フレンド0人が戦国転移した結果

デンデンムシ

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鼻血の武功

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 「賦役を手伝ってくれる者!この立札の前に整列!」

 「おい!お武家さん!銭くれるんだろ!」

 「そうだそうだ!60文くれるんだろ!!」

 さっそく飛びついてきた領民だが、あぁいう輩は嫌いだ。銭銭というからだ。けど、今はそういう奴の手すら借りたいくらいだ。

 オレの手元には未だ600結以上残っている。これが尽きる前には何とかしたい。

 作業の方は静樹と助六に任せる。オレは区画の方だ。
 まず港周りに領民区画を形成する。ここは家を今後建てると想定しているだけで、縄を張っているだけだ。
 そのまま放射線上に、楓の未来の工房に沿うように縄を張り、織田軍の仮設長屋を建てる予定だ。建てるというより組むだけではあるが。さすが静樹だ。既に5軒も出来上がっているからな。

 ちなみに、今日中に織田軍の人達の第一陣が到着する。簗田の家は配置してある。今日でもまだ家が足りないのは確定だが、既に妻鳥様に城の空いている所を貸してほしいとお願いしたら陣幕を張り、寝泊まりして良いと言われた。
 
 後、今日の夜に饗宴を行うとのこと。

 既に郡代に参集するように伝えたが、返答があったのは新居郡の石川通清が来る、というものだけだった。 
 川之江詰めのオレにやたらと厳しい石川はその息子の石川勝重という人らしい。まったく覚えていない。
 そして、周桑郡を拠点とする古参の国衆、加地通直という人物。

 妻鳥様はオレの事を、

 『川之江城下にて在野に埋もれている優秀な者を被官とした。夫婦揃い、傑物の類にて、侍大将格にて雇う事とした。つきましては、一度御目通り願いたし。ただ、三好軍の備えの準備に対して人夫少なし』

 と書状を出したみたいで、船で来島通総が来るそうな。見定めと聞いた。
 どうやら、正式に格の付く家臣となれば、家中での格式を示す文が発給されるそうで、それを来島が持参するらしい。それと来島がオレを見て、それを渡すか渡さないかと判断するらしい。
 来島通総といえば、村上水軍と双璧を為す来島水軍を率い、燧灘に勢力を張る来島通総。なんでも河野家で来島は家老格に近い格なのだそうな。

 「おい!何で俺達は10文も少ないんだ!」

 「そーだ!そーだ!」

 「下分村の奴等が60文なら俺達、山田井村も60文だ!」

 「先に言っておく。50文でも破格だと思っている。別に力で従わせるつもりはない。これは労働に対する対価だ。いやなら来なくて良い。
 ただ、ここで働き、覚えが良いなら今後オレが率いる鉄砲隊への仕官の口実もできる。お前達が農奴でいいというならそのつもりではないがな。考えろ。慈善事業ではない。
 賦役なら本来は何も対価なんてでないだろう?それを川之江城の城主 妻鳥様はいたく嘆き、オレに『領民の対価を出すように』と言われたのだ」

 「な、何も要らねーとは言っていない!」

 「そ、それより俺が武士になれるかもしれないのですか!?」

 「働きが良く、命令が聞ける男ならな。もう少しすれば上方の織田家という家の軍の者が300人来る。その者等から学び、鉄砲とは何か知れば良い。川之江鉄砲衆と呼ばれる日も近いだろう。その内の一人が横に居るお前達になっているかもしれないんだぞ」

 まぁ大袈裟に言った訳だがブラフではない。鉄砲を500丁も用意したんだ。運用が出来なければただの無駄遣いとなってしまう。

 「や、やるぞ!俺は生まれ変わるんだ!」
 
 「ちょ、ちょっと待ってくだせ~!そんな俺達は農民で武士には……」

 「農民がどうしたって?農民は武士になれないのか?誰が決めた?今まではそうだったかもしれない。だが、今後は変わる。
 俺が許す。俺はこの川之江浦の郡代となった山岡尊という。ここには居ないが、妻の山岡静樹が代官だ。その下に助六という身体の大きな男が居る。まずはその助六に覚えが良くなる事からだ。
 それとは別に俺が見て、必死で働いているという者には直接今後の進退を聞くと覚えておけ。特に昨日、最初から集まってくれた70人は既に覚えた。後日改めて聞くつもりだ。確か下分村の弥平だったか?その者は妻の静樹が既に覚えている」

 「な、何を!?あの飄落の弥平がですか!?」

 「飄落かどうかは知らんが、真面目に働いたと聞いている」

 「や、やる!俺は絶対にやる!」

 「お、俺もだ!」

 特性はでなかったが、案外士気は上がるもんだなと思った。本当に雇えそうな者が居たら雇うつもりだ。口調や言葉遣いは多少難ありだがそれは仕方がない。

 オレはそのまま港に向かう。兵士の出迎えだ。

 「おぉ~!そこに居るは山岡殿か!!ワシじゃ!簗田だ!!」

 堺船の船首に一際元気なお爺さんこと、簗田政綱が見えた。ブンブン手を振ってくれている。さぞ落胆するだろう。今の川之江に。だが、半年で美濃を抜いてやる。そのつもりでここ川之江浦は改革中だ。

 小舟で荷揚げ屋全員で運んで貰う。城にもいくらか金を渡さないと妻鳥様が出費に驚くだろう。

 ここで一喜一憂しているのは町屋の人間だ。人が来るという事は物が売れる。飯屋も儲かる。後は女も儲けられるという事だ。一応は春町は禁止とまでは言われていないが、タブーのようで公にはされていない。だが、隠れて普通にありはする。
 オレが治める川之江浦は需要があるなら大々的には言わないが、隠れて営業させるよりかはそういう所は一箇所に集め、営業させる。そして地代をちゃんと税として納めさせる。職業により、税の取り立ても変える。商店の規模でもだ。だが今はまだ。やる事が多すぎで一気には変えられない。

 「簗田様。お疲れ様でございます。兵舎の方は全速力で建てておりますので、幾人かは既に住めるようになっておりますが、残りは城の空いてる所に……」

 「がっはっはっ!構わん!沓掛の城下とそう変わらん!外国には初めて参ったがそう変わらんもんじゃ!美濃は少し栄えてはいるがな!」

 「そう言ってもらえて気が楽になりました。ここら辺一帯を川之江浦と申しました、昨日付で、郡代となりました。改めまして、誠にありがとうございます」

 「良い!良い!三好が何する者ぞ!追い返してやりましょう!」

 そう簗田が言うと、握手を求めてきた。オレも返す。ガッチリと強く握る。その強さがこの同盟の強さだと思いたい。

 「藤田!何を遊んでいる!早く来い!」

 「と、殿!お待ちを!せ、拙者は海が……」

 分かる。分かるぞ。あんな小舟怖いよな。オレもだ。一段落すれば桟橋から歩いて浜まで上がれるようにしよう。

 「馬鹿者っ!恥を晒すな!ゴホンッ。山岡殿。ワシの副官で血走りの藤田だ!」

 血走りの藤田だと!?なんだそのカッコいい二つ名は!?

 「山岡様……拙者はそんな大層な者ではございませぬ。血走りというのも、昔、足軽だった頃に大殿が美濃侵攻の折にとある砦に夜襲を仕掛けた折に敵の矢を顔面に喰らったのですが……」

 「はい!?顔面に矢を!?傷跡ありませんよね!?」

 「い、いえ、それは顔当てで弾いたのですが、その時に鼻に直撃し、鼻血が止まらなく皆にそう言われ出しただけで……」

 「がっはっはっ!藤田!ワシはそのおかげでお主を格上げしてやったのだ!必死に斎藤の兵に喰らいつくお主が自然に目に入ってのう!懐かしい!だが山岡殿。この藤田はワシをも凌ぐ鉄砲の腕を持っている。教官としては一流ぞ。ワシは古い人間だ。戦とは一に騎馬兵。二に槍兵。三に弓兵。四に散兵と教わってきた。それを三郎様が変えたのじゃ!」

 いやそれでも、藤田さんは強運の持ち主だ。優しい顔してるし、雰囲気柔らかいけど、この人は殺ってる目だ。後は簗田さんの言葉。かなり深い。信長という革新的な人が現れ確かに兵の運用は変わってきているだろう。けど、川之江はまだまだだ。妻鳥様も鉄砲の名手とゲーム内では記憶があるが、あまり分かっていなさそうな反応だったし。

 「とりあえず案内致します。最低限、米と味噌は支給します。後は漁師も選抜し、改革を行い町屋も増やすつもりですので暫くはつまらないかもしれませんが御容赦ください」

 「うむ!沓掛の兵はそんな事で不満は言わん!そうよのう!皆の者よ!」

 「殿~!!股引の所が破けていますぞ!」

 「なっ、馬鹿者!これはわざとじゃ!藤田!なんぞ布を縫え!これじゃ見せびらかしているようではないか!」

 「「「「はっはっはっ!!」」」」

 「よっ!さすが殿!」

 「そうです!それでこそ我等の殿ですぞぉ~!!」

 「たわけ者めが!茶化すな!おい!そこの!お前は源八だろう!覚えておるぞ!戦の折は絶対に前線には出してやらん!覚えておけ!」

 この簗田と兵の距離感を見ただけで分かる。かなり慕われている。羨ましい。それに良い指揮官で良い領主なんだろう。一息吐いている場合じゃない。まだまだやる事はある。
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