夏夜と死の怪談会

サトウ・レン

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神原望

復讐の終わり 後編

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 お前を殺そうと決意したのはいいものの、じゃあそこからどうすればいいのか、なんてすぐには思い付かなかった。とりあえず、パソコンで検索サイトに物騒な言葉を並べて、それをぼんやり眺める日が続いたな。

 それまではあまり積極的には利用してこなかったんだけど、SNSを利用するようになってからは、負の感情を持つ人間同士の関係が構築されるようになった。恨みや復讐心を持っている人間の、嫌な言い方をすれば、傷の舐めあい集団なんだが、それは思いの外、居心地が良かった。共通の趣味を持った奴もいて、実際に会う機会も増えるようになった。その中にひとり、

「俺、ひとを殺したことがあるんだ」

 ってうそぶく奴がいた。この中にはいないよ。別の奴だ。質問攻めにすると結局、嘘だって分かったんだけど、きっと彼の中には、ひとを殺してみたい、って願望があったんだろう。彼らと交流を深めるうちに、実際にひとを殺したことはないけれど、殺してみたい、と思ってる奴は意外なほど多い、ってことが分かってきた。俺だけじゃない、って安心感もあったし、そしてこれこそが復讐に使える、って思ったんだ。

 ひとを殺した奴、お金で殺しを請け負う奴なんて簡単に見つからない。探せばいるのかもしれないが、殺し屋なんて雇って、高い金を取られた挙句、弱みを握られる、っていう可能性もないわけじゃない。安手の物語じゃないんだから、って思うかもしれないが、殺人計画を立てること自体、現実感のないことなんだ。そしてほんのわずかな失敗も許されないんだから。

 かなり時間を掛けて、色々な人間と会って、普段は絶対に行かないようなひとの集まるイベントに参加したりもしたよ。いかがわしい企業が主催するイベントとか、な。

 条件に合う人間を見つけるために。
 ひとを殺したい、という欲望を胸のうちに秘めている人間だ。

 そして集まったのが、今回の五人だ。夢宮くんは元々の知り合いで、近所の子だって言ったけど、もちろん違う。今回のために、俺が探した人間のひとりだ。まぁ地元の子、っていうのは本当だけど、な。

 俺が彼らに頼んだのは、怖い話を語ってもらうことだ。どんな話でもいい。だけどひとつだけ条件を付けた。
 誰かを殺した、という内容であることだ。
 もちろん嘘で構わない。というより、嘘だろう。そんな簡単に警察に捕まってもいない殺人鬼と会えるわけなんてない。
 なんでか、って?
 どうだった、話を聞いてきて。怖かっただろ。

 今回の催しは、お前を殺すためだけに開いたんだ。俺たち六人で。語っていたことは嘘でも、俺たちに他人を殺したい、という気持ちがあったのは、本当だ。そして俺がお前に復讐心を抱いているのも、本当だ。

 だけどただ殺すだけじゃ飽き足らないんだ。

 死に至るまでの恐怖、これから何が起こるんだ、っていう不安、その時に見せる表情、そのすべてがあって、俺の復讐は完了する。逆にそれが無ければ、結果として死があったとしても、何も意味がない。

 なぁ、怖いか。
 お前が怖いように、な。ほら、俺の手、見てみろよ。ほら震えてる。殺されるほうはもちろん怖いだろうが、殺すほうだ、って怖いんだ。

 まぁ座り直せよ。
 逃げたところで、得なことなんてない。いまの状況、分かってるか。六対一だ。死期を自ら縮める必要もないだろう。
 最後まで聞くほうが、身のためだ。

 なぁ今回のみんなの話、お前、どこまで信じた。それとも最初から疑ってたのか。全員まるで真実のように語っていて、俺も聞いているうちに怖くなったよ。もしかしたら俺は本当に殺人鬼を集めてしまったんじゃないか、って。事前にどんな話をするか順番も決めてたんだ。鈴木くんが遅れて登場するのも、鈴木くんや夢宮くんが、相瀬さんと話す順番で揉めるのも。全部、演出だ。

 何度も顔を合わせて、打ち合わせしたんだ。
 俺たちが全員、誰がどんな話をするのかも、どういう時に行動するのかも。
 コーヒーショップでの話? なんだ、それ?
 それははじめて聞いたな。そうかお前と相瀬さんは、ここに来る前に偶然会ってたのか。たまたま、だよ。どれだけきちんと計画を立てても、予想外のことってのは起きるもんなんだな。俺もひとつ勉強になったよ。

 しかしだいぶ遅い時間になってしまったな。

 夜、っていうのは、どうも暗い気持ちになる。いや夜だから、というよりは、これからのお前を考えて、かな。
 なぁ俺は、本当にお前を友達だった、と思ってる。
 どうでもいい程度の関係だったら、こんなにも怒りや復讐心を覚えることなんてなかったはずだ。

 こんなに言葉を重ねるのは、たぶん分かってもらえない気持ちを分かってもらいたい、って気持ちがあるからだろうな。俺の身勝手な感情だ。

 これから死ぬ、哀れな被害者には何も関係ない話だよな。

 じゃあな。


「はい、そこまで」
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