ出す。
「何よこれ! 全身が痺れる感じ!」
チヒロが私から離れようとすると、オカリナが腕を掴んで阻止した。
「絶望の波動。溜め込まれた姫様の負の感情が解放され、聖女の結界も破る力を持っておられる」
「それってただのストレス発散じゃない!」
私はついイライラして大木を蹴ってしまった。
物にあたるとは情けない。
気を取り直すと、絶望の波動が静まる。
同時に木から何か落ちてきた。
三人は落ちてきたものを見て同時に言った。
「エルフ......?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる