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クリスの女装と誘拐と
クリスによる辛辣な目覚めとルドの決意
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「…………」
そこでクリスは唸りながらルドの手を投げ捨てた。
「って、あー! もう! 私はなにを言っているんだ!」
顔を真っ赤にしたクリスは乱暴に椅子から立ち上がる。そして、ドスドスと足音をたてながら壁へ一直線に歩いた。そのままガタガタと壁から装飾の剣を外してベッドに戻る。
「よし! これだけの重さがあれば十分だな」
クリスは眠っているルドに言った。
「犬! さっさと目覚めないと、これからこの剣を使って私の指を一本一本潰していくからな! 全部の指を潰しても起きなかったら、次は鞘から抜いた剣で私の指を切り落としていくぞ!」
壁に飾ってあった剣はそこそこ重さがあり、指ぐらいなら落とせば潰せる。そして、装飾が目的のため、斬れ味は悪い。斬ることはできるが傷口がズタズタになる。
ルドの指が微かに動いたが、気づいていないクリスは話を進めていく。机に小指を置き、剣の位置を調節した。
「よし。まずは左指から潰していくか!」
変に勢いづいた声にルドが慌てて体を起こす。
「ちょっ!? 止めて下さい!」
剣先がクリスの左小指の真上で止まった。なんとか剣の落下を止めたルドが大きく息を吐く。
「……どうして、自分を傷つけるのに躊躇いがないんですか? 他人は一生懸命助けるのに」
「お前の体を傷付けたところで、お前は目覚めないだろ?」
「ッ、その通りですが……だからと言って、こういうことはしないでください!」
ルドがクリスから剣を取り上げ、顔を背けて言った。
「自分は目覚めない方がよかったんです。あのまま捨ててもらえたほうが……」
「また眠りこんだら、次は私の喉を潰すからな。あと私の爪を一枚ずつ剥いで、寝ているお前の顔の上にのせていってやる」
予想以上のひどい発言にルドが背を向けたまま叫ぶ。
「脅迫ですか!」
「そうとも言う」
「そうとしか言いません!」
「とりあえず、こっちを見ろ」
ルドが恐る恐る顔を動かす。ゆっくりとクリスを見ると、呆れたように微笑んだ顔があった。
「まったく。世話がやける犬だな」
真っ直ぐな信念と強い意志を持った深緑の瞳。初めて見た時と変わらない。自分ごときでは奪えない輝き。それを自分の手で消すところだった……
ルドが一瞬でクリスから離れ、部屋のすみで額を床につけるように頭を下げた。
「師匠……すみませんでした!」
「お前、そこまで離れなくてもいいだろ」
歩き出そうとしたクリスをルドが鋭い声で止める。
「自分に近づかないで下さい!」
ルドの本気の気迫にクリスは足を静かに止めた。沈黙が流れる中、ルドが大きく息を吸って叫ぶように宣言する。
「自分は帝都に帰ります! 今まで、ありがとうございました!」
「……は?」
「自分は……自分は、師匠にふさわしくありません! そばにいないほうがいいです!」
「……そうか」
クリスはドアに向かって歩いた。ルドが頭を下げたまま黙ってその足音を聞く。
「これでいい。これでいいんだ。自分は、もう……」
「……って、引き下がるわけないだろ! このバカ犬!」
スパーン! とルドの頭にクリスの靴が直撃した。
「え? は?」
思わぬ攻撃にルドが顔をあげる。
ドアの前から靴を投げたクリスは、そのまま一直線に歩き、床に膝をついて呆けているルドの襟首を掴んだ。
「あれは私が自分の意思でしたことだ! おまえは悪くない! そんなことで、諦めるな!」
「そんなことではありません! もし、また……」
「おまえはワザと私を傷つけるのか?」
ルドが盛大に顔を振って否定する。
「そんなことしません!」
「なら、いいじゃないか」
「へ?」
間抜けな声を出したルドにクリスは手を放して立ち上がった。
「まあ、おまえになら殺されてもいいけどな」
「なにか言いました?」
聞こえていると思っていなかったクリスは誤魔化すようにルドを睨む。
「とにかく! さっさと魔法で治療が出来るようになって、私に何かあっても治せるようになれ!」
「ですが……」
「魔法で治療が出来るようにしてやる、と約束したのは私だ。私に約束を破らせる気か?」
「そんなことは……」
「なら、さっさと根性を入れ直せ。明日からまた教えていくぞ」
そう言い捨てたクリスはルドに投げた靴を拾った。そのまま靴を履こうとしたところでクリスの体がふらつく。
ルドが素早く立ち上がりクリスを支えた。
「まだ傷が完全に治っていないんですね?」
クリスは無言で顔を背ける。
「師匠はもう少し自分の体を大事にして下さい」
ルドが床に膝をつけ、クリスに靴を履かせた。クリスは顔を背けたままだが、耳が赤い。
「生きているんだから、別にいいだろ」
素っ気なく言った言葉にルドが琥珀の瞳をキツくする。
「だから、致命傷でなければ傷つくことを恐れないのですね。なら、自分も本気で覚悟を決めます」
ルドが立ち上がり、クリスを横抱きで抱えた。
「なっ!?」
「とりあえず、今日は屋敷まで送ります」
そのまま歩き出したルドの胸をクリスが叩く。
「歩ける! 下ろせ! そもそも、いつもは肩に担ぐだろ!?」
「肩に担ぐ姿勢だと傷にさわるかもしれませんから」
「だからって……くっ」
廊下ですれ違う使用人たちの視線が生温かくて痛い。視線から逃げるようにクリスがルドに顔を向ける。
そんなクリスを見下ろしながらルドが呟いた。
「自分も一緒に背負っていきますから」
「……聞こえていたのか!?」
寝ていると思って話した内容をルドが覚えていたことにクリスが慌てる。
「あ、あれはだな! た、ただの戯れ言だ! すぐに忘れろ!」
必死に言い訳をするクリスを無視してルドが庭に出た。どう考えても普通に屋敷に帰る道順ではない。
「馬車で帰るんじゃないのか!?」
「このまま走ったほうが早いです」
ルドの足に魔力が集まる。
『風よ、我が足に空を駆ける力を』
ずっと寝ていた分の体を動かすかのようにルドが勢いよく空へ駆け出す。
「おろせぇぇぇぇ!」
顔を真っ赤にしたクリスの叫び声を残して。
そこでクリスは唸りながらルドの手を投げ捨てた。
「って、あー! もう! 私はなにを言っているんだ!」
顔を真っ赤にしたクリスは乱暴に椅子から立ち上がる。そして、ドスドスと足音をたてながら壁へ一直線に歩いた。そのままガタガタと壁から装飾の剣を外してベッドに戻る。
「よし! これだけの重さがあれば十分だな」
クリスは眠っているルドに言った。
「犬! さっさと目覚めないと、これからこの剣を使って私の指を一本一本潰していくからな! 全部の指を潰しても起きなかったら、次は鞘から抜いた剣で私の指を切り落としていくぞ!」
壁に飾ってあった剣はそこそこ重さがあり、指ぐらいなら落とせば潰せる。そして、装飾が目的のため、斬れ味は悪い。斬ることはできるが傷口がズタズタになる。
ルドの指が微かに動いたが、気づいていないクリスは話を進めていく。机に小指を置き、剣の位置を調節した。
「よし。まずは左指から潰していくか!」
変に勢いづいた声にルドが慌てて体を起こす。
「ちょっ!? 止めて下さい!」
剣先がクリスの左小指の真上で止まった。なんとか剣の落下を止めたルドが大きく息を吐く。
「……どうして、自分を傷つけるのに躊躇いがないんですか? 他人は一生懸命助けるのに」
「お前の体を傷付けたところで、お前は目覚めないだろ?」
「ッ、その通りですが……だからと言って、こういうことはしないでください!」
ルドがクリスから剣を取り上げ、顔を背けて言った。
「自分は目覚めない方がよかったんです。あのまま捨ててもらえたほうが……」
「また眠りこんだら、次は私の喉を潰すからな。あと私の爪を一枚ずつ剥いで、寝ているお前の顔の上にのせていってやる」
予想以上のひどい発言にルドが背を向けたまま叫ぶ。
「脅迫ですか!」
「そうとも言う」
「そうとしか言いません!」
「とりあえず、こっちを見ろ」
ルドが恐る恐る顔を動かす。ゆっくりとクリスを見ると、呆れたように微笑んだ顔があった。
「まったく。世話がやける犬だな」
真っ直ぐな信念と強い意志を持った深緑の瞳。初めて見た時と変わらない。自分ごときでは奪えない輝き。それを自分の手で消すところだった……
ルドが一瞬でクリスから離れ、部屋のすみで額を床につけるように頭を下げた。
「師匠……すみませんでした!」
「お前、そこまで離れなくてもいいだろ」
歩き出そうとしたクリスをルドが鋭い声で止める。
「自分に近づかないで下さい!」
ルドの本気の気迫にクリスは足を静かに止めた。沈黙が流れる中、ルドが大きく息を吸って叫ぶように宣言する。
「自分は帝都に帰ります! 今まで、ありがとうございました!」
「……は?」
「自分は……自分は、師匠にふさわしくありません! そばにいないほうがいいです!」
「……そうか」
クリスはドアに向かって歩いた。ルドが頭を下げたまま黙ってその足音を聞く。
「これでいい。これでいいんだ。自分は、もう……」
「……って、引き下がるわけないだろ! このバカ犬!」
スパーン! とルドの頭にクリスの靴が直撃した。
「え? は?」
思わぬ攻撃にルドが顔をあげる。
ドアの前から靴を投げたクリスは、そのまま一直線に歩き、床に膝をついて呆けているルドの襟首を掴んだ。
「あれは私が自分の意思でしたことだ! おまえは悪くない! そんなことで、諦めるな!」
「そんなことではありません! もし、また……」
「おまえはワザと私を傷つけるのか?」
ルドが盛大に顔を振って否定する。
「そんなことしません!」
「なら、いいじゃないか」
「へ?」
間抜けな声を出したルドにクリスは手を放して立ち上がった。
「まあ、おまえになら殺されてもいいけどな」
「なにか言いました?」
聞こえていると思っていなかったクリスは誤魔化すようにルドを睨む。
「とにかく! さっさと魔法で治療が出来るようになって、私に何かあっても治せるようになれ!」
「ですが……」
「魔法で治療が出来るようにしてやる、と約束したのは私だ。私に約束を破らせる気か?」
「そんなことは……」
「なら、さっさと根性を入れ直せ。明日からまた教えていくぞ」
そう言い捨てたクリスはルドに投げた靴を拾った。そのまま靴を履こうとしたところでクリスの体がふらつく。
ルドが素早く立ち上がりクリスを支えた。
「まだ傷が完全に治っていないんですね?」
クリスは無言で顔を背ける。
「師匠はもう少し自分の体を大事にして下さい」
ルドが床に膝をつけ、クリスに靴を履かせた。クリスは顔を背けたままだが、耳が赤い。
「生きているんだから、別にいいだろ」
素っ気なく言った言葉にルドが琥珀の瞳をキツくする。
「だから、致命傷でなければ傷つくことを恐れないのですね。なら、自分も本気で覚悟を決めます」
ルドが立ち上がり、クリスを横抱きで抱えた。
「なっ!?」
「とりあえず、今日は屋敷まで送ります」
そのまま歩き出したルドの胸をクリスが叩く。
「歩ける! 下ろせ! そもそも、いつもは肩に担ぐだろ!?」
「肩に担ぐ姿勢だと傷にさわるかもしれませんから」
「だからって……くっ」
廊下ですれ違う使用人たちの視線が生温かくて痛い。視線から逃げるようにクリスがルドに顔を向ける。
そんなクリスを見下ろしながらルドが呟いた。
「自分も一緒に背負っていきますから」
「……聞こえていたのか!?」
寝ていると思って話した内容をルドが覚えていたことにクリスが慌てる。
「あ、あれはだな! た、ただの戯れ言だ! すぐに忘れろ!」
必死に言い訳をするクリスを無視してルドが庭に出た。どう考えても普通に屋敷に帰る道順ではない。
「馬車で帰るんじゃないのか!?」
「このまま走ったほうが早いです」
ルドの足に魔力が集まる。
『風よ、我が足に空を駆ける力を』
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