63 / 68
(50)
しおりを挟む「あれが気になります!」
メイシアの指差した方角にあるのは、巨大な神殿らしき建物だった。
外観はどことなく、元の世界のパルテノン神殿に似てるな。
「神殿かな?」
「神殿っぽいな」
「神殿かもしれませんねぇ」
おっ。転移組の意見が一致した模様。
「何だか、僕もすごくあそこが気になります。行ってみましょうよ」
「うむ」
九重の言葉に課長も頷いて──俺たちは、その巨大な神殿らしき建物に行ってみることにした。
「おっ! 近寄るとますます神殿だな。ここで転職とかできるんじゃないか?」
「先輩、中も神殿っぽいですよ! 見てください。女神っぽい像があります!」
先に進んで神殿の中に入っていた九重が俺を呼んだ。
「……女神、か? これ……?」
「いやぁ、どう見ても女神でしょう?」
「いや、どう見ても女王様だろうよ、これ……」
九重が『女神』と評した像は、神殿の入口はいってすぐの大広間っぽい部屋の中央にあった。
大広間のど真ん中で異様な存在感を放つ石像──だが、俺がイメージしていた女神像とはかけ離れている。
まず、女性の像なのは間違いないだろう。
胸部に男性ならありえない大きさの膨らみがあり、更に美女っぽい顔つきをしているからな。
じゃあ、どこが異論なのかと言うと……。
まず、頭に二本の角が生えていて。
それから口からは二本の牙がのぞいている。
像がまとっているのは、いやにタイトなボンテージっぽい服で。
それから、背後に羽が生えていて。
極めつけに足元に人間らしきものが踏みつけられている。
ムチ持たせたら激似合うこと間違いなし。
そんな女神像がどこにあるんだよ。
「いや、どう見ても暗黒系だろ、これ? 悪魔とか魔王とか、邪神とかだろ、これ?」
「ええっ? でも、ほら、羽根とかありますよ?」
「あの羽根の色は黒だな、絶対」
「ええ~?!」
「足元に人間が踏みつけられてるんだぞ? 確か仏像とかにもあっただろ、鬼を踏みつけてるやつ」
「近江くんが言っている鬼というのは、仁王像や四天王像などに踏まれている邪鬼のことだな」
気がつくと、課長が隣に立っていた。
「あー……何か見たことあるって思ったら、この像、今の課長にちょっと似てませんか?」
「おっ。言われてみればちょっと似てるかも」
まぁ、相手はただの石像だから、似てるような、似てないような、程度のものだけどね。
三人で女神像もとい邪神像を見上げていると──不意に、彼女と目が合ったような気がした。
(いやいやいやいや。そんな馬鹿な。ただの石像がこっちを見るだなんて……)
あるはずがない。
ところで、メイシアやウメコはどこへ行ったのかと当たりを見渡すと、新参者のカオリさん含めた彼女たちは、俺たちと反対側である像の真裏にいた。
「課長~! 先輩さーん! ここに何か書いてあります!」
──わふっ! わふっ!
像の背面の台座部分に、何か文字が彫ってあった。
「……これは、読めないな」
「何語なんでしょうね? 見たことのない文字ですけど……」
「メイシアは分からないのか?」
「わたしも見たことない文字です! もしかしたら古代語かも」
メイシアが首を傾げたので、俺は胸元で爆睡していたリアを起こした。
「むう……何じゃ? せっかく血の海で泳ぐ幸せな夢を見ておったのに」
「げっ。何つー夢見てんだよ。いや、それより、お前にはこの文字が読めるか?」
「ふわぁ~! どれ。しばし待て……」
リアは俺の胸元から飛び立つと、台座の前でホバリングしながら、その文字を眺め始めた。
0
あなたにおすすめの小説
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム)
目を覚ますとそこは石畳の町だった
異世界の中世ヨーロッパの街並み
僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた
案の定この世界はステータスのある世界
村スキルというもの以外は平凡なステータス
終わったと思ったら村スキルがスタートする
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
陸上自衛隊 異世界作戦団
EPIC
ファンタジー
その世界は、日本は。
とある新技術の研究中の暴走から、異世界に接続してしまった。
その異世界は魔法魔力が存在し、そして様々な異種族が住まい栄える幻想的な世界。しかし同時に動乱渦巻く不安定な世界であった。
日本はそれに嫌が応にも巻き込まれ、ついには予防防衛及び人道支援の観点から自衛隊の派遣を決断。
此度は、そのために編成された〝外域作戦団〟の。
そしてその内の一隊を押しつけられることとなった、自衛官兼研究者の。
その戦いを描く――
自衛隊もの、異世界ミリタリーもの……――の皮を被った、超常テクノロジーVS最強異世界魔法種族のトンデモ決戦。
ぶっ飛びまくりの話です。真面目な戦争戦闘話を期待してはいけない。
最初は自衛隊VS異世界軍隊でコンクエストをする想定だったけど、悪癖が多分に漏れた。
自衛隊名称ですが半分IF組織。
オグラ博士……これはもはや神話だ……!
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる