【完結】女医ですが、論文と引きかえに漫画の監修をしたら、年下大学生に胃袋をつかまれていました

文字の大きさ
5 / 63

手術ですが、成功しました

しおりを挟む

 回復室に規則正しいモニター音が響く。私は静かに息をしている灯里の額を撫でた。


「手術は終わったよ」


 頭にはガーゼと包帯が巻かれ、痛々しい。でも、これは灯里が頑張った証。


 リクの手術の腕は本物だった。


 まるで楽器を演奏しているかのように、滑らかに動き続ける手。それは、一時ひとときも目が離せず、時間も忘れるほど。

 私は鮮明に記憶に刻まれた手術を思い返した。


※※


 メスを持ったリクは、迷いなく頭皮を切った。
 次に、電気メスで止血をしながら皮膚を頭蓋骨から剥がす。そして、電動ドリルで頭蓋骨に穴を開け、あっという間に頭蓋骨を外した。

 そこでリクが声をかける。


「マイクロスコープください」

「はい」


 滅菌カバーを被せた顕微鏡が運ばれる。顕微鏡といっても、理科室にある小さなものではない。人の背と同じぐらいの高さがある、コの字型をしたものだ。
 手術台の横から顕微鏡を差し込み、灯里の頭にセットする。

 リクが椅子に座ったままレンズを覗き込み、高さと位置を確認する。


「ここでいいですよ」

「はい」


 顕微鏡の車輪が固定される。

 リクは滅菌カバー越しにダイヤルを調節してピントを合わせた。顕微鏡はテレビと繋がっており、リクの視界と同じものが映し出される。

 見学者たちがテレビに集中する。


「ワタシの道具、ください」

「はい」


 私はリクが持参した手術道具をワゴンの上に並べた。もちろん、滅菌済み。


「グラッツェ。ゆずりん先生は、良い仕事をしますね」

「何度も言いますが、柚鈴ゆりです」

「ゆずりん、可愛いと思いますよ?」


 私はツンと無視をする。譲れないものは譲れない。
 リクはそんな私を気にすることなく、自分の手術道具を組み立てた。

 事前に手術台に装着していた棒に滅菌した布をかけ、その上に自由に曲がるアームを装着。アームの先にはクリップがある。


「アプローチ、始めます」


 リクが細く平たいヘラを脳の隙間に入れる。そこから脳を傷つけないよう慎重に広げ、問題の血管までの道を作る。

 ヘラの位置が決まると、先ほど装着したアームの先にあるクリップで挟む。これでヘラの位置を固定。
 さらに数ヶ所ヘラを固定し、問題の血管への視野を確保する。

 リクが顔を上げて私を見た。


「サポート、お願いしますネ」

「はい」


 ここからが重要だ。


 リクが考案した治療法は、他にある細い血管を縫い合わせて太くする方法。他の血管が太くなれば、そちらに血液が流れ、神経を刺激している血管は太くならない。

 人工血管だと成長とともに交換が必要になり、再手術がいる。
 それが、この方法だと体の成長とともに血管も成長するため、再手術は必要ない。

 しかし、丁度よい位置に細い血管が二本以上なければ手術はできない。
 そして、この細い血管を縫い合わせる技術がいる。細く薄い血管を血管の空洞を潰すことなく隙間なく縫合する。

 これが最大の難関。この技術を持つ医師は少ない。


「よい位置に細い血管が二本ありました。あとは縫い合わせるだけです」

「……そうですね」


 縫い合わせるだけ、が難しいんだよ! 見学者たちの心の叫びが聞こえた気がした。

 一方のリクはどこ吹く風で、細い血管の周囲の組織を剥離していく。それが終わると、血管に極小のクリップを挟んで血流を止めた。


「では、血管を切ります」

「はい」


 リクが先の細いメスで血管を縦に切る。血管に残っていた血が広がり、視界を赤色に染めた。

 私は小さなガーゼで血を拭き取ると、注射器で生食を注いだ。それから、再びガーゼで生食を拭き取る。血は消え、切り開かれた血管だけが現れた。


「ブラーヴォ。とても良い動きです。もう一本切りますヨ」

「はい」


 さっきと同じ作業を繰り返す。レンズ越しに切り開かれた血管が二本並んだ。


「この病気の特徴は、細い血管が同じ場所に何本も出来てしまうことです。その血管を集めれば、もともと出来るはずだった太い血管ができる。つまり、元通りってことですネ」

「はい」


 だから! それが簡単に出来たら苦労しないんだ! という、見学者たちの無言の叫びを背中に感じる。


「じゃあ、縫いますネ」

「はい」


 湾曲した極小の縫い針を付けた持針器じしんきをリクに手渡す。
 リクは左手に先が細い鑷子ピンセットを持ち、針を血管に刺していく。これだけ繊細な作業なのに、指先が一切震えていない。

 まるで精密機械のような作業。リク自身からも、普段の軽い雰囲気が消える。
 

 微かな息づかいと、鬼気迫る気配。


 それも、そうだ。この縫合次第では再手術が必要になり、場合によっては脳に障害が出る。

 誰も動けない。物音ひとつたてられない。心電図の音が規則正しく響く。


 全員の時が止まる。


 しかし、永遠にも感じた時間は意外にも短く、時計の針は五分ほどしか進んでいなかった。


「次、繋げます」

「はい」


 太くした血管の端を血管に縫い付ける。位置的にも、この作業のほうが格段に難しい。再び静寂が落ちる。

 三分後、リクが顕微鏡から目を離した。


「一回、血を流しましょう」

「はい」


 リクがレンズを覗き、血流を止めていたクリップを外す。すると、平らになっていた血管に血が流れ、円柱形に膨らんだ。

 リクが鑷子で血管を確認する。


「漏れはなさそうですね。では、仕上げをしましょう」

「はい」


 リクがクリップを戻し、再び血流を止める。血管に残っていた血が流れ出る。私は急いで生食を流し、血を拭き取った。

 リクが血管の先を私の方に向ける。


「ちょっと、この中に水を入れてください」

「えっと、この生食でいいですか?」

「そう。その、セイショクを入れてください」

「はい」


 私は注射器で静かに生食を入れた。血管から血が混じった生食が溢れ出す。が、すぐに透明になった。

 リクが血管をクリップで止める。


「グラッツェ。繋げますヨ」

「はい」


 リクがクリップの先にある血管の断面を、もう一つの血管と繋げていく。これが最後の作業。

 だが、これには一番時間がかかった。位置を確認しながら慎重に針を通す。


 気が付くと十分が経過していた。


 血管を繋ぎ終えたリクは、血管に付けていたクリップを外した。血管の中にあった生食が繋がった先の血管に流れる。

 リクは鑷子で血管の向きを変え、生食が漏れていないか確認する。


「大丈夫そうですネ」


 リクは全てのクリップを外した。出血はない。


「では、最後の仕上げです」


 液体糊を血管に吹きかける。これで縫合した部分を外からも固め、縫合部からの出血を予防する。


「ふぅ……」


 私はマスクの下で力を抜いた。あとは、頭蓋骨を戻して、頭皮を縫合するだけ……


 突如、規則正しく鳴っていた心電図の音が乱れた。同時に灯里の体が小刻みに震える。


「痙攣!?」

「まさか、手術が失敗したのか!?」


 見学者たちに、どよめきが広がる。


「新しい血管が出来て、血流量は減っている。神経を刺激することはないはずだ」

「なら、なぜ痙攣が?」

「手術中に神経を傷つけた可能性も……」


 言葉が耳に刺さる。どうすればいい? どうしたら……


 狼狽える私にリクが声をかけた。


「落ち着いて。コレは血管が原因の痙攣ではないですヨ」

「なら、痙攣の原因は?」

「シバリングですネ」


 思わぬ言葉に私は目を開いた。


「「シバリング!」」


 麻酔科医と私の声が重なる。

 麻酔科医も盲点だったらしい。お互いに視線を交わした後、私はリクに質問した。


「シバリングって、体が冷えた時、体温を上げるため筋肉が震える現象ですよね? 今は、そんなに冷えていないと思うのですが。それに通常は、全身麻酔から覚醒する時に、起こりますよね?」

「麻酔が浅くなった時にも起こりますが……この部屋は少し寒いですネ。すぐに体を温めてください」


 リクの指示に、看護師が灯里の体にかけていた布のスイッチを入れ、中に温風を流す。布団乾燥機と似たもので、これで全身を温めることができる。

 麻酔科医が麻酔量を調節する。


「体温はそんなに下がっていません。麻酔は少し増やしました」

「シバリングが起きた、一番の原因はこっちです。温かいセイショクください」


 看護師が温められた生食を壺の中に注ぐ。


「それ、貸してください」

「は、はい」


 私は持っていた注射器をリクに渡した。リクが生食の温度を手袋越しに確認する。


「部屋の冷たい空気に、脳が直接触れて、寒いと感じたのでしょう。あと、血を流すのに使ったセイショクが冷たくて、脳が冷えました。それで脳が体が冷えたと勘違いして、シバリングを起こしたと思います。直接、温めます」


 そう説明しながら、リクは注射器で温かい生食を吸う。それから、注射器の先を脳の一点に差し込み、ゆっくりと流し入れる。そして生食を拭き取り、道を作っていたヘラを外した。

 そこに看護師が頭を下げた。


「すみません。今日は見学者が多いので、いつもより室温が低めに設定してあったそうです」


 見学者たちが気まずそうな顔になる。

 リクはマスクをしていても分かる優しい微笑みを浮かべ、指を振った。


「ノン、ノン。あなたは悪くないですネ。私が早く終わらせていたら、良かったのです。さあ、閉じましょう」


 リクがウインクをする。こんなキザな仕草をする人は、映画やドラマだけだと思っていた。


(現実でここまで絵になる人がいるなんて)


 リクが外した頭蓋骨を戻し、止めていく。シバリングも収まり、あとは皮膚の縫合だけになった。

 リクが私に訊ねる。


「あとは皮膚を縫うだけですが」

「はい。もうすぐ……」


 手術室の扉が開いた。見学者たちの視線が集まる。


「約束通りきたぞ」


 低くも爽やかな若い声。マスクと帽子で顔のほとんどが隠れているため、目しか見えない。それでもイケメンと分かる、ハッキリとした目鼻立ち。高身長にバランスがとれた体躯。

 私がすかさずリクに紹介した。


「形成外科医の蒼井あおい れんです。軽い性格ですが、腕は確かですから」

「軽い性格は余計だぞ、ゆずり先生」

柚鈴ゆり


 私は思いっきり睨んだが蒼井には効かない。

 リクが笑顔で蒼井に挨拶をした。


「チャオ。話は聞きました。ワタシは老眼なので、助かりますネ」

「ご謙遜を。先ほどの血管の縫合は素晴らしかったです」

「あれはマイクロスコープのおかげで、見えているだけです。仕上げは若者にお願いします」


 リクが手術室の端に下がり、手術衣を脱ぐ。代わりに蒼井が灯里の頭側に立った。

 形成外科といえば美容整形のイメージだが、事故の傷や手術の痕を目立たないように縫合する技術もある。


「女の子だから、なるべく傷痕が分からないように、お願いね」

「任せとけ。どうせ髪で隠れるだろうけど、スキンヘッドにしても、ほとんど分からないぐらい綺麗に縫合してやるよ」


 蒼井は言動が軽く、外見もオシャレで、白衣を着ていなければ医者には見えない。けど、形成外科医としての腕は一流。同期の中でも抜きん出ている。

 蒼井が持針器を持って呟く。


「それに、あの漫画と同じ病名と手術だ。失敗なんてできない」

「え? なに?」

「いや、こっちの話だ」


 訝しむ私を置いて、蒼井が縫合を始める。

 頭皮は毛根があるため、他の皮膚より縫い合わせるのが難しい。でも、蒼井はその自身満々な態度のとおり、軽快な指裁きで綺麗に縫い合わせた。


※※


 振り返れば、長く感じた手術は最短時間で終わっていた。

 点滴やモニターの管に繋がれた灯里の手を握る。


 あたたかい。


 これで突然の痙攣に悩まされることも、苦しむこともなくなる。


「無事に終わって良かった……」


 灯里の指が微かに動く。まるで、私の手を握り返しているようで。灯里の指の動きに、目の奥がツンとくる。


(あぁ、もう)


 空いている手で目頭を押さえる。まだ、安心するには早い。両親への手術の経過説明、病室への移動。

 まだ、まだ、やることはある。気は抜けない。

 でも、今だけは少しだけ喜びに浸りたらせてほしい。灯里の未来が守れたことに。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...