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第1話 できれば王子を泣かせたい!
番外編2 護衛の調教
しおりを挟む「好きだ! す、好きだ! 好きだ、アレクサンドラ!」
「あい……あいひ……痛っ! はぁ……」
やぁ、こんにちは!
俺、ローガン。ジェラルド王子殿下の護衛だよ!
今何をしてるのかって?
君にだけ教えてあげよう。
今は王子こと俺の坊ちゃんが、愛しのお方への愛の告白のれ・ん・しゅ・うをしているところをひたすら眺めているのさっ。
えっ? 今日も俺がカッコイイって?
綺麗めよりガッチリめが好きだから、まさにタイプど真ん中だって?
いやぁ、照れるなぁ。
褒めてくれるのは嬉しいけど、俺には愛する嫁と子供たちがいるんだよね!
君の気持ちに応えられなくてごめんね!
「おい、ローガン……」
「はっ! 何でしょうか、殿下?」
「いくら暇だからって、そのおかしな口調でダンゴムシに話しかけるのは止めろ」
「何が悲しくて、毎日人様の告白練習に付き合わなければならないんですかねぇ……」
「お前、護衛だろ?」
「護衛ですよ、護衛ですとも! 護衛のお仕事は告白の練習に付き合うことじゃないはずなんですがねぇ……」
「…………」
「ほらほら、殿下! 口が止まってますよ! 愛の言葉練習するんでしょっ? ツン多めの殿下の場合、身体にしみ込むまでやらないと大事故につながりかねませんからね! 頑張って!」
「何だよ、ツン多めって……」
「ほら、早く!」
「わ、わかったよ……今日も綺麗だな、アレクシャンドラ! お前のことを、あ、愛して……ううっ! やっぱり恥ずかしい……」
あらま。まだ彼のご令嬢にいじめられてもいないのに、坊ちゃん涙目ですねぇ。
それに、普段言い慣れてない言葉って噛みがちですよね! 本番で噛まないように沢山練習しましょうね、うん。
これで、お二人が上手くいくといいんですが──というか、上手くいってもらわないとホント困りますって。
つい先日坊ちゃんと顔を合わせた時は滂沱の涙でしたからね。いや、美王子の涙尊いよ? おじさん、つい拝んじゃうけれども!
その理由が婚約者の公爵令嬢アレクサンドラ様に婚約の解消を申し出られたっていうね。
坊ちゃんはご令嬢に会う度に、照れが暴走してひたすらツンツンな態度しか見せてなかったですからね。
誰が見ても婚約解消の申し出に納得というか──むしろよく今まで我慢できたなというか。
婚約破棄でもおかしくないのに解消で手を打ってくれるご令嬢って、坊ちゃんの憎まれ口には十倍返ししてくるような怖い人だと思ってたけど、意外と優しいところあるじゃん! とか──あ、いやごめんなさい。そして、坊ちゃんだけは納得してなかったんでした。
ご令嬢に捨てられると思ったらしい坊ちゃんは、そのまま勢いで告白したらしいんですが、どうやら声がちっちゃ過ぎて肝心のご令嬢が聞いていなかったようで。
彼のご令嬢って、どんなに声が小さくても悪口憎まれ口は聞き逃さないくせに、坊ちゃんのデレ発言だけ聞き逃しちゃうの、ホントなんなの? ──って、クレーム入れられたらいいんだけどなー。
まぁそれで、俺指導の元、教本(嫁さんが持ってた恋愛小説)片手に愛の言葉を練習してるんですが……。ちっとも上達してないですな。まだまだ声もちっちゃいです!
もっとこう──内なる自分を解放しないと!
「なぁ、ローガン」
「何でしょう? もうダンゴムシに話しかけたりしてませんが?」
「……違う。ここに、『女の肩を抱き寄せて囁いた』ってあるけど、肩ってどうやって抱き寄せるんだ? 向かい合って、肩に手を置いたら何かおかしくないかな?」
「そのシチュエーションは、殿下にはまだ百万年くらい早いです! まずは手をつなぐところからです!」
向かい合って肩に手を置くとか、肩たたきじゃないんだから。
「手……手をつなぐだと……」
それくらいでうろたえないでください!
初歩の初歩ですよ?
まだ彼のご令嬢とは手をつないだこともないんですよね? 知ってますよ、護衛ですから!
スキンシップは口ほどにものを言う。これ、俺の嫁さんの名言ですよ。
そういえば、最近嫁さんからのスキンシップが多いんですよね。ホント愛され過ぎて困っちゃうなぁ。
向かい合って肩をトントンって叩くやつが一番多いんですけどね。やっぱり、肩をたたいて疲れを労ってくれてるのかなー?
「それは旦那業をクビってことか?」
「うわっ! びっくりした! いきなり心の声に答えないでくださいよ。心臓止まるかと思いましたよ~」
「だだ漏れだったぞ、心の声」
「何と言っても暇ですから! そりゃー心の声も漏れるってもんで……待って。旦那業をクビってどういうことですか?」
「だって、肩を叩かれてるんだろう、奥方に?」
「はぁ……」
「肩たたきはクビの隠語だって、この前教師が言ってたぞ」
「はぁっ?! いやいやいやいや……俺と嫁さんはラブラブですって! いやいやいやいや……いや……いや……いやぁぁぁぁあ──っ!」
「あっ、おいっ! ローガン?! 帰ってこーい!! って、行ってしまったな。あの様子だと、今日はもう帰ってこないだろうな。仕方ないから代わりの護衛手配しとくか──……」
これにて第1話完結です。
本編、番外編共にお読みくださりありがとうございました!
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