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しおりを挟むリアは文字の輪郭をなぞりながら、ブツブツと呟いた。
「ふーむ、どれどれ……? アルト、ツゥス、ミラボルテ、サティウシカ、ナハト、プディ、シャルテ……」
何やら、不思議な発音の言葉を呟いている。
この世界の言語は理解できるのに、今リアが呟いている言葉を理解できないというのが不思議だな。
俺たちが、その様子を固唾を飲んで眺めていると、突然、
「あっ!」
と、リアが短く叫んだ。
「どうした?」
「ちょっと待て。文字が!」
「何っ?!」
彼女の指差す先、あんなにくっきりと刻まれていた文字が、すうっと石像の中に吸い込まれるようにして消えていく。
「えっ? 消えてるのか、これは?」
「見ての通りだ。どうなってるんだ、いったい? まだ全部は読んでおらんのだぞ?!」
俺たちが口々に騒いでいる間に、石像に刻まれていたはずの文字は全て跡形もなく消えてしまったのだった。
文字が刻まれていた形跡もない。
まるで元からそこには何もなかったようだ。
「あらら、消えちゃいましたね」
「リア、解読できたのか?」
「うーん、単語は少し読み取れたが、時間が足りなくて、全部は読み切れなくての。すまん」
リアは神妙な顔をしながら呟いた。
「わらわにわかったのは、眠りについた魔帝国が復活するだろうという戯言だけじゃ。時期と方法についても書いてありそうな感じだったのじゃが、読もうとしたら消えた」
「魔帝国?」
「ああ、魔族の国のことじゃよ。この石像のモデルは恐らく、勇者に倒されたとされている堕天使ベラドーナだろう」
「ベラドーナ?」
初めて聞く名前だな。元の世界なら堕天使はルシファーとかだっけ?
とか考えていたら、メイシアが勢いよく手を挙げた。
「はいっ! わたし、その人を神聖書で見たことがあります! 魔族を導く女神のような存在ですよね、確か? 昔、人間と魔族が戦った時、魔族軍を率いていたと書いてありました。リアさんの言う通り、当時の勇者様に倒されたようですが。そして、今では魔神教という、邪教のシンボルとされているみたいですよ」
「魔族の女神だって? だから、こんな神殿みたいなところに石像があるのか……っていうか、結局女神って九重の言う通りじゃないか!」
俺がそう口にした瞬間、九重の耳がぴくぴくと動いた。
「ほらね? 僕の言った通りじゃないですかぁ!」
くそう。可愛いな、九重のドヤ顔。
「ふむ。では、やはり石像が踏みつけているのは人間なのか」
腕を組みながら石像を見上げる課長。
隣でメイシアがその真似をして一緒に腕組みをしている。
こっちはこっちで微笑ましいな。
以前はじいちゃんと孫だったビジュアルが、母娘かちょっと年の離れた姉妹くらいに変更しているけど。
(ん? 何か足りない)
あれ?
そういえば、あの人はどこへ行ったんだろうか。
さっきまでメイシアと一緒に行動をしていたはずの、カオリさんの姿が見当たらない。
「おい、メイシア。カオリさんはどこだ?」
「え? カオリさん、今まで一緒にいたはずなんですけど」
何だか嫌な予感がするんだよね。
あの人放っておいちゃいけない気がする。俺の勘だけど。
その時チラッと視界の端で、茶色の何かが動いた気がした。そして、その茶色の何かは、石像の広間から繋がる通路へと姿を消した。
(あの人茶髪だったし、多分アレだよな)
可愛らしい女性だとは思うけれど、何故かあまり仲間意識が湧いてこないんだよね。
むしろちょっと苦手だ。
外見は矢城さんに似てるんだけどなぁ。何か不思議だ。
「ちょっと探してきますね。課長たちは、ちょっとここで待っていてください」
「あ、先輩。僕も一緒に行きますよ!」
俺は九重と一緒に、広間の先にある通路へ向かった。
──────────
あああ、毎日更新できなかった……_| ̄|○ il||li
ちょっとこれから話が佳境に入る予定でプロットの練り直ししているので、更新が隔日くらいになると思います。
すみません、よろしくお願いしますm(_ _)m
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