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物量戦
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結局オレは眠れず朝を迎えた。朝というか、最早夜中と言ってもいい時間くらいだ。この時代で言えば寅の刻だ。現代風に言えば、三時~五時。
周布の石川兵を浜に数人、荷揚げ屋として配置している。その小舟に硝石と輝安鉱を少量詰み、楓に即席で作らせた焙烙玉を配置している。
作り方は簡単。陶器に、木片や割った陶器の破片を入れ、輝安鉱、硝石を被せ何重にもする。それを蓋から、緩燃線を出す。まぁ現代いう導火線だ。これは火縄に使われている麻の繊維を合わせた物だ。
これを火縄で使うより小さくし、油を染み込ませると燃える速度が早まる。オレが一射した合図と共に点火し、石川兵は逃げる手筈となっている。殺傷能力は低いだろうが、合図にはちょうどいい。怪我人くらいは出るだろう。
オレは課金アイテムの最重要物、トランシーバーを各隊に配備している。連絡も間違いないし、配置も即応できる。
『フッフッ。尊様聞こえますか?』
「静樹か。どうした?三好水軍が見えたか!?」
『はい。寒川湊にて隠れて観測していますが……』
「どうした!?」
『予想より大幅に敵が多いです……ざっくり一隻五十人計算だとして、百隻は見えます……』
「は!?五千人か!?せいぜい二千くらいかと思ってたんだけど!?まぁ来たんだから文句言って減ることはない。やるだけやる。報告助かる。戻って来てくれ」
『(ウォーー!!寒川衆!今こそ三好軍に呼応するのだ!!)まずいです!寒川衆が山手側で蜂起したようです!』
「クソッ!!けど抑えの兵が居るだろ!?」
『(寒川衆よ!この香西治兵衛尉に続けぃ!貴様等が陸から押し潰せ!)まずいです……三好軍が既に入り込んでいるようで、数が千近く居ます……。私の予備隊を呼び寄せる時間がありません!私がこのまま寒川の抑えの兵を指揮します!』
さすが三好軍と言わざるを得ない。速攻戦を仕掛けて来ているのが分かる。静樹が抜けるのは痛い。痛いけど、このままならトランシーバーから微かに聞こえた敵の声の通り、陸からも来られたらマジで詰む。ってか、マジで川之江、魔境過ぎるわ。
「分かった!こっちはこっちでオレが前線に出る!そっちは任せたぞ!」
ここで現状のまま皆に伝えると士気が下がる。だから敢えて余裕があるように伝える。トランシーバーのチャンネルを全員に聞こえるよう合わせる。静樹とだけは、わざわざ違うチャンネルにしている。正確な被害などを観測するためだ。
「フッフッ。皆聞こえるか?」
『こちら助六!聞こえます!』
『滝次郎聞こえます……これは誠面白いですな?今度はこれを貴方様から盗みましょうかねぇ?』
『アカネ隊聞こえますよ~!』
その後、長次郎、川次郎と続く。滝次郎に関しては、冗談を言えるくらいだから問題ないだろう。寧ろ、その一つのトランシーバーを盗んでも、相手が居なければ何の意味もないのだが。
「寒川衆が蜂起した。三好軍が既に入り込んでいた。だが安心しろ。対処済みだ。それにオレの予想の範疇だ。予定通りオレの合図を待て。通信終わり」
「予想の範疇とは、また大きなことを言いましたな」
そう言ったのは、オレの後ろに居る土居清重だ。
「戦は士気が大切だからな。わざわざ下げるようなことは言わん。……寒川衆も、やってくれたな」
「そうですな。山岡様が居れば、三好など本当に簡単に追い返せそうな気がしますな」
「どうだろうな。負けるつもりはない。――見えたぞ。東側を見ろ」
「……大船団ですな。巴紋も見えるということは、塩飽の海賊も居るということですかな」
「土居殿は博識だな」
「まぁ、巷の情勢だけは怠らないようにしているだけですよ」
「ふん。誰が来ても同じだ。ここからは真面目にするぞ。合図を待て」
それから十五分程だろうか。浜手の沖に敵船が集まるのを待つ。三好も、数を利用した圧迫戦争をするつもりだ。
さらにもう二十分程経った時、漕ぎ手が一気に波飛沫を上げながら漕ぎ出す。
浜に到着する少し手前。船から人が海に飛び降りる直前、オレは構えている種子島の引き金を引いた。
ズドンッ
先頭に居る雑兵らしき人物に命中した。それと同時に、石川兵は火種から焙烙玉に火を点け、下がる。
「篠原隊組頭五郎一番乗りッ!!敵は鉄砲を装備している!誰ぞ一人やられた!だが臆するな!浜より上陸し三好の強さで圧倒せよッ!!」
少し偉そうな男が口上を述べた、その直後――オレの仕掛けた焙烙玉が炸裂する。
ドォォーーーン ドォォーーーン ドォォーーーン
オレはトランシーバー越しではなく、肉声で叫ぶ。
「鉄砲隊ッ!!浜に向けて撃てッ!!各々が各々の役目を果たせッ!!鬨を上げよ!斉射ッ!!!」
パパパパパパンッ
「グハッ」「グフッ」「ブハァッ」
見事なまでに命中しているのが分かった。そして、最初の焙烙玉の威力――。
「威力大也。素晴らしい!」
「今が刻ぞ!三好が慌てはためいているこの時こそ狩り時ぞ!周布の兵!命を惜しむな!川之江は我等の地ぞ!!突撃ッ!!!」
石川パパに命令をする前に、瞬時に動く。戦を分かっている人だ。
ここまでは予定通り。だが、まだまだ敵は多い。この浜手では短期決戦だ。石川パパは当初の約束通り動いてくれた。
「他愛無い!今少し狩り取りたかったが頃合いじゃ!周布の兵!退けぇ~!!」
「己ッ!!逃ぐるな!!糞っ!田舎者と侮っておったわ!!
おい!塩飽の海賊共!!早く兵を浜まで運べ!!
こうも一陣が容易く殺られるとは三好の名折れじゃ!
浜に兵を集めろ!鉄砲避けには乗ってきた船を使え!
ここに簡易陣を敷く!詫間に残している後備えも連れて来い!
薦田が命じたと言え!!」
敵の声が聞こえる。明らかに動揺している。
だが、川之江の戦いはここから超激戦となる
周布の石川兵を浜に数人、荷揚げ屋として配置している。その小舟に硝石と輝安鉱を少量詰み、楓に即席で作らせた焙烙玉を配置している。
作り方は簡単。陶器に、木片や割った陶器の破片を入れ、輝安鉱、硝石を被せ何重にもする。それを蓋から、緩燃線を出す。まぁ現代いう導火線だ。これは火縄に使われている麻の繊維を合わせた物だ。
これを火縄で使うより小さくし、油を染み込ませると燃える速度が早まる。オレが一射した合図と共に点火し、石川兵は逃げる手筈となっている。殺傷能力は低いだろうが、合図にはちょうどいい。怪我人くらいは出るだろう。
オレは課金アイテムの最重要物、トランシーバーを各隊に配備している。連絡も間違いないし、配置も即応できる。
『フッフッ。尊様聞こえますか?』
「静樹か。どうした?三好水軍が見えたか!?」
『はい。寒川湊にて隠れて観測していますが……』
「どうした!?」
『予想より大幅に敵が多いです……ざっくり一隻五十人計算だとして、百隻は見えます……』
「は!?五千人か!?せいぜい二千くらいかと思ってたんだけど!?まぁ来たんだから文句言って減ることはない。やるだけやる。報告助かる。戻って来てくれ」
『(ウォーー!!寒川衆!今こそ三好軍に呼応するのだ!!)まずいです!寒川衆が山手側で蜂起したようです!』
「クソッ!!けど抑えの兵が居るだろ!?」
『(寒川衆よ!この香西治兵衛尉に続けぃ!貴様等が陸から押し潰せ!)まずいです……三好軍が既に入り込んでいるようで、数が千近く居ます……。私の予備隊を呼び寄せる時間がありません!私がこのまま寒川の抑えの兵を指揮します!』
さすが三好軍と言わざるを得ない。速攻戦を仕掛けて来ているのが分かる。静樹が抜けるのは痛い。痛いけど、このままならトランシーバーから微かに聞こえた敵の声の通り、陸からも来られたらマジで詰む。ってか、マジで川之江、魔境過ぎるわ。
「分かった!こっちはこっちでオレが前線に出る!そっちは任せたぞ!」
ここで現状のまま皆に伝えると士気が下がる。だから敢えて余裕があるように伝える。トランシーバーのチャンネルを全員に聞こえるよう合わせる。静樹とだけは、わざわざ違うチャンネルにしている。正確な被害などを観測するためだ。
「フッフッ。皆聞こえるか?」
『こちら助六!聞こえます!』
『滝次郎聞こえます……これは誠面白いですな?今度はこれを貴方様から盗みましょうかねぇ?』
『アカネ隊聞こえますよ~!』
その後、長次郎、川次郎と続く。滝次郎に関しては、冗談を言えるくらいだから問題ないだろう。寧ろ、その一つのトランシーバーを盗んでも、相手が居なければ何の意味もないのだが。
「寒川衆が蜂起した。三好軍が既に入り込んでいた。だが安心しろ。対処済みだ。それにオレの予想の範疇だ。予定通りオレの合図を待て。通信終わり」
「予想の範疇とは、また大きなことを言いましたな」
そう言ったのは、オレの後ろに居る土居清重だ。
「戦は士気が大切だからな。わざわざ下げるようなことは言わん。……寒川衆も、やってくれたな」
「そうですな。山岡様が居れば、三好など本当に簡単に追い返せそうな気がしますな」
「どうだろうな。負けるつもりはない。――見えたぞ。東側を見ろ」
「……大船団ですな。巴紋も見えるということは、塩飽の海賊も居るということですかな」
「土居殿は博識だな」
「まぁ、巷の情勢だけは怠らないようにしているだけですよ」
「ふん。誰が来ても同じだ。ここからは真面目にするぞ。合図を待て」
それから十五分程だろうか。浜手の沖に敵船が集まるのを待つ。三好も、数を利用した圧迫戦争をするつもりだ。
さらにもう二十分程経った時、漕ぎ手が一気に波飛沫を上げながら漕ぎ出す。
浜に到着する少し手前。船から人が海に飛び降りる直前、オレは構えている種子島の引き金を引いた。
ズドンッ
先頭に居る雑兵らしき人物に命中した。それと同時に、石川兵は火種から焙烙玉に火を点け、下がる。
「篠原隊組頭五郎一番乗りッ!!敵は鉄砲を装備している!誰ぞ一人やられた!だが臆するな!浜より上陸し三好の強さで圧倒せよッ!!」
少し偉そうな男が口上を述べた、その直後――オレの仕掛けた焙烙玉が炸裂する。
ドォォーーーン ドォォーーーン ドォォーーーン
オレはトランシーバー越しではなく、肉声で叫ぶ。
「鉄砲隊ッ!!浜に向けて撃てッ!!各々が各々の役目を果たせッ!!鬨を上げよ!斉射ッ!!!」
パパパパパパンッ
「グハッ」「グフッ」「ブハァッ」
見事なまでに命中しているのが分かった。そして、最初の焙烙玉の威力――。
「威力大也。素晴らしい!」
「今が刻ぞ!三好が慌てはためいているこの時こそ狩り時ぞ!周布の兵!命を惜しむな!川之江は我等の地ぞ!!突撃ッ!!!」
石川パパに命令をする前に、瞬時に動く。戦を分かっている人だ。
ここまでは予定通り。だが、まだまだ敵は多い。この浜手では短期決戦だ。石川パパは当初の約束通り動いてくれた。
「他愛無い!今少し狩り取りたかったが頃合いじゃ!周布の兵!退けぇ~!!」
「己ッ!!逃ぐるな!!糞っ!田舎者と侮っておったわ!!
おい!塩飽の海賊共!!早く兵を浜まで運べ!!
こうも一陣が容易く殺られるとは三好の名折れじゃ!
浜に兵を集めろ!鉄砲避けには乗ってきた船を使え!
ここに簡易陣を敷く!詫間に残している後備えも連れて来い!
薦田が命じたと言え!!」
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