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第十四章 滂 沱
滂 沱 (ニ)
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あかしと優華様とのはしゃぎぶりをみて、ハッとわたしの中で閃くものがあった。
あかしは、優華様の姉、秀華様の侍女であったはずである。
けれども。
わたしは知ったのだ、わたしが名づけたあのあかしこそ、秀華様本人ではないのか……と。
かつてわたしが秀華姫に扮したこともあったように、あかしは、自分の侍女に扮していたのではなかったか……。この着想には確証はないけれど、確信にちかいものはあった。
わたしの直観は、真実を射抜いてはいなかったろうか。それに……神立を去るとき、休賀斎の老公は、わざわざ姫の侍女を引き離してこちらへ連れてきた、つまりは、すでに老公は、あのとき瞬時に見抜いていたのであろう、秀華様と侍女が入れ替わっていることを。
このことを彦左に伝えようと駆け出したけれど、寸でのところでおしとどまった。
ことばにしてはならない真実というものがあってもいいではないか。あかしのままで、いいではないか。
いつの日にか本人しか知らない物語を自ら語ってくれるにちがいない。その日まで、この秘密は、わたし一人の中に、いや、わたしと老公二人のなかにとどめておこうとおもった。
弥右衛門を探すと、休賀斎の老公の衣の埃と血をぬぐっていた。
「ご老公、お怪我を?」
わたしが叫ぶと、
「いや、ただの返り血でござるよ」
と、にやりと笑った。
「この弥右衛門に、私の一存で、奥山の姓を名乗ることをゆるしました。なにとぞよしなに……」
こんなときに吐く言葉ではなかったかもしれないけれど、なぜか口にしていた。
「奥山弥右衛門……でござるか、うん、佳き名じゃ」
こくんと頷いたのちに、老公は兄の前に座した。
「若、いや、いまはもう、南光坊天海どのよ!身共も、そなた様の道連れに、再び諸国を廻って修行の旅に出たいとは存ずるが、とうに五十の坂を過ぎもうした。ついては、この奥山弥右衛門めを同行くだされ。亀どのよ、よろしいかのう」
「はい。三郎兄さま、いいえ、天海さまの傍に弥右衛門どのがあれば、わたしも安堵いたします」
弥右衛門の耳元で、南光坊天海の正体を告げると、瞬息、眉を上げた。けれど弥右衛門は何も云わずにこっくりと肯いた。
「亀どのよ、われらは馬で駆けましょう」
老公がわたしを急かした。
「船で知多半島まで行くのではありませぬのか」
「当初はそのつもりでござったが、いまの残党がおれば、われらは船で逃げたとおもうてござろうよ。……それに、伊勢には織田方の九鬼水軍がおりますでな、海上といえど安心はできぬ」
船の中で兄と積もる話がしたかったのだけれど、老公の指示に従うことにした。
「佐助!兵太郎様は、海に葬ってさしあげたらいいだにぃ」
「うん、そうするつもりだ。姫様がどこにいても、必ず報せるずらよ」
佐助は、いつのまにか彦左の口真似がうまくなっていた。
「……優華様のこと、それと、あかしのこと、しっかりと見守っていてあげてね」
「うん、そうするつもりだ」
言葉数は少なかったけれど、佐助は力強く頷いた。老公が佐助に書状を手渡した。
「……しばらく薩摩あたりで、落ち着かれるがよろかろう。この文は、薩摩の島津候の家老に宛たものじゃ。かの者は、わしの剣の弟子でのう。なにかと便宜をはかってくれるじゃろう。それに、島津は、近衛家とも縁が深くてな、そのうち天誉どのもひょいと立ち寄ることがあるやもしれぬでな」
頷いてから佐助はくるりと周囲を見渡した。
「あれ? クマの姿が見えぬ……熊蔵はどこに?」
熊蔵は先に安土へ向かわせていた。笹や嘉兵衛につなぎをとるとともに、これからやらなければならない信長様との対決に向けて準備を指示しておいた。
ちなみに、熊蔵こと、伊奈半左衛門は、天文十九年産まれだそうだから、なんとわたしより十歳も年長ということになる。これまで同年代か、弟のように扱ってきたことを悔いる気持ちの一方で、伊奈いう本姓よりも、いつまでも熊蔵で居てほしいというおもいも強かった。
そのことを佐助に告げてから、兄の前に膝まずいた。
「それでは、天海さま、亀は、これにてお別れいたしまする」
「そうか!もういくのか、いってしまうのか」
兄は淋しげにつぶやいた。わたしにも積もる話はたくさんあるのだけれど、すでに、南光坊天海となった兄は、かつてのわたしの兄、三郎信康ではないのだ。わたしは、天海さまに抱きつき、思いっきり強く背を掌で叩いた。
「……どうか、船の中で、佐助と弥右衛門の二人から、さまざまな亀の物語をお聴きくださいまし」
「お亀の物語と?……おうよ、いまから聴くのが愉しみだ。お亀!いつか、また、縁あらば、どこぞで相まみえようぞ」
「はい、いつの日にか。それまで、天海さまも、ご息災にてあられますように」
そう告げて彦左の姿を目で追った。優華様を抱き上げたまま、そのまま連れ帰ってしまうのではないかとおもわれるほど、一方的に喋りかけていた。
どれだけ姫に通じたかどうかは知れないけれど、近寄って優華様を引き取って、頭を撫でた。あまりにも彦左が姫を手放そうとしないので、あかしを手招きして、優華様を託した。そうして、わたしには思い出深い銀細工の手鏡をあかしの掌に握らせた。
かつて茶屋四郎次郎どのが送ってくれた懐かしい手鏡。兄から手渡された手鏡。いまのいままでわたしを護ってくれたお守りのようなものだけれど、いつの日か再会できることを信じて、差し上げることにしたのだ。
まだ別れを惜しんでいる彦左のもとへ歩み寄った。
「……彦左の手元に置くわけにはいかない、よく判っているでしょうに……それより、いつの日にか、亀の物語を書いてほしい」
「……うん、それがしは、必ずや、あの平家物語や太平記に優るとも劣らない物語を、書いてやる」
彦左が胸を張って頷いた。
「……そのときには、岡崎三郎信康は見事に切腹を遂げた、と記しておいて!」
「いいだにぃ。服部半蔵さまは〈首を刎ねるにしのばず号泣した〉としておくぞ」
「……それと、わたしの母さまのことも!」
わたしはそう云い、ことさらに兄の耳に届くように大声を張り上げた。
「……母さまは、介錯人の前でこう叫んだとしるしておいて。〈怨霊となりて、子々孫々にまで、徳川の家に憂き目を見すべし!〉と。……死に際に、徳川の家をさんざん呪ったことにしておいてほしい……」
「げえぇ?そ、そんな!」
彦左は飛び上がって驚いた。兄のからだがびくっと震えたような感触がしたけれど、そちらをみずに続けた。
「……そのほうが、この世に、母が生きた証になるとおもう。そのほうが、母が抱いた恨みの深さ、叛心との葛藤が、伝わるとおもうから」
わたしはこのとき、また泣き女になっていたかもしれない。
わたしの謂いが、そばで聴いている兄の胸にまで届いたかどうか……。
「わかった……約束するずら」
神妙な顔になって、彦左は応じた。
「彦左は、きっと、城持ち大名になれる人だとおもうわ」
世辞ではなく、心底、そうおもえた。けれども彦左は動揺のそぶりもみせない。
「……そんなもん、ちっとも、興味はないぞ。嘘でも、見栄でもない!」
はっきりと彦左は言い切った。なんと頼もしくみえたことか。
「栄枯盛衰は、世のならい……、むしろそれがしは、これから先、おのれなりの筋目、心根のありようのようなものを大事にしたい。あの兵太郎もいっていた、それぞれの立場で葛藤することを恐れるな、と。だから、出世なんか、どうでもいい。それがしがいつ死んでも、大久保の家は残るから。これからは云いたいことは腹にためず、誰に対しても遠慮などせずにかかっていってやる。いつまでも、頑固で、偏屈で、かくあるべしと思うかたちを、しっかとまもっていくつもりだ」
それでこそ彦左らしいとおもった。
それでいいのだ。
余人が揶揄しようが、侮蔑しようが嘲笑しようが、おのれが信じるとおりに精一杯駆け抜けていけば、それでいいのだ。
「……そうだ、彦左、一つだけ訊いておきたかったことがあるの。三年前、ぶらりと新城にやってきたけど……あれは、本当はどなたのご指示だったの?」
急に口をもぐもぐさせると、彦左は額をぼりぼりと掻き出した。
「……家康の殿さんずらよ」
とうとう彦左は白状した。
「……それがしに、こうお命じになられたぞ。〈彦左よ、新城にいって亀の様子を見て参れ!新城には、なにやら怪しげな連中も出入りしていると聴く。おまえが行って、掻き回してこい。なんなら亀を浚ってきてもよいぞ!〉と。きっと、殿さんは、案じられておられたんだ、亀さまが、苛められていないか、悪き扱いをされていないかと……」
「そう、やっぱり、父さまの密偵だったのね」
「み、密偵だなどと!それがしは、亀党の先鋒大将だにぃ」
いまにも泣き出しそうな彦左をみて、わたしはゆるしてあげることにした。
あかしは、優華様の姉、秀華様の侍女であったはずである。
けれども。
わたしは知ったのだ、わたしが名づけたあのあかしこそ、秀華様本人ではないのか……と。
かつてわたしが秀華姫に扮したこともあったように、あかしは、自分の侍女に扮していたのではなかったか……。この着想には確証はないけれど、確信にちかいものはあった。
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弥右衛門を探すと、休賀斎の老公の衣の埃と血をぬぐっていた。
「ご老公、お怪我を?」
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「いや、ただの返り血でござるよ」
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「うん、そうするつもりだ。姫様がどこにいても、必ず報せるずらよ」
佐助は、いつのまにか彦左の口真似がうまくなっていた。
「……優華様のこと、それと、あかしのこと、しっかりと見守っていてあげてね」
「うん、そうするつもりだ」
言葉数は少なかったけれど、佐助は力強く頷いた。老公が佐助に書状を手渡した。
「……しばらく薩摩あたりで、落ち着かれるがよろかろう。この文は、薩摩の島津候の家老に宛たものじゃ。かの者は、わしの剣の弟子でのう。なにかと便宜をはかってくれるじゃろう。それに、島津は、近衛家とも縁が深くてな、そのうち天誉どのもひょいと立ち寄ることがあるやもしれぬでな」
頷いてから佐助はくるりと周囲を見渡した。
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熊蔵は先に安土へ向かわせていた。笹や嘉兵衛につなぎをとるとともに、これからやらなければならない信長様との対決に向けて準備を指示しておいた。
ちなみに、熊蔵こと、伊奈半左衛門は、天文十九年産まれだそうだから、なんとわたしより十歳も年長ということになる。これまで同年代か、弟のように扱ってきたことを悔いる気持ちの一方で、伊奈いう本姓よりも、いつまでも熊蔵で居てほしいというおもいも強かった。
そのことを佐助に告げてから、兄の前に膝まずいた。
「それでは、天海さま、亀は、これにてお別れいたしまする」
「そうか!もういくのか、いってしまうのか」
兄は淋しげにつぶやいた。わたしにも積もる話はたくさんあるのだけれど、すでに、南光坊天海となった兄は、かつてのわたしの兄、三郎信康ではないのだ。わたしは、天海さまに抱きつき、思いっきり強く背を掌で叩いた。
「……どうか、船の中で、佐助と弥右衛門の二人から、さまざまな亀の物語をお聴きくださいまし」
「お亀の物語と?……おうよ、いまから聴くのが愉しみだ。お亀!いつか、また、縁あらば、どこぞで相まみえようぞ」
「はい、いつの日にか。それまで、天海さまも、ご息災にてあられますように」
そう告げて彦左の姿を目で追った。優華様を抱き上げたまま、そのまま連れ帰ってしまうのではないかとおもわれるほど、一方的に喋りかけていた。
どれだけ姫に通じたかどうかは知れないけれど、近寄って優華様を引き取って、頭を撫でた。あまりにも彦左が姫を手放そうとしないので、あかしを手招きして、優華様を託した。そうして、わたしには思い出深い銀細工の手鏡をあかしの掌に握らせた。
かつて茶屋四郎次郎どのが送ってくれた懐かしい手鏡。兄から手渡された手鏡。いまのいままでわたしを護ってくれたお守りのようなものだけれど、いつの日か再会できることを信じて、差し上げることにしたのだ。
まだ別れを惜しんでいる彦左のもとへ歩み寄った。
「……彦左の手元に置くわけにはいかない、よく判っているでしょうに……それより、いつの日にか、亀の物語を書いてほしい」
「……うん、それがしは、必ずや、あの平家物語や太平記に優るとも劣らない物語を、書いてやる」
彦左が胸を張って頷いた。
「……そのときには、岡崎三郎信康は見事に切腹を遂げた、と記しておいて!」
「いいだにぃ。服部半蔵さまは〈首を刎ねるにしのばず号泣した〉としておくぞ」
「……それと、わたしの母さまのことも!」
わたしはそう云い、ことさらに兄の耳に届くように大声を張り上げた。
「……母さまは、介錯人の前でこう叫んだとしるしておいて。〈怨霊となりて、子々孫々にまで、徳川の家に憂き目を見すべし!〉と。……死に際に、徳川の家をさんざん呪ったことにしておいてほしい……」
「げえぇ?そ、そんな!」
彦左は飛び上がって驚いた。兄のからだがびくっと震えたような感触がしたけれど、そちらをみずに続けた。
「……そのほうが、この世に、母が生きた証になるとおもう。そのほうが、母が抱いた恨みの深さ、叛心との葛藤が、伝わるとおもうから」
わたしはこのとき、また泣き女になっていたかもしれない。
わたしの謂いが、そばで聴いている兄の胸にまで届いたかどうか……。
「わかった……約束するずら」
神妙な顔になって、彦左は応じた。
「彦左は、きっと、城持ち大名になれる人だとおもうわ」
世辞ではなく、心底、そうおもえた。けれども彦左は動揺のそぶりもみせない。
「……そんなもん、ちっとも、興味はないぞ。嘘でも、見栄でもない!」
はっきりと彦左は言い切った。なんと頼もしくみえたことか。
「栄枯盛衰は、世のならい……、むしろそれがしは、これから先、おのれなりの筋目、心根のありようのようなものを大事にしたい。あの兵太郎もいっていた、それぞれの立場で葛藤することを恐れるな、と。だから、出世なんか、どうでもいい。それがしがいつ死んでも、大久保の家は残るから。これからは云いたいことは腹にためず、誰に対しても遠慮などせずにかかっていってやる。いつまでも、頑固で、偏屈で、かくあるべしと思うかたちを、しっかとまもっていくつもりだ」
それでこそ彦左らしいとおもった。
それでいいのだ。
余人が揶揄しようが、侮蔑しようが嘲笑しようが、おのれが信じるとおりに精一杯駆け抜けていけば、それでいいのだ。
「……そうだ、彦左、一つだけ訊いておきたかったことがあるの。三年前、ぶらりと新城にやってきたけど……あれは、本当はどなたのご指示だったの?」
急に口をもぐもぐさせると、彦左は額をぼりぼりと掻き出した。
「……家康の殿さんずらよ」
とうとう彦左は白状した。
「……それがしに、こうお命じになられたぞ。〈彦左よ、新城にいって亀の様子を見て参れ!新城には、なにやら怪しげな連中も出入りしていると聴く。おまえが行って、掻き回してこい。なんなら亀を浚ってきてもよいぞ!〉と。きっと、殿さんは、案じられておられたんだ、亀さまが、苛められていないか、悪き扱いをされていないかと……」
「そう、やっぱり、父さまの密偵だったのね」
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