完結•一目惚れから始まる無自覚な恋~見た目の良い二人の一方が恋心を自覚するまで~

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突然のお誘い

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「あ、あの……」
『やぁ、ユキ君かい?』

 その声にキュッと胸が締まる。何度もテレビ越しに聞いていた声が、自分のスマホから聞こえる。
 緊張と、喜びと、驚きと、様々な感情の波に襲われながらも頭は妙に冴えていて。

「僕の名前は雪斗ですが」

 ここでツンデレのツンが発揮され、不思議なほど冷えた声が口から出ていた。

『あぁ、ユキ君のほうが呼びやすいと思ったんだが、ダメか?』

 まるで長年の友人のような馴れ馴れしさ。だが、そのことに嫌悪感はなく、むしろ嬉しさが募って。

「……し、仕方ないですね。呼びやすいように呼んでいいですよ。で、何か用ですか? いえ、その前にどうやってこの番号を知りました?」

 ツンデレのツンというか、ついプライドが邪魔をして偉そうに話してしまう。
 だが、電話の先のライオネルは気にした様子なく。

『君の事務所の社長から番号を聞いたんだ。いつまで待っても連絡がなさそうだから』

(僕からの連絡を待っていた!?)

 予想外の言葉に驚きながらも、平静な声音で話を進める。

「撮影から二日しか・・経っていませんが?」
もう・・二日だよ。それで、もし君の予定が空いていればなんだが……今夜、一緒に食事でもどうだい?』

 食事という言葉に雪斗の眉がピクリと跳ねる。世界的なモデルとの食事なんて、どれだけの金を積んでもあり得ない事態。
 素直に「はい」と返事をすればいいのに、ここで雪斗の面倒な性格が顔を出す。

「……えらく急な話ですね」

 不機嫌混りの声と言葉に対して、ライオネルはすまなそうに会話を続ける。

『なかなか時間がとれなくてね。難しいなら、君の予定が空いてる日を空けるよ』

 相手は世界的な売れっ子モデル。日本にいる間、食事をしたいと誘ってくる相手はいくらでもいる。それを自分のために時間を空けるなど贅沢すぎる。と、いうか先約が泣くことになるし、盛大に恨まれる。

 少し間を置いた雪斗は決まっていた答えを口にした。

「今夜で大丈夫ですよ。どこに何時に行けばいいですか?」
『そうか! じゃあ、今夜7時に……』

 スマホ越しでも相手の空気が明るくなったのが分かる。
 雪斗は食事をする店の住所と時間をメモすると、スマホの通話を切った。それから、夢じゃないことを確認するために頬をつねり……

「イテッ! …………マジか」

 半信半疑の声が古びた畳に落ちた。


~※~

「……本当にここか?」

 ライオネルが指定したため、どんな高級店かと身構えていたら、教えられた場所は一軒の古民家だった。
 石造りの塀に囲まれ、人を拒絶するような雰囲気さえ漂う。

「看板もないし、間違えたか?」

 そう考えてもおかしくないほど周囲は普通の住宅街。高級住宅地とかではなく、ごく普通の家が並んでいて、近くには公園もある。
 むしろ、この古民家が浮いているのだ。たぶん、この辺りが畑だった頃からあり、時代の流れで周りが住宅地になったのだろう。

「ライオネルがここに住んで……いるわけないよな」

 入るか迷っていると、塀の奥にある横開きのドアがガラガラと開いた。
 黒髪が風に揺れ、サングラスの下にある深緑の目がこちらを睨む。その様子にライオネルが暗殺者の役を演じていた映画を思い出した。その時と同じぐらい殺気を振りまき、警戒している。

 その迫力に雪斗の足が思わず下がったところで、ライオネルの顔が明るくなった。

「やあ、待っていたよ」

 雪斗に気づくと同時に空気がガラリと変わる。両手を広げ、久しぶりに再会した長年の友人のような笑みで近づく。

「入ってくれ」

 さりげなく雪斗の腰に手をまわし、自宅のように招き入れる。

(まさか、本当に住んでいるのか!?)

 半信半疑のまま、ゆっくり足を踏み入れた。


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