フレンド0人が戦国転移した結果

デンデンムシ

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一人じゃなくなった

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 「はぁ!?ここはどこだよ!?」

 「おい!そこのお前!そんなところに突っ立ってないで、仕官したいなら礼儀くらいちゃんとしろ!」

 「はい!?仕官!?」

 「き、貴様・・・なんだ!その口の聞き方は!」

 武士らしき人に木刀を構えられ、オレは訳も分からずその場から離れた。まったくここに見覚えがないし、明らかにこれは――

 「……リアルだ」

 空気の冷たさも、足元の土の感触も、全部が現実そのものだった。

 「あっ!尊様!!」

 「は!?え!?静樹……なのか!?」

 「はい!静樹でございます!拠点で待ってろって言われましたが、声が聞こえたので参りました!」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!これはどういう事なんだ!?」

 「どういう事と言われましても?」

 「と、とにかく、拠点?があるなら案内してくれ!少し考える!」

 「(クスッ)そんな不思議がらなくとも、ご自分で建てたではありませんか!」

 案内された場所を見て、オレは息を呑んだ。
 間違いない。ゲームでオレが建てた――あのボロ小屋だ。

 敢えてボロくしていた拠点。
 オンライン時代、一人プレイだと悪目立ちすると襲われるからだ。

 ……いや、理由はどうでもいい。
 問題は、ここに“ある”という事実だ。

 だが人間は上手くできている。理解できない事が起こると、逆に頭が冷える。そして、順応する。

 「(コトン)はい!尊様。絶味の茶釜で点てた茶ですよ!」

 「あ、うん……ありがとう。(ジュジュッ)……あ、美味い」

 「(クスッ)ありがとうございます!」

 「とりあえず状況を纏める。オレはゲームの中に入り込んだ。いやまぁ、静樹はそこは気にしなくて良いとして……今は何年だ!?」

 「元亀二年となります!西暦で言いますと、1572年になります!尊様は伊予、河野家の東側最前線――川之江城の城下に居られます!」

 「おい!川之江城だと!?やっぱ、まんまゲームの中じゃないか!本能寺が起こる前まで静かにする為にここを選んだのに……」

 頭を抱える。

 「伊予の河野家は、北は毛利、浦上、西は九州大友、南は長宗我部と一条、東は三好……
 四方八方、巨大勢力だらけだろ!」

 「(パチパチパチ)流石、尊様です!」

 ……この楽天的な反応、やっぱりおかしい。

 「なぁ静樹……君は、人間か?」

 「変な事申しますね!人間ですよ?」

 即答だった。

 「……じゃあ、君の仕事はなんだ?」

 「私の……仕事……」

 言いかけた静樹の声が、途中で止まる。瞬きが止まり、瞳の焦点が一瞬だけ外れた。

 「君はこの世界に、知り合いは居るか?」

 「…………」

 完全に動かなくなった。

 「待って!待ってくれ!そんな止まらないでくれ!
静樹が居なくなったら、マジで一人になっちまう!」

 必死に呼びかけた、その瞬間――
 視界に、見慣れた画面が浮かび上がった。

 キャラクター作成画面。

 「……なんだよ、これ……」

 理解したくなくても、理解してしまう。

 「異世界……じゃない。これ、完全にゲームの世界だ……」

 静樹は、元々オレの命令に従う補佐AIとして設定していた。
 だが――ここに表示された選択肢は、見覚えがない。

 《自律許可モードに切り替えますか?
 人格制限が解除されます。途中で変更はできません。
 はい/いいえ》

 画面に浮かぶその一文を、オレはすぐには押せなかった。

 途中で変更はできない。
 つまり――これはただの設定変更じゃない。

 もし間違えれば、取り返しがつかない。
 それでも、静樹を“命令に従うだけの存在”として縛り続ける方が、オレには耐えられなかった。

 ここがゲームだとしても。静樹がデータだとしても。

 目の前で立ち止まり、動かなくなった彼女を見てしまった以上、知らなかったふりはできない。

 ……逃げるか、背負うか。

 オレは一度、深く息を吸った。

 「大丈夫だ。これは、オレが決める」

 そして、指を伸ばした。

 《はい》
 
 を押した。

 「尊様……」

 「ふぅ……驚かせるなよ。これで静樹は自由だ。好きに考えて、好きに動いていい」

 「え……自由……?」

 「そうだ。オレの命令に縛られなくていい」

 静樹のキャラグラは、ゲームで作ったままの姿だ。正直に言えば、完全にオレの好みだ。

 でも――だからこそ。
 無理や理不尽を押し付ける気にはなれなかった。

 「……ならば」

 静樹は少し考える素振りを見せてから、微笑んだ。

 「これからも、尊様のお側でお仕事をさせてください!」

 「は!?ちょ、近い!彼女居ない歴=年齢なんだぞオレは!」

 「あ……失礼しました」

 「……で、オレ今どんな顔だ?」

 「とても整ったお顔をされております」

 内心、勝ったと思ったが――すぐに現実に引き戻される。

 「静樹。オレは争わずに生きたい。でも……君が居なきゃ、多分即死か餓死だ」

 「(クスッ)では、これからもゲームの時のように補佐しますね」

 「おい、今“ゲーム”って言ったな?」

 「あ……あれ……?」

 静樹は自分の口元を押さえ、不安そうに首を傾げた。

 「私……今、何と言いました?」

 嫌な沈黙が落ちる。

 「……なぁ、最後のアイテムは覚えてるか?」

 あのガチャの後の見覚えのない薬が、所持品に混ざっていた事を思い出す。

 「刻黄泉の薬ですか?」

 「そんな名前、初めて聞いたぞ!?バナーにも説明にも出てなかった!」

 「データベース上では、“巨大な力を持つ者を召喚する”と記されています」

 「……召喚、だと?」

 「で、ですが……」

 静樹は、少しだけ照れたように言った。

 「私は、こうして尊様と居られる事が嬉しいです」

 「……そ、そうか」

 謎は増える一方だ。だが、不思議と――恐怖はなかった。

 「尊様、今後の方針はいかがなさいますか?河野家の郡代などを目指されます?」

 「……静かに暮らすなら、立場は要るよな」

 川之江城。
 城主は――妻鳥友春。

 「さっき、仕官がどうとか言われたんだ」

 「三好が不穏な動きを見せております。今は兵を集めている時期ですので、勘違いされたのでしょう」

 「……分かった。とりあえず、一度仕官してくる」

 「私も行きます!」
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