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「……無事か?」
絹のように艶めいた漆黒の髪の下にある深い海のような藍色の瞳が私を見つめる。
まっすぐな鼻筋に薄い唇に精悍な顔立ち。
しかも、私を支えている腕はしっかりと鍛えられていて安定感抜群。まさしく、眉目秀麗という容姿。
「きゅ、きゅぁ……」
(は、はい……)
外見は二十代半ばぐらいに見えるが、年齢以上に落ち着いた雰囲気がより安心感を与える。
そこに軽く走ってくる足音がした。
目をむけると短い淡い栗色の髪をした二十歳前後ほどの青年が元気よく手を振りながら駆けてくる。
アーモンド形の大きな茶色の瞳に整った顔立ちで、親しみやすそうな雰囲気。スラリとした体躯でもう少し大きくなりそうな感じでもある。
「だんちょ……」
その声に藍色の瞳が鋭くなり、空気がピリッとなる。
それだけで、走っていた青年が慌てて言い直した。
「えっと、その、マクティーラ様。置いて行かないでください」
その言葉でマクティーラと呼ばれた美青年の雰囲気が少しだけ緩む。
「こいつがガルーダにさらわれかけていた」
「だからって、いきなり走り出して魔法をぶっ放さないでください。イラール先輩がいたら半日お小言コースでしたよ」
そう言いながら青年が私を見下ろす。
クリッとしたアーモンド形の大きな目がマジマジと私を見るのだけど、そこに映った姿が……
「きゅぁぁぁあ!?」
(あざらしぃぃぃい!?)
ぽわぽわな毛に包まれた愛くるしいむちむちボディ。
丸い目と、その上にある丸い眉。ピョンと伸びたひげと黒い鼻に、どことなく笑っているかのような口角が上向いた小さな口。
それは、どこからどう見ても真っ白な赤ちゃんアザラシで……
「ぷきゅぅ、きゅあきゅぅきゅうぅぅぅう!!!!」
(私はアザラシを愛でたいのであって、なりたかったわけじゃないのぉぉぉお!!!!!!)
いきなり叫んだ私に驚いたのか栗色の髪の青年がビクリと下がる。
一方で、マクティーラの藍色の瞳が再び鋭くなった。
「フィア、何をした?」
「な、何もしていませんよ!」
「本当か?」
「本当も何もしてません! 目の前で見ていたでしょう!?」
必死に弁明するフィアと呼ばれた青年と、無言のまま威圧するマクティーラ。
そして、そんな二人の間でメソメソと泣く私。
「きゅきゅぅぅぅ……きゅ、ぷきゅぁ?」
(なんで私がアザラシにぃぃぃ……って、なんで私はアザラシを愛でたかったんだろ?)
心の中から噴き出た感情をそのまま叫んでしまったけど、どうしてそう感じたのか思い出せない。
「きゅ? きゅ?」
(えっ? えっ?)
首を傾げながら戸惑っていると、上からゾクリと視線を感じた。
「きゅぅ?」
(なに?)
顔をあげるとそこには不気味な笑みで私を見下ろす藍色の瞳があり……
「きゅぁぁぁあ!?」
(きゃぁぁぁぁ!?)
私は恐怖のあまりに絶叫して気絶した。
絹のように艶めいた漆黒の髪の下にある深い海のような藍色の瞳が私を見つめる。
まっすぐな鼻筋に薄い唇に精悍な顔立ち。
しかも、私を支えている腕はしっかりと鍛えられていて安定感抜群。まさしく、眉目秀麗という容姿。
「きゅ、きゅぁ……」
(は、はい……)
外見は二十代半ばぐらいに見えるが、年齢以上に落ち着いた雰囲気がより安心感を与える。
そこに軽く走ってくる足音がした。
目をむけると短い淡い栗色の髪をした二十歳前後ほどの青年が元気よく手を振りながら駆けてくる。
アーモンド形の大きな茶色の瞳に整った顔立ちで、親しみやすそうな雰囲気。スラリとした体躯でもう少し大きくなりそうな感じでもある。
「だんちょ……」
その声に藍色の瞳が鋭くなり、空気がピリッとなる。
それだけで、走っていた青年が慌てて言い直した。
「えっと、その、マクティーラ様。置いて行かないでください」
その言葉でマクティーラと呼ばれた美青年の雰囲気が少しだけ緩む。
「こいつがガルーダにさらわれかけていた」
「だからって、いきなり走り出して魔法をぶっ放さないでください。イラール先輩がいたら半日お小言コースでしたよ」
そう言いながら青年が私を見下ろす。
クリッとしたアーモンド形の大きな目がマジマジと私を見るのだけど、そこに映った姿が……
「きゅぁぁぁあ!?」
(あざらしぃぃぃい!?)
ぽわぽわな毛に包まれた愛くるしいむちむちボディ。
丸い目と、その上にある丸い眉。ピョンと伸びたひげと黒い鼻に、どことなく笑っているかのような口角が上向いた小さな口。
それは、どこからどう見ても真っ白な赤ちゃんアザラシで……
「ぷきゅぅ、きゅあきゅぅきゅうぅぅぅう!!!!」
(私はアザラシを愛でたいのであって、なりたかったわけじゃないのぉぉぉお!!!!!!)
いきなり叫んだ私に驚いたのか栗色の髪の青年がビクリと下がる。
一方で、マクティーラの藍色の瞳が再び鋭くなった。
「フィア、何をした?」
「な、何もしていませんよ!」
「本当か?」
「本当も何もしてません! 目の前で見ていたでしょう!?」
必死に弁明するフィアと呼ばれた青年と、無言のまま威圧するマクティーラ。
そして、そんな二人の間でメソメソと泣く私。
「きゅきゅぅぅぅ……きゅ、ぷきゅぁ?」
(なんで私がアザラシにぃぃぃ……って、なんで私はアザラシを愛でたかったんだろ?)
心の中から噴き出た感情をそのまま叫んでしまったけど、どうしてそう感じたのか思い出せない。
「きゅ? きゅ?」
(えっ? えっ?)
首を傾げながら戸惑っていると、上からゾクリと視線を感じた。
「きゅぅ?」
(なに?)
顔をあげるとそこには不気味な笑みで私を見下ろす藍色の瞳があり……
「きゅぁぁぁあ!?」
(きゃぁぁぁぁ!?)
私は恐怖のあまりに絶叫して気絶した。
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