完結•義母に家を追い出されましたが、プリンがあるので幸せです~助けたモフモフは幸運の聖獣でした~

文字の大きさ
1 / 2

家を追い出されまして

しおりを挟む
「さっさと出て行きな!」

 今朝まで普通に生活していた我が家。そこから追い出され、周囲に散らばる私の荷物。少ないけど通りにばら撒かれたら恥ずかしい。

 慌ててかき集めていると頭の上でバン! と玄関のドアが閉まる音が響いた。

「……そんな」

 代々続く薬師の家系。
 私の母は幼い頃に亡くなり、父は私が寂しい思いをしないように乳母を雇った。父は仕事のため相手にしてもらえず、人恋しかった私が乳母に懐くのに時間はかからなかった。
 しばらくして父は乳母と再婚。乳母は私の義母となった。

 すると、義母は徐々に私への態度が冷たくなり、父がいないところで疎外するようになった。そして、仕事で多忙のため不在なことが多い父に代わって義母が家を仕切るように。私を使用人と同等……いや、それ以下の扱いをするようになった。

 それが決定的になったのは、義妹の誕生。

 私の部屋は義妹に奪われ、屋根裏へ。朝は掃除、洗濯から始まり、午後からは薬師として薬の調合。元々は私が家を継ぐ予定だったから薬師としての知識と技術は父から教わっていた。でも、義母は義妹に継がそうと画策。

 その結果、私は濡れ衣を着せられ、後継者としての権利を剥奪された。それでも調合の知識と腕はあるので、薬を作る毎日。しかも、家を継ぐはずの義妹が調合しなければならない薬まで作らされる始末。

 それでも、父が帰宅した時は義母と義妹と仲が良いフリとした。そうしなければ、あとで何をされるか分からなかったから。

 こうして、その日を生き延びるだけで精一杯の生活をしていた。

「きゅ?」

 胸から聞こえた可愛らしい声に視線をさげる。私の胸から、ピョコと顔を出したフワフワな生き物。
 銀色にも見える白い毛。三角形の大きな耳に、真っ青な瞳。額には小さな青い宝石が付いている。両手にすっぽりと収まる小さな体。しかも、爽やかなジャスミンの香り付き。

 心配そうに見上げてくるモフモフに声をかける。

「大丈夫よ、モフ」
「ぎゅ」

 モフが微妙な顔になる。どうも、この名前が気に入らないらしく、名前を呼ぶと顔をしかめる。でも、私としてはそれ以外の呼び名が浮かばないので許してほしい。

「ごめん、ごめん」

 頭を撫でようと手を伸ばすと、耳をペタリと伏せる。そのまま触れれば、柔らかく滑らかな毛が指の間を抜ける。気持ちよさそうに目を細めるモフの姿はやっぱり可愛らしい。

 数日前。過労で亡くなった父の葬式のあと、裏庭で泣いているとモフが空から落ちてきた。どうやら猛禽類に捕まって運ばれていたらしく、背中には鋭い爪痕があった。

 驚きで涙が止まった私は必死に治療をした。モフはしばらく生死の境をさまよっていたけど、薬が効いたのか数日で回復。
 元気になった今では私の側から離れなくなっていた。

「……うん、大丈夫」

(私が不安になっていたら、モフも不安になっちゃう)

 無理やり元気を出して散らばった荷物を鞄に押し込む。

「じゃあ、行こうか」

 行く当てなんてない。でも、ここにいても始まらない。

 とりあえず私は歩き出した。



 ガラガラガラ……

 馬車の車輪の大きな音と酷い揺れ。そんな中でも眠れるほど疲れていた私はいつの間にか熟睡していた。

 ペチペチペチペチ……

 頬を柔らかいものが触れる。次に滑らかな毛がくすぐる。そして、香るジャスミンの匂い。

「うぅ……なに?」

 目を開けると眩しい光が飛び込んできた。光に負けじと目を凝らす。すると、キラキラと輝く大きな川が広がっていた。対岸が見えず、大きな船が集まっている。

「すっごぉい! モフ、すごいね!」

 私は顔を叩いていたモフを抱き上げた。

「お、目が覚めたかい? お嬢ちゃん」

 前からしゃがれ声がする。顔をあげると、髭を蓄えた老人が振り返っていた。

「寝てしまって、ごめんなさい!」

 謝る私に老人が豪快に笑う。

「気にすることはないよ。もう少しで港町だよ」
「え? あれ、川じゃないんですか?」
「あれが川なら壮大だが、海だよ」
「初めて見ました!」

 つい興奮してしまう。そういえば、微かに塩っぽい匂いがする。

(これが海の匂い!)

 現状を忘れて、ついウキウキしてしまう。

 私は宝石のように輝く海を眺めながら、こうなった経緯を思い出した。
 家を追い出されて当てもなく街を歩いていると、馬車の荷台に手をついて佇んでいる老人がいた。

「どうしたのですか?」
「いや、ちょっと腰がな。もともと痛みがあるんだが、今日は特に酷くて家に帰るまで馬車に座っていられるか、どうか……」
「それなら、ちょうどいい薬があります」

 私は数少ない荷物の中から塗り薬と飲み薬を出した。半信半疑だった老人だが腰に薬を塗ったら驚いた表情になった。

「スーとして気持ちいい。痛みも軽くなったよ。すごいな」
「この薬を飲むと、効き目が長持ちしますよ」
「じゃあ、飲んでみよう」

 こうして薬を飲んだ老人と他愛のない話をした。動けるようになった老人が私に訊ねる。

「これからどこかに行くのかい? 送っていくよ」
「あの、実は……」

 すべては話したくない私は帰る家がないことだけを伝えると、老人が提案をした。

「なら、わしの家に来るかい? 家といっても離れだけどな。ばあさんと二人暮らしなんだが、人手が欲しい時に手伝ってくれたら助かる」
「いいんですか!?」
「いいよ。わしの名前はコボルトだ。お嬢ちゃんは?」
「クロエです!」

 こうして私はコボルトさんの家に行くことになった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!

蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。 しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。 だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。 国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。 一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。 ※カクヨムさまにも投稿しています

愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

【完結】“自称この家の後継者“がうちに来たので、遊んでやりました。

BBやっこ
恋愛
突然乗り込んできた、男。いえ、子供ね。 キンキラキンの服は、舞台に初めて上がったようだ。「初めまして、貴女の弟です。」と言い出した。 まるで舞台の上で、喜劇が始まるかのような笑顔で。 私の家で何をするつもりなのかしら?まあ遊んであげましょうか。私は執事に視線で伝えた。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

奈落を封印する聖女ですが、可愛い妹が追放されたので、国を見捨てる事にしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ファンケン公爵家の長女クラリスは本来家を継ぐ立場だった。だが奈落の底に住む魔族を封印する奈落の聖女に選ばれてしまった。聖なる役目を果たすため、クラリスは聖女となり、次女のエレノアが後継者となった。それから五年、両親が相次いで亡くなり、エレノアは女性ながら公爵となり莫大な資産を引き継いだ。その財産に目をつけたのが、日頃から素行の悪い王太子アキーレヌだった。愛人のキアナと結託し、罠を仕掛けた。まず国王を動かし、エレノアを王太子の婚約者とした。その上で強引に婚前交渉を迫り、エレノアが王太子を叩くように仕向け、不敬罪でお家断絶・私財没収・国外追放刑とした。それを奈落を封じる神殿で聞いたクラリスは激怒して、国を見捨てエレノアと一緒に隣国に行くことにしたのだった。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

処理中です...