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第二章・片思い自覚編〜帝都へ
初日の終了と翌朝の準備と
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案内された部屋の前には見張りの兵士が立っていた。ここまでするのか、と表情を崩しかけたクリスに兵士が敬礼する。
執事がドアを開け、二人に室内を見せた。
「こちらが今日ご宿泊されるお部屋になります」
高価な装飾品で飾られた客室。
ベッドにテーブルと椅子、ソファーと暖炉。一見、普通の部屋のようだが、外からの侵入が難しいように窓は小さく、飾り柵がはまっている。足場となるベランダはない。
暖炉は頑丈な柵で閉じられ、薪の出し入れと掃除をする隙間のみ。
ドアの内側には鉄の飾り細工があり、もしドアを破壊して部屋に侵入しようとしても、飾り細工で簡単にドアが壊されないようにしてある。
「徹底した守りだな」
「隣も同じ作りの部屋になっております」
ルドが執事に声をかけた。
「ありがとうございます。あとは大丈夫ですので」
「わかりました。何かありましたら、呼び鈴でお呼びください」
執事が礼をして下がる。クリスは隣に立つルドを見上げた。
「なにをそんなに驚いているんだ?」
「予想以上の守りに……って、顔に出ていました?」
白い布を外しながらルドが恥ずかしそうに笑う。
「顔に出ていたというより……雰囲気か? そんな感じがした」
「さすが師匠です。魔法騎士団の時は、これぐらいの変化なら誰も気づきませんでしたよ」
ルドが尊敬の眼差しを向ける。クリスはその視線から逃げるように顔を逸らした。
(私はそんな目で見られるほどの存在ではない)
そのままクリスは話題を変えた。
「それにしても早い移動だな。普通なら帝都まで馬車で六、七日はかかるところを四日か」
「普通は出来ない移動方法ですが、セルの根回しのおかげで実現できました」
「クルマが使えれば、あと一日は短縮できるんだがな」
ルドの顔が青くなる。馬より早いクルマなら移動時間はもっと短縮できる。だが、それよりも二度と乗りたくない。
「た、確かに速いですが、クルマが走れない細い道もありますし、そもそも馬や牛が引かずに動く乗り物がありません。クルマのように勝手に動く乗り物が現れたら、大騒ぎになります」
「分かっている。だからクルマを走らせる場所は私の領地と、その近くと限定しているんだ」
「よかった」
ホッとした様子のルドにクリスはニヤリと口角をあげた。
「だが、乗り物は他にもあるぞ。クルマと同じぐらいの速さの物もあれば、それより速い物もある」
「え!?」
「そのうち乗せてやる」
「い、いえ! 自分はいいです! 遠慮します!」
ルドが首を横に振りながら慌てて下がる。その姿に、クリスはフッと目を細めた。今までの、悪戯混じりではない、優しく見守るような笑み。
「師匠?」
「少しは力が抜けたか?」
「は、はい……?」
わかっていないルドにクリスは説明した。
「あまり気張るな。自分の身は自分で守れるぐらいの力はある」
「ですが、これが自分の仕事で……」
「わかっている。ただ、お前だけで全てを背負うな。私に言えないこともあるのだろう。だが、それで全てを背負ってお前が押しつぶれても困る」
ルドが目を丸くした後、どこか複雑そうに微笑んだ。
「はい。ありがとうございます」
クリスはその表情に不満を覚えたが話を切った。
「明日は早いのか?」
「はい。日が昇る頃には出発します」
「なら、そろそろ休む。慣れない馬の移動でさすがに疲れた」
「そうですね。なにかありましたら、魔宝石に魔力を流してください。すぐにきますから」
「わかった、わかった」
「おやすみなさい」
ルドが静かに部屋から出ていく。クリスは赤い髪が消えたドアを眺めた。
急に体が冷える。移動中は背中にずっと温もりがあったから余計に……
「きょ、今日はいろいろありすぎただけだ!」
自分に言い訳をするように怒鳴ると、クリスは用意してあった寝間着に着替え、ベッドに潜り込んだ。
※
翌日の早朝、太陽が昇る前。
クリスは自然と目が覚めた。いつもならカリストが朝の支度をするため、ギリギリまで寝ている。しかし、ここではそうはいかない。
全部、自分でしなければならないという意識が働き、自然と目が覚めた。
クリスは金髪を櫛で梳き、昨日ルドが髪を結んだ金の飾り紐で一つにまとめる。
そして、セルシティが準備したという服が入っている箱を開け……固まった。
「……あいつ、絶対楽しんでいるな」
怒りを抑えて呟く。だが、治療師の服は目立つし、他に服はない。つまり、これしか着る服がない。
「仕方ない」
クリスは覚悟を決め、セルシティが準備した服に袖を通した。それから鏡で姿を確認する。
「……やはり、ダメだ」
唸ったクリスは箱の中にあった茶色のフードをすっぽりと被り全身を隠した。
そこにノックの音が響く。
「おはようございます、師匠。起きていますか?」
クリスは覚悟を決めると、ゆっくりドアを開け、フードで隠した顔を覗かせた。
「師匠?」
「……朝食は部屋に持ってきてくれ」
「どうかされましたか? 体調が悪いのですか?」
心配をしているルドの足をクリスは思いっきり蹴る。
「違う。カリストがいないから髪の色を変えられないのだ。道中は目に包帯をするが、ここで金髪緑目と騒がれたくない」
金髪緑目の人間は、神に棄てられた一族であり関わると厄災をもたらす、と噂されている。
そのため、クリスは毎朝カリストが鼈甲の櫛で髪を金色から茶色に変えていた。ただし、その魔法はクリスが眠ったり意識を失ったりすると解ける。
今朝はそのカリストがいないため、今のクリスの髪は金髪のまま。
そのことを察したルドが頷く。
「わかりました。朝食は自分の部屋に準備してもらいます。準備が出来ましたら呼びに来ます」
「それで頼む」
クリスは部屋に引っ込んだ。
執事がドアを開け、二人に室内を見せた。
「こちらが今日ご宿泊されるお部屋になります」
高価な装飾品で飾られた客室。
ベッドにテーブルと椅子、ソファーと暖炉。一見、普通の部屋のようだが、外からの侵入が難しいように窓は小さく、飾り柵がはまっている。足場となるベランダはない。
暖炉は頑丈な柵で閉じられ、薪の出し入れと掃除をする隙間のみ。
ドアの内側には鉄の飾り細工があり、もしドアを破壊して部屋に侵入しようとしても、飾り細工で簡単にドアが壊されないようにしてある。
「徹底した守りだな」
「隣も同じ作りの部屋になっております」
ルドが執事に声をかけた。
「ありがとうございます。あとは大丈夫ですので」
「わかりました。何かありましたら、呼び鈴でお呼びください」
執事が礼をして下がる。クリスは隣に立つルドを見上げた。
「なにをそんなに驚いているんだ?」
「予想以上の守りに……って、顔に出ていました?」
白い布を外しながらルドが恥ずかしそうに笑う。
「顔に出ていたというより……雰囲気か? そんな感じがした」
「さすが師匠です。魔法騎士団の時は、これぐらいの変化なら誰も気づきませんでしたよ」
ルドが尊敬の眼差しを向ける。クリスはその視線から逃げるように顔を逸らした。
(私はそんな目で見られるほどの存在ではない)
そのままクリスは話題を変えた。
「それにしても早い移動だな。普通なら帝都まで馬車で六、七日はかかるところを四日か」
「普通は出来ない移動方法ですが、セルの根回しのおかげで実現できました」
「クルマが使えれば、あと一日は短縮できるんだがな」
ルドの顔が青くなる。馬より早いクルマなら移動時間はもっと短縮できる。だが、それよりも二度と乗りたくない。
「た、確かに速いですが、クルマが走れない細い道もありますし、そもそも馬や牛が引かずに動く乗り物がありません。クルマのように勝手に動く乗り物が現れたら、大騒ぎになります」
「分かっている。だからクルマを走らせる場所は私の領地と、その近くと限定しているんだ」
「よかった」
ホッとした様子のルドにクリスはニヤリと口角をあげた。
「だが、乗り物は他にもあるぞ。クルマと同じぐらいの速さの物もあれば、それより速い物もある」
「え!?」
「そのうち乗せてやる」
「い、いえ! 自分はいいです! 遠慮します!」
ルドが首を横に振りながら慌てて下がる。その姿に、クリスはフッと目を細めた。今までの、悪戯混じりではない、優しく見守るような笑み。
「師匠?」
「少しは力が抜けたか?」
「は、はい……?」
わかっていないルドにクリスは説明した。
「あまり気張るな。自分の身は自分で守れるぐらいの力はある」
「ですが、これが自分の仕事で……」
「わかっている。ただ、お前だけで全てを背負うな。私に言えないこともあるのだろう。だが、それで全てを背負ってお前が押しつぶれても困る」
ルドが目を丸くした後、どこか複雑そうに微笑んだ。
「はい。ありがとうございます」
クリスはその表情に不満を覚えたが話を切った。
「明日は早いのか?」
「はい。日が昇る頃には出発します」
「なら、そろそろ休む。慣れない馬の移動でさすがに疲れた」
「そうですね。なにかありましたら、魔宝石に魔力を流してください。すぐにきますから」
「わかった、わかった」
「おやすみなさい」
ルドが静かに部屋から出ていく。クリスは赤い髪が消えたドアを眺めた。
急に体が冷える。移動中は背中にずっと温もりがあったから余計に……
「きょ、今日はいろいろありすぎただけだ!」
自分に言い訳をするように怒鳴ると、クリスは用意してあった寝間着に着替え、ベッドに潜り込んだ。
※
翌日の早朝、太陽が昇る前。
クリスは自然と目が覚めた。いつもならカリストが朝の支度をするため、ギリギリまで寝ている。しかし、ここではそうはいかない。
全部、自分でしなければならないという意識が働き、自然と目が覚めた。
クリスは金髪を櫛で梳き、昨日ルドが髪を結んだ金の飾り紐で一つにまとめる。
そして、セルシティが準備したという服が入っている箱を開け……固まった。
「……あいつ、絶対楽しんでいるな」
怒りを抑えて呟く。だが、治療師の服は目立つし、他に服はない。つまり、これしか着る服がない。
「仕方ない」
クリスは覚悟を決め、セルシティが準備した服に袖を通した。それから鏡で姿を確認する。
「……やはり、ダメだ」
唸ったクリスは箱の中にあった茶色のフードをすっぽりと被り全身を隠した。
そこにノックの音が響く。
「おはようございます、師匠。起きていますか?」
クリスは覚悟を決めると、ゆっくりドアを開け、フードで隠した顔を覗かせた。
「師匠?」
「……朝食は部屋に持ってきてくれ」
「どうかされましたか? 体調が悪いのですか?」
心配をしているルドの足をクリスは思いっきり蹴る。
「違う。カリストがいないから髪の色を変えられないのだ。道中は目に包帯をするが、ここで金髪緑目と騒がれたくない」
金髪緑目の人間は、神に棄てられた一族であり関わると厄災をもたらす、と噂されている。
そのため、クリスは毎朝カリストが鼈甲の櫛で髪を金色から茶色に変えていた。ただし、その魔法はクリスが眠ったり意識を失ったりすると解ける。
今朝はそのカリストがいないため、今のクリスの髪は金髪のまま。
そのことを察したルドが頷く。
「わかりました。朝食は自分の部屋に準備してもらいます。準備が出来ましたら呼びに来ます」
「それで頼む」
クリスは部屋に引っ込んだ。
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