6 / 12
突然のお誘い
しおりを挟む
「あ、あの……」
『やぁ、ユキ君かい?』
その声にキュッと胸が締まる。何度もテレビ越しに聞いていた声が、自分のスマホから聞こえる。
緊張と、喜びと、驚きと、様々な感情の波に襲われながらも頭は妙に冴えていて。
「僕の名前は雪斗ですが」
ここでツンデレのツンが発揮され、不思議なほど冷えた声が口から出ていた。
『あぁ、ユキ君のほうが呼びやすいと思ったんだが、ダメか?』
まるで長年の友人のような馴れ馴れしさ。だが、そのことに嫌悪感はなく、むしろ嬉しさが募って。
「……し、仕方ないですね。呼びやすいように呼んでいいですよ。で、何か用ですか? いえ、その前にどうやってこの番号を知りました?」
ツンデレのツンというか、ついプライドが邪魔をして偉そうに話してしまう。
だが、電話の先のライオネルは気にした様子なく。
『君の事務所の社長から番号を聞いたんだ。いつまで待っても連絡がなさそうだから』
(僕からの連絡を待っていた!?)
予想外の言葉に驚きながらも、平静な声音で話を進める。
「撮影から二日しか経っていませんが?」
『もう二日だよ。それで、もし君の予定が空いていればなんだが……今夜、一緒に食事でもどうだい?』
食事という言葉に雪斗の眉がピクリと跳ねる。世界的なモデルとの食事なんて、どれだけの金を積んでもあり得ない事態。
素直に「はい」と返事をすればいいのに、ここで雪斗の面倒な性格が顔を出す。
「……えらく急な話ですね」
不機嫌混りの声と言葉に対して、ライオネルはすまなそうに会話を続ける。
『なかなか時間がとれなくてね。難しいなら、君の予定が空いてる日を空けるよ』
相手は世界的な売れっ子モデル。日本にいる間、食事をしたいと誘ってくる相手はいくらでもいる。それを自分のために時間を空けるなど贅沢すぎる。と、いうか先約が泣くことになるし、盛大に恨まれる。
少し間を置いた雪斗は決まっていた答えを口にした。
「今夜で大丈夫ですよ。どこに何時に行けばいいですか?」
『そうか! じゃあ、今夜7時に……』
スマホ越しでも相手の空気が明るくなったのが分かる。
雪斗は食事をする店の住所と時間をメモすると、スマホの通話を切った。それから、夢じゃないことを確認するために頬をつねり……
「イテッ! …………マジか」
半信半疑の声が古びた畳に落ちた。
~※~
「……本当にここか?」
ライオネルが指定したため、どんな高級店かと身構えていたら、教えられた場所は一軒の古民家だった。
石造りの塀に囲まれ、人を拒絶するような雰囲気さえ漂う。
「看板もないし、間違えたか?」
そう考えてもおかしくないほど周囲は普通の住宅街。高級住宅地とかではなく、ごく普通の家が並んでいて、近くには公園もある。
むしろ、この古民家が浮いているのだ。たぶん、この辺りが畑だった頃からあり、時代の流れで周りが住宅地になったのだろう。
「ライオネルがここに住んで……いるわけないよな」
入るか迷っていると、塀の奥にある横開きのドアがガラガラと開いた。
黒髪が風に揺れ、サングラスの下にある深緑の目がこちらを睨む。その様子にライオネルが暗殺者の役を演じていた映画を思い出した。その時と同じぐらい殺気を振りまき、警戒している。
その迫力に雪斗の足が思わず下がったところで、ライオネルの顔が明るくなった。
「やあ、待っていたよ」
雪斗に気づくと同時に空気がガラリと変わる。両手を広げ、久しぶりに再会した長年の友人のような笑みで近づく。
「入ってくれ」
さりげなく雪斗の腰に手をまわし、自宅のように招き入れる。
(まさか、本当に住んでいるのか!?)
半信半疑のまま、ゆっくり足を踏み入れた。
『やぁ、ユキ君かい?』
その声にキュッと胸が締まる。何度もテレビ越しに聞いていた声が、自分のスマホから聞こえる。
緊張と、喜びと、驚きと、様々な感情の波に襲われながらも頭は妙に冴えていて。
「僕の名前は雪斗ですが」
ここでツンデレのツンが発揮され、不思議なほど冷えた声が口から出ていた。
『あぁ、ユキ君のほうが呼びやすいと思ったんだが、ダメか?』
まるで長年の友人のような馴れ馴れしさ。だが、そのことに嫌悪感はなく、むしろ嬉しさが募って。
「……し、仕方ないですね。呼びやすいように呼んでいいですよ。で、何か用ですか? いえ、その前にどうやってこの番号を知りました?」
ツンデレのツンというか、ついプライドが邪魔をして偉そうに話してしまう。
だが、電話の先のライオネルは気にした様子なく。
『君の事務所の社長から番号を聞いたんだ。いつまで待っても連絡がなさそうだから』
(僕からの連絡を待っていた!?)
予想外の言葉に驚きながらも、平静な声音で話を進める。
「撮影から二日しか経っていませんが?」
『もう二日だよ。それで、もし君の予定が空いていればなんだが……今夜、一緒に食事でもどうだい?』
食事という言葉に雪斗の眉がピクリと跳ねる。世界的なモデルとの食事なんて、どれだけの金を積んでもあり得ない事態。
素直に「はい」と返事をすればいいのに、ここで雪斗の面倒な性格が顔を出す。
「……えらく急な話ですね」
不機嫌混りの声と言葉に対して、ライオネルはすまなそうに会話を続ける。
『なかなか時間がとれなくてね。難しいなら、君の予定が空いてる日を空けるよ』
相手は世界的な売れっ子モデル。日本にいる間、食事をしたいと誘ってくる相手はいくらでもいる。それを自分のために時間を空けるなど贅沢すぎる。と、いうか先約が泣くことになるし、盛大に恨まれる。
少し間を置いた雪斗は決まっていた答えを口にした。
「今夜で大丈夫ですよ。どこに何時に行けばいいですか?」
『そうか! じゃあ、今夜7時に……』
スマホ越しでも相手の空気が明るくなったのが分かる。
雪斗は食事をする店の住所と時間をメモすると、スマホの通話を切った。それから、夢じゃないことを確認するために頬をつねり……
「イテッ! …………マジか」
半信半疑の声が古びた畳に落ちた。
~※~
「……本当にここか?」
ライオネルが指定したため、どんな高級店かと身構えていたら、教えられた場所は一軒の古民家だった。
石造りの塀に囲まれ、人を拒絶するような雰囲気さえ漂う。
「看板もないし、間違えたか?」
そう考えてもおかしくないほど周囲は普通の住宅街。高級住宅地とかではなく、ごく普通の家が並んでいて、近くには公園もある。
むしろ、この古民家が浮いているのだ。たぶん、この辺りが畑だった頃からあり、時代の流れで周りが住宅地になったのだろう。
「ライオネルがここに住んで……いるわけないよな」
入るか迷っていると、塀の奥にある横開きのドアがガラガラと開いた。
黒髪が風に揺れ、サングラスの下にある深緑の目がこちらを睨む。その様子にライオネルが暗殺者の役を演じていた映画を思い出した。その時と同じぐらい殺気を振りまき、警戒している。
その迫力に雪斗の足が思わず下がったところで、ライオネルの顔が明るくなった。
「やあ、待っていたよ」
雪斗に気づくと同時に空気がガラリと変わる。両手を広げ、久しぶりに再会した長年の友人のような笑みで近づく。
「入ってくれ」
さりげなく雪斗の腰に手をまわし、自宅のように招き入れる。
(まさか、本当に住んでいるのか!?)
半信半疑のまま、ゆっくり足を踏み入れた。
32
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる