冷熱のはざまに

海善紙葉

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なってしまったよ! でもね!

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 からだの感覚はまったくなかった。首も回らない。腕も動かない……のは、御神木になった当然なのかも。
 、こうやって、いつものとおり、あれこれと考えたりできるの、不思議だね。あ、にかけてみたの、わかるかな。
 でもね、前がみえないから、どこに居るのかはわからない。
 それに、しょっちゅう、ムズムズするの、ええと、カサカサ……かな、ゴソガサ……? そんな感覚。
 、慣れてくると、それが音楽のリズムのようにも聴こえてくるの。ええと、聴こえる、というのはおかしいよね、感じる、そうだよ、それ、それ、世界のすべてのものが、それぞれに持つ固有の音階……というのか、なんていうのか、独特の音のようなものを持っていて、それが聴こえてくる……ええと、それを感じるの、あたしのすべての意識が。
 、ときにはやかましく、騒音爆音のようにしかおもえないときもあるのだけど、それでもふしぎなことに不快じゃないの。たとえば、何かを何かが必死でこちらに伝えようとしているような……そんな気もしてきたよ。

 、一体、どういうわけか、突然、
「さむい……!」
と、音が聴こえてきた。

「え……? だ、誰なの? どこにいるの?」 

 おそらくあたしも、そんな音を出したみたい。
 、それは伝わらなかったみたいで、
「さむいよぉ……だれか……た、す、け、て……」
と、叫び返してきたよ。

 あたしは何度も何度も何度も(やっぱり大切なことはどうしても三回繰り返すよ)、あちらの音の所在を確かめようとしてみた。
「助けて、誰かぁ……」
 声でも音でもどちらでもいいけど、応えてあげられないもどかしさは、つらいよね。
 、さすがにあたしもあきらめかけたとき、別の音が響いてきたよ。

「おい、ひたいのあたりに意識を集中させるんだ。早くやってみろ!」

 男の声だ。
 もしかすると……。

「ほら、人間だったときの額を想像して、そこに意識を……」
 言われたとおりにしてみたよ。
 すると……。

「あ……! ケン……? でしょ?」
「そうだよ……」
「さっき、寒い寒いってふるえてたのもケン?」
「いや、あれは、たぶん、マコだよ。助けてあげなくっちや。たぶん、あいつは、もともと御神木になるのを嫌がってたから、根が十分に張れてなくて、それで地中のエネルギーを吸い上げることができないんだろ?」
「そんなことまでわかるの?」
「ぼくは……物心ついた頃から、ずっと、特殊な訓練をさせられてきたから」

 ケンのその応答だけで、どうしてだかあたしには、わかった。ケンの両親が、新型太陽フレア対策ブロジェクトに携わってきた研究者だったということが。つまり、ケンは幼い頃から、御神木になるための英才教育を受けてきたってことだよ。


「じゃ、マコを助けるにはどうしたらいい? ケン、あなたなら、わかるんじゃない?」

 おや、すんなりとあたし独自の音が出せるようになってきてた。

「……あの部屋で、ぼくが言ったことがあるだろ? ぼくらの根を、マコのところへどんどん伸ばしていくんだ……」
「え……?そんなこと、できるの? マコがすぐ近くにいるのならわかるけど、何百キロも離れていたとしたら……」
「できるもできないも、ぼくら、御神木だろ? なんだってできるさ、た、ぶ、ん」

 そのときだ。
 ポキっ。
 あたしのなかで、なにかが弾けた。
 ……ケンに対する尊敬のような……憧憬のような……ぽかぽかとそこらじゅうが熱くなる……得体のしれないものがメラメラと芽生えてきた……よ。
 
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