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静樹「焼き払え!(信長風)」
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本来の戦なら年単位で敵国を諜報するだろう。下々の民を見て、攻める場所を観察し、即応でどのくらいの兵が集まり、どこで激突すれば被害が抑えられるかなど。
他にも色々とあるだろうが、三好からは一向にその気配がない。故にオレも、いつ準備をすれば良いのか……いつ召集を掛ければ良いのか迷っている。
それ以前に、川之江城周辺地域は変わっている。
というか、他家もそうなのかもしれないが、家臣ではなく、名目上は大まかに河野家に従ってはいる。だが、飽くまで独立している国人衆が多いこと……。
巨大な武家なら国内をまとめ上げられるだろう。だがここは川之江。東に三好、南に長宗我部が居る。内紛紛いの武力で屈服させようものなら、速攻で攻められる。
河野は従わせたかっただろうが、できなかったのだろう。家督に関しても河野家自身のゴタゴタや、湯築城周辺の在地勢力もかなり多い。
川之江に参集するよう命令しても現れなかったのが答えだ。
妻鳥様に聞いた在地勢力をとりあえずオレはまとめようと思い、静樹と文を書いている。なぜ静樹かって?そりゃ、この時代の文字が書けないからだ。
「寒川衆というのは、細かな地域による寄り合い体制のようです。近藤家、河端家、宮内家と」
「で、寒川兵庫助って人が一応はまとめているんだろう?」
「そのようですね。なんて書きましょうか?」
「甘い言葉を掛けて時間を掛ければ、完全に支配下に収められるとは思うけど、そんな時間はないから手荒に行くよ。
むしろ、自尊心が高い家なら、逆にコテンパンにした方が後々、妻鳥様の実入りも良くなると思うんだ」
そう。川之江は田舎だが、立地は本当にいい所なのだ。備前、備中、備後に近く、もう少し外洋に出られるなら筑前、周防国。後はやはり摂津や堺に近い。
なのに、ここはあまり発展していない。もったいない地域なのだ。
宇摩郡全てがまとまれば、かなり銭を稼げる場所になれるポテンシャルはあるはずなのに。
本当にもったいない場所だ。勢力上、仕方のない事なのかもしれないけど。
「なら、こう書きましょうか。長々書いても仕方ありません。
【全兵力を持ち、支給、川之江に参集せよ。従わない場合は寒川一帯を焼き払う】なんていかがですか?」
「おいおい……信長かよ!? 全てを焼き払うって……」
「普通に考えて焼き払ったり、灰燼になどできませんよ。自ら国力を落としてしまいますからね。
ですが、織田様はそれをしてさえも有り余る経済力が各地にありますからね。あの家こそ、尊様の言葉を借りればチートですよ」
その通りだ。信長に関しては全てにおいてチートだからな。
「もし寒川は従わず、逆に攻めてきたら?」
「その時は、山岡鉄砲衆の演習に付き合ってもらいましょう。実戦として」
「怖い事言うな。けど、そのくらいの方がいいかもしれない。
他の土居周辺なんかは元から従っていない家が多いんだろう? 三島周辺も。
ただ、三島は平野と山野で勢力が違うんだろう?」
「はい。平野は三島左京亮、山野は三島弥次右衛門という方で、お互いが三島衆の頭だ!と長年啀み合っているようです」
「ここももったいないよな。ここは寒川衆とは違う手でいくよ。
同じ様にもう一度参集するように。早く到着した方が三島衆頭領に据えると」
「いいのですか?」
「いいもなにも、これから戦になるんだから、頭領と名乗るなら妻鳥様に従ってもらう。
従わないなら両方取り潰し、他の者を頭にするだけさ。
そしてここも実戦演習に行ってもらう。
ただ、土居方面はやめておきたい」
「ええ。土居清晴等の流れを汲む家の者達です。西園寺十五将の一家ですが、あそこは強者揃いです。
本家は今は土佐一条家に客分として居るはずです。土居清良という方でしたかね」
「多分合っている」
「是非とも味方に付けたい所ですが、なかなか難しいですかね」
「いや、オレがなんとかする。ここの土居地方の頭は誰だ?」
「はい。土居清重という方です。土居家は代々、清という漢字を名前に付けるようですが、この方も名乗っているそうなので、どういう縁戚かは分かりませんが、仲は良いように思います」
「そうか。なら三島、寒川に文を届けるように飛脚に言ってくれ。
土居はオレが今から向かう。手土産を持ってな」
◆
その土居家に単独で向かった。助六は志願した兵達と訓練させている。静樹のスペシャルメニューの筋トレ、食トレ。後は川之江浦での水際作戦だ。
三好は海路封鎖を目論んでいると踏んでいる。港は壊さないだろう。壊されても再建すればいいだけだ。
その水際で敵を迎えるための陣地構築も急いでいる。見掛けは家だ。だが、壁から銃口を出し、狙撃できるよう高さも出している家だ。
後は楓に面白い物も作る様に言っている。設計書も渡して。まあ、これはすぐには出来ないから、また出来た時に言おう。
その土居に向かい、大きな家がある。手土産は鉄砲十丁だ。これで何が変わるかは分からないが、オレは確信している。
「これはこれは……城方の方ですかな?」
「川之江城支配内、川之江浦郡代の山岡尊という。其方は?」
「ここら辺一帯をまとめております、土居家。土居清重と申しまする」
話し方からして、武家の作法を知っているような人だ。しかも当主が出迎えとは。
「長居はするつもりはない。ここで話す。川之江城は差し詰まっている。分かるか?」
「三好家でしょうか?」
「分かっているようだな。ならなぜ、参集しない?文は出しているはずだが?」
「それは異な事。こんな小さな土豪がお呼ばれしても、何も戦仕事なぞ出来はしないのは分かるでしょう」
「ふん。オレは一目置いているんだがな。
あの小高い山は明らかに鉄砲の演習場だろう?火薬の匂いもしている。
上方の武家の城の三の丸なんかに装備してあるのと似ているが?
戦は数も重要だが、いかに命を張れる者が多いかも重要だと思っている。
土居清重殿。どうか力を貸してほしい。
ここに鉄砲十丁ある。少ないが最新式の堺の火縄だ」
「…………」
「山岡殿は誰の遣いですかな?」
「誰の遣いでもない。オレが独断で参った。それくらいオレは自由を許されている」
「左様ですか。家に帰り、皆と一度話さねばなりますまい」
「そんな悠長な時間はない。城では仕官してきた者も多い。土居家が飽くまで独立を望むなら、そうすれば良い。
ここは川之江城支配内だ。妻鳥様も許すだろう。
だが、情報が今後は回ってくるのが遅くなると心得よ」
「どういう意味ですかな? 関所でも建てるのですかな?」
「そんな物流の止まるような事をする訳ないだろう。土居家が従わないのなら、居ない者と考えるのが妥当だろう? 従わない家を頭数に入れる馬鹿なぞ居ない。
なら、そんな遠くはないが、いちいちここらに人を寄越す事もしない。ただそれだけだ。
凶作の時も手助けはしない。
まあ川之江浦……つまりオレの領内は、銭で米をいつでも買えるようにしているからな。買い物くらいは許可してやる」
かなり強く言ったように聞こえるだろう。だが、これはこの人物を見て、オレが方向を変えただけだ。
土居清重は機を見るのに聡いように感じた。即座に三好を当てて、土豪か国人かは分からないし、最新式ではないと思うが、鉄砲も持っている。
先を見通す力があるのなら、その先に土居家の未来がないように見せれば良いと思ったのだ。
「周布の石川家は相変わらずですかな?」
「あそこは妻鳥様に忠誠を誓っている。その息子も城に出仕している。
ちなみに、三島、寒川は土居家と違う対応を取らせてもらっている。
その意味が分からない土居殿ではないだろう? 自分の強みは使える時に使っておく方が良いと思うぞ?」
「清春城主の時代は、それなりに従ってはいたのですがね。
あの姫は……現在は友春と名乗っていると。父上のように一度でも我が屋敷に来ていただければ、また対応も違ったでしょうに……」
「その因縁か何かは知らないし、オレは何かを言うつもりはない。
だが、妻鳥様はずっと苦労してやってきたと聞いている。
此度の川之江に関しても、オレからすれば大殿、つまり河野様から捨て石かのような書状が届いたそうだ。
可哀想だとは思わないか?
だからオレは私財を使い、上方で今一番勢いのある家と同盟をした。独断でな。
その家の軍隊の主軸は鉄砲隊だ。その鉄砲隊三百人を借り受けている。
土居殿も、鉄砲がこの先主流となると思っているんだろう? だから独自に入手したんじゃないのか?
オレは三好を撃退し、川之江鉄砲隊の名を売るつもりだ」
「…………」
「もうこれ以上は言わん。返事は早くしろ。三好の間者が見当たらんが、いつ攻めてきてもおかしくないと思っている。
正月の謹賀の儀も行わないと、妻鳥様は言っている。
オレからは以上だ。邪魔をしたな」
「もし……参集すれば、恩恵は何があるのですかな?」
「ふん。馬鹿を言うな。今の川之江城は空っぽだ。オレの個人物資が少しあるくらいだ。
褒美が欲しいなら、どうにかしないとな?
三好は畿内で手一杯だ。三好が軍を動かせば、同盟をした織田家が軍を動かす素振りを見せてくれるそうだ。
そうなれば、こんな小さな相手は出来ないよな?
川之江城の隣はどこだ? 白地城か? 天霧城か? 将又、引田城か?」
「まさか……」
「ああ。独断で他家の城を襲えば、オレは最悪、斬首されるかもしれない。捕えられればな。
その力が河野にあるとは思えない。いや、そもそも河野に敵対するつもりはないんだがな。
この最初の三好撃退の先駆けに、土居鉄砲隊が含まれれば面白くなるよな?
弱体化したとはいえ、畿内の覇者は三好家だ」
「その織田家というのは初耳ですが? 三好が負けたとな?」
「情報封鎖してるんだろう。オレは知っている。堺にも直接行き、織田木瓜紋の兵士が普通に闊歩していたぞ。
その三好を川之江が喰えば……まあ、そういう事だ。じゃあな」
オレは言いたい事を言い、土居を後にした。あの者がどう出るかは分からないが、感覚的にはこれ以上ないと思う。
本当に三好を喰えば、噂は勝手に広まる。船乗りから備前、備中、備後、堺へと。噂とは尾ひれが付くものだ。
その時、自然と付いた二つ名がどう言われるかで変わる。有名な所で言えば、越後の龍、甲斐の虎などだ。名前で相手を畏怖できる。
近場で美味しいと言えば、鬼十河か。と言っても本人は既に死んでいたか。その血筋の誰かが来てくれればいいが、そうはいかないだろう。
準備に余念がないオレだったが、三好軍が動き出すのは、もう四十日後の事だった。
他にも色々とあるだろうが、三好からは一向にその気配がない。故にオレも、いつ準備をすれば良いのか……いつ召集を掛ければ良いのか迷っている。
それ以前に、川之江城周辺地域は変わっている。
というか、他家もそうなのかもしれないが、家臣ではなく、名目上は大まかに河野家に従ってはいる。だが、飽くまで独立している国人衆が多いこと……。
巨大な武家なら国内をまとめ上げられるだろう。だがここは川之江。東に三好、南に長宗我部が居る。内紛紛いの武力で屈服させようものなら、速攻で攻められる。
河野は従わせたかっただろうが、できなかったのだろう。家督に関しても河野家自身のゴタゴタや、湯築城周辺の在地勢力もかなり多い。
川之江に参集するよう命令しても現れなかったのが答えだ。
妻鳥様に聞いた在地勢力をとりあえずオレはまとめようと思い、静樹と文を書いている。なぜ静樹かって?そりゃ、この時代の文字が書けないからだ。
「寒川衆というのは、細かな地域による寄り合い体制のようです。近藤家、河端家、宮内家と」
「で、寒川兵庫助って人が一応はまとめているんだろう?」
「そのようですね。なんて書きましょうか?」
「甘い言葉を掛けて時間を掛ければ、完全に支配下に収められるとは思うけど、そんな時間はないから手荒に行くよ。
むしろ、自尊心が高い家なら、逆にコテンパンにした方が後々、妻鳥様の実入りも良くなると思うんだ」
そう。川之江は田舎だが、立地は本当にいい所なのだ。備前、備中、備後に近く、もう少し外洋に出られるなら筑前、周防国。後はやはり摂津や堺に近い。
なのに、ここはあまり発展していない。もったいない地域なのだ。
宇摩郡全てがまとまれば、かなり銭を稼げる場所になれるポテンシャルはあるはずなのに。
本当にもったいない場所だ。勢力上、仕方のない事なのかもしれないけど。
「なら、こう書きましょうか。長々書いても仕方ありません。
【全兵力を持ち、支給、川之江に参集せよ。従わない場合は寒川一帯を焼き払う】なんていかがですか?」
「おいおい……信長かよ!? 全てを焼き払うって……」
「普通に考えて焼き払ったり、灰燼になどできませんよ。自ら国力を落としてしまいますからね。
ですが、織田様はそれをしてさえも有り余る経済力が各地にありますからね。あの家こそ、尊様の言葉を借りればチートですよ」
その通りだ。信長に関しては全てにおいてチートだからな。
「もし寒川は従わず、逆に攻めてきたら?」
「その時は、山岡鉄砲衆の演習に付き合ってもらいましょう。実戦として」
「怖い事言うな。けど、そのくらいの方がいいかもしれない。
他の土居周辺なんかは元から従っていない家が多いんだろう? 三島周辺も。
ただ、三島は平野と山野で勢力が違うんだろう?」
「はい。平野は三島左京亮、山野は三島弥次右衛門という方で、お互いが三島衆の頭だ!と長年啀み合っているようです」
「ここももったいないよな。ここは寒川衆とは違う手でいくよ。
同じ様にもう一度参集するように。早く到着した方が三島衆頭領に据えると」
「いいのですか?」
「いいもなにも、これから戦になるんだから、頭領と名乗るなら妻鳥様に従ってもらう。
従わないなら両方取り潰し、他の者を頭にするだけさ。
そしてここも実戦演習に行ってもらう。
ただ、土居方面はやめておきたい」
「ええ。土居清晴等の流れを汲む家の者達です。西園寺十五将の一家ですが、あそこは強者揃いです。
本家は今は土佐一条家に客分として居るはずです。土居清良という方でしたかね」
「多分合っている」
「是非とも味方に付けたい所ですが、なかなか難しいですかね」
「いや、オレがなんとかする。ここの土居地方の頭は誰だ?」
「はい。土居清重という方です。土居家は代々、清という漢字を名前に付けるようですが、この方も名乗っているそうなので、どういう縁戚かは分かりませんが、仲は良いように思います」
「そうか。なら三島、寒川に文を届けるように飛脚に言ってくれ。
土居はオレが今から向かう。手土産を持ってな」
◆
その土居家に単独で向かった。助六は志願した兵達と訓練させている。静樹のスペシャルメニューの筋トレ、食トレ。後は川之江浦での水際作戦だ。
三好は海路封鎖を目論んでいると踏んでいる。港は壊さないだろう。壊されても再建すればいいだけだ。
その水際で敵を迎えるための陣地構築も急いでいる。見掛けは家だ。だが、壁から銃口を出し、狙撃できるよう高さも出している家だ。
後は楓に面白い物も作る様に言っている。設計書も渡して。まあ、これはすぐには出来ないから、また出来た時に言おう。
その土居に向かい、大きな家がある。手土産は鉄砲十丁だ。これで何が変わるかは分からないが、オレは確信している。
「これはこれは……城方の方ですかな?」
「川之江城支配内、川之江浦郡代の山岡尊という。其方は?」
「ここら辺一帯をまとめております、土居家。土居清重と申しまする」
話し方からして、武家の作法を知っているような人だ。しかも当主が出迎えとは。
「長居はするつもりはない。ここで話す。川之江城は差し詰まっている。分かるか?」
「三好家でしょうか?」
「分かっているようだな。ならなぜ、参集しない?文は出しているはずだが?」
「それは異な事。こんな小さな土豪がお呼ばれしても、何も戦仕事なぞ出来はしないのは分かるでしょう」
「ふん。オレは一目置いているんだがな。
あの小高い山は明らかに鉄砲の演習場だろう?火薬の匂いもしている。
上方の武家の城の三の丸なんかに装備してあるのと似ているが?
戦は数も重要だが、いかに命を張れる者が多いかも重要だと思っている。
土居清重殿。どうか力を貸してほしい。
ここに鉄砲十丁ある。少ないが最新式の堺の火縄だ」
「…………」
「山岡殿は誰の遣いですかな?」
「誰の遣いでもない。オレが独断で参った。それくらいオレは自由を許されている」
「左様ですか。家に帰り、皆と一度話さねばなりますまい」
「そんな悠長な時間はない。城では仕官してきた者も多い。土居家が飽くまで独立を望むなら、そうすれば良い。
ここは川之江城支配内だ。妻鳥様も許すだろう。
だが、情報が今後は回ってくるのが遅くなると心得よ」
「どういう意味ですかな? 関所でも建てるのですかな?」
「そんな物流の止まるような事をする訳ないだろう。土居家が従わないのなら、居ない者と考えるのが妥当だろう? 従わない家を頭数に入れる馬鹿なぞ居ない。
なら、そんな遠くはないが、いちいちここらに人を寄越す事もしない。ただそれだけだ。
凶作の時も手助けはしない。
まあ川之江浦……つまりオレの領内は、銭で米をいつでも買えるようにしているからな。買い物くらいは許可してやる」
かなり強く言ったように聞こえるだろう。だが、これはこの人物を見て、オレが方向を変えただけだ。
土居清重は機を見るのに聡いように感じた。即座に三好を当てて、土豪か国人かは分からないし、最新式ではないと思うが、鉄砲も持っている。
先を見通す力があるのなら、その先に土居家の未来がないように見せれば良いと思ったのだ。
「周布の石川家は相変わらずですかな?」
「あそこは妻鳥様に忠誠を誓っている。その息子も城に出仕している。
ちなみに、三島、寒川は土居家と違う対応を取らせてもらっている。
その意味が分からない土居殿ではないだろう? 自分の強みは使える時に使っておく方が良いと思うぞ?」
「清春城主の時代は、それなりに従ってはいたのですがね。
あの姫は……現在は友春と名乗っていると。父上のように一度でも我が屋敷に来ていただければ、また対応も違ったでしょうに……」
「その因縁か何かは知らないし、オレは何かを言うつもりはない。
だが、妻鳥様はずっと苦労してやってきたと聞いている。
此度の川之江に関しても、オレからすれば大殿、つまり河野様から捨て石かのような書状が届いたそうだ。
可哀想だとは思わないか?
だからオレは私財を使い、上方で今一番勢いのある家と同盟をした。独断でな。
その家の軍隊の主軸は鉄砲隊だ。その鉄砲隊三百人を借り受けている。
土居殿も、鉄砲がこの先主流となると思っているんだろう? だから独自に入手したんじゃないのか?
オレは三好を撃退し、川之江鉄砲隊の名を売るつもりだ」
「…………」
「もうこれ以上は言わん。返事は早くしろ。三好の間者が見当たらんが、いつ攻めてきてもおかしくないと思っている。
正月の謹賀の儀も行わないと、妻鳥様は言っている。
オレからは以上だ。邪魔をしたな」
「もし……参集すれば、恩恵は何があるのですかな?」
「ふん。馬鹿を言うな。今の川之江城は空っぽだ。オレの個人物資が少しあるくらいだ。
褒美が欲しいなら、どうにかしないとな?
三好は畿内で手一杯だ。三好が軍を動かせば、同盟をした織田家が軍を動かす素振りを見せてくれるそうだ。
そうなれば、こんな小さな相手は出来ないよな?
川之江城の隣はどこだ? 白地城か? 天霧城か? 将又、引田城か?」
「まさか……」
「ああ。独断で他家の城を襲えば、オレは最悪、斬首されるかもしれない。捕えられればな。
その力が河野にあるとは思えない。いや、そもそも河野に敵対するつもりはないんだがな。
この最初の三好撃退の先駆けに、土居鉄砲隊が含まれれば面白くなるよな?
弱体化したとはいえ、畿内の覇者は三好家だ」
「その織田家というのは初耳ですが? 三好が負けたとな?」
「情報封鎖してるんだろう。オレは知っている。堺にも直接行き、織田木瓜紋の兵士が普通に闊歩していたぞ。
その三好を川之江が喰えば……まあ、そういう事だ。じゃあな」
オレは言いたい事を言い、土居を後にした。あの者がどう出るかは分からないが、感覚的にはこれ以上ないと思う。
本当に三好を喰えば、噂は勝手に広まる。船乗りから備前、備中、備後、堺へと。噂とは尾ひれが付くものだ。
その時、自然と付いた二つ名がどう言われるかで変わる。有名な所で言えば、越後の龍、甲斐の虎などだ。名前で相手を畏怖できる。
近場で美味しいと言えば、鬼十河か。と言っても本人は既に死んでいたか。その血筋の誰かが来てくれればいいが、そうはいかないだろう。
準備に余念がないオレだったが、三好軍が動き出すのは、もう四十日後の事だった。
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