できれば王子を泣かせたい!

真辺わ人

文字の大きさ
11 / 35
第1話 できれば王子を泣かせたい!

番外編2 護衛の調教

しおりを挟む




「好きだ! す、好きだ! 好きだ、アレクサンドラ!」

「あい……あいひ……痛っ! はぁ……」

 やぁ、こんにちは!
 俺、ローガン。ジェラルド王子殿下の護衛だよ!
 今何をしてるのかって?
 君にだけ教えてあげよう。
 今は王子こと俺の坊ちゃんが、愛しのお方への愛の告白のれ・ん・しゅ・うをしているところをひたすら眺めているのさっ。
 えっ? 今日も俺がカッコイイって?
 綺麗めよりガッチリめが好きだから、まさにタイプど真ん中だって?
 いやぁ、照れるなぁ。
 褒めてくれるのは嬉しいけど、俺には愛する嫁と子供たちがいるんだよね!
 君の気持ちに応えられなくてごめんね!

「おい、ローガン……」

「はっ! 何でしょうか、殿下?」

「いくら暇だからって、そのおかしな口調でダンゴムシに話しかけるのは止めろ」

「何が悲しくて、毎日人様の告白練習に付き合わなければならないんですかねぇ……」

「お前、護衛だろ?」

「護衛ですよ、護衛ですとも! 護衛のお仕事は告白の練習に付き合うことじゃないはずなんですがねぇ……」

「…………」

「ほらほら、殿下! 口が止まってますよ! 愛の言葉練習するんでしょっ? ツン多めの殿下の場合、身体にしみ込むまでやらないと大事故につながりかねませんからね! 頑張って!」

「何だよ、ツン多めって……」

「ほら、早く!」

「わ、わかったよ……今日も綺麗だな、アレクシャンドラ! お前のことを、あ、愛して……ううっ! やっぱり恥ずかしい……」

 あらま。まだ彼のご令嬢にいじめられてもいないのに、坊ちゃん涙目ですねぇ。
 それに、普段言い慣れてない言葉って噛みがちですよね! 本番で噛まないように沢山練習しましょうね、うん。

 これで、お二人が上手くいくといいんですが──というか、上手くいってもらわないとホント困りますって。
 つい先日坊ちゃんと顔を合わせた時は滂沱の涙でしたからね。いや、美王子の涙尊いよ? おじさん、つい拝んじゃうけれども!

 その理由が婚約者の公爵令嬢アレクサンドラ様に婚約の解消を申し出られたっていうね。

 坊ちゃんはご令嬢に会う度に、照れが暴走してひたすらツンツンな態度しか見せてなかったですからね。
 誰が見ても婚約解消の申し出に納得というか──むしろよく今まで我慢できたなというか。
 婚約破棄でもおかしくないのに解消で手を打ってくれるご令嬢って、坊ちゃんの憎まれ口には十倍返ししてくるような怖い人だと思ってたけど、意外と優しいところあるじゃん! とか──あ、いやごめんなさい。そして、坊ちゃんだけは納得してなかったんでした。

 ご令嬢に捨てられると思ったらしい坊ちゃんは、そのまま勢いで告白したらしいんですが、どうやら声がちっちゃ過ぎて肝心のご令嬢が聞いていなかったようで。
 彼のご令嬢って、どんなに声が小さくても悪口憎まれ口は聞き逃さないくせに、坊ちゃんのデレ発言だけ聞き逃しちゃうの、ホントなんなの? ──って、クレーム入れられたらいいんだけどなー。
 まぁそれで、俺指導の元、教本(嫁さんが持ってた恋愛小説)片手に愛の言葉を練習してるんですが……。ちっとも上達してないですな。まだまだ声もちっちゃいです!
 もっとこう──内なる自分を解放しないと!

「なぁ、ローガン」

「何でしょう? もうダンゴムシに話しかけたりしてませんが?」

「……違う。ここに、『女の肩を抱き寄せて囁いた』ってあるけど、肩ってどうやって抱き寄せるんだ? 向かい合って、肩に手を置いたら何かおかしくないかな?」

「そのシチュエーションは、殿下にはまだ百万年くらい早いです! まずは手をつなぐところからです!」

 向かい合って肩に手を置くとか、肩たたきじゃないんだから。

「手……手をつなぐだと……」

 それくらいでうろたえないでください!
 初歩の初歩ですよ?
 まだ彼のご令嬢とは手をつないだこともないんですよね? 知ってますよ、護衛ですから!
 スキンシップは口ほどにものを言う。これ、俺の嫁さんの名言ですよ。
 そういえば、最近嫁さんからのスキンシップが多いんですよね。ホント愛され過ぎて困っちゃうなぁ。
 向かい合って肩をトントンって叩くやつが一番多いんですけどね。やっぱり、肩をたたいて疲れを労ってくれてるのかなー?

「それは旦那業をクビってことか?」

「うわっ! びっくりした! いきなり心の声に答えないでくださいよ。心臓止まるかと思いましたよ~」

「だだ漏れだったぞ、心の声」

「何と言っても暇ですから! そりゃー心の声も漏れるってもんで……待って。旦那業をクビってどういうことですか?」

「だって、肩を叩かれてるんだろう、奥方に?」

「はぁ……」

「肩たたきはクビの隠語だって、この前教師が言ってたぞ」

「はぁっ?! いやいやいやいや……俺と嫁さんはラブラブですって! いやいやいやいや……いや……いや……いやぁぁぁぁあ──っ!」

「あっ、おいっ! ローガン?! 帰ってこーい!! って、行ってしまったな。あの様子だと、今日はもう帰ってこないだろうな。仕方ないから代わりの護衛手配しとくか──……」












これにて第1話完結です。
本編、番外編共にお読みくださりありがとうございました!

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...