凶夢

なゆか

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警察と訪問

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私は警察へ事情を話し、
施設の住所や連絡先が分からない為
不審がる警官2人を施設まで
案内する事になった。

国岡「ここです」

「うーん、普通の施設に見えるけどな」

警官2人は着いてきてくれてはいるが、
半信半疑って感じで、私の言った事を
親身に受け取ってくれていなかった。

まぁ、寧々とミモの捜索願が
出されていないってのもあるが…

国岡「とにかく、よろしくお願いします」

着いて来てくれただけマシか…

警官は見学者達の間を抜け、
窓口に向かった。



しばらくすると、
窓口にいる警官に手招きをされる。

尼口「酷いじゃないすか、
警官呼ぶなんて!
昨日、監視カメラで確認したって言ったのに
信じてくれなかったなんて」

「こう言ってるけど?」

警官は面倒だと思っているのか
私がおかしいみたいな目を向けてくる。

尼口「まぁ、また来てくれたんで
いいすけど」

国岡「…2人は」

尼口「だから、来てないってば!
これから、この人達に
施設内の案内をするから
国岡さんも信用してないから来てよ」

これこそ、スラッシャー映画の
醍醐味って感じがする。

でも、警官2人が消息不明になったら
流石にもっと人を寄越したりとか、
親身に受け取ってくれるだろう…

その為に犠牲になれとは言わないが、
とにかく、私がおかしいみたいな目を
向けるのをやめてほしい。



施設内にて

私が警察を呼んだ事により、
久世施設長が直接施設内を案内する事になり
他の見学者達から凄い反感を買った。

尼口「ここは、俺らがやっとくんで
行っちゃってください」

尼口さんは見学者達を黙らせ、
私、久世施設長、蒔生さん、警官2人の
5人で行動する事になった。

久世「あはは、
まさか警察を呼ばれちゃうとはね」

「申し訳ないですね、
施設内を調べるだけですから」

警官は完全に私を信じていない。

「にしても、立派な施設ですね」

警官2人は感心し、久世施設長と話しながら
通路のドアを開け片っ端からチェックしている。

蒔生「国岡さん、
そんなに疑っていたんですね」

国岡「…」

隣を歩く蒔生さんの顔は見られない。

蒔生「夢ちゃんも
こんなに気に入っているのに」

私の腰に頭を擦り付ける夢ちゃん。

蒔生「残念です」

久世施設長が寧々とミモの事を
はぐらかすから悪い…

何も無ければいいだけの話…



エントランスにて

「お時間くださり、
ありがとうございました」

警官は何も無かったと報告書に書き、
帰って行った。

国岡「…」

久世「これで良かったのかな?
国岡さんの疑いは晴れた?」

国岡「…疑って…すみませんでした」

施設内にあるドアの全てを開けるくらい
調べたが、隠すような事はなかった。

久世「いいんだよ、2人を心配したからこそ
私達を疑ったんじゃないか」

私は久世施設長に肩を叩かれる。

尼口「なら、国岡さんの友達2人は
どこ行っちゃったんすかね」

国岡「そうですね」

この施設で2人に何か遭ったという
私の疑心は勘違いだった。

だとしたら、確かに
会社を無断欠勤している音信不通な2人は
今どうしているんだ?

久世「私達が調べてあげようか?」

国岡「…ぇ」

久世「私達のツテなら、
見つかるかもしれないよ」

国岡「…ご迷惑を掛けたのに、
そこまでして貰うわけには」

久世「遠慮しなくてもいいんだよ。
国岡さんは特別だからね」

特別…

前にも言われたな、
夢ちゃんに頭突きされてるから?

国岡「特別って」

尼口「そりゃ特別ですよ!
ここに動物を見に来るの
国岡さんくらいっすもん」

国岡「あ、そういう事ですか」

久世「そうだね、
他の見学者とは目的が違うね」

確かに皆イケメンスタッフ目当ての
見学者だったもんな…

久世「それで、どうする?」

国岡「…えと」

かなり失礼な事をして、
更に頼るなんていいんだろうか…

蒔生「国岡さんのスマホ持って来ましたよ」

国岡「あ、すみません」

私は預けていたスマホを蒔生さんから受け取る。

蒔生「何度か着信があったようです」

誰だろとスマホを観ると、
寧々とミモだった。

国岡「はぁ、なんだよ」

2人から写真も送られて来ていて、
何処に居るのかは分からないが、
楽しそうなツーショットだった。

国岡「…本当、疑ってしまって
申し訳ございませんでした」

私は再び久世施設長達に頭を下げ、
2人からの写真を見せた。

久世「あぁ、この2人だったんだね」

尼口「見学者覚えてるなんて、
凄いすね、施設長」

久世「確か海外旅行を控えてるとか
言ってたよ」

国岡「はぁ…そうだったんですね、全く」

会社に連絡せずに旅行行くとか、
社会人としてどうなんだと思う。

久世「何にせよ、
2人とも無事で良かったね」

国岡「本当にすみません」

蒔生「おかえりですか?」

蒔生さんに聞かれ、
今日は散々迷惑掛けたしと帰る事にした。

久世「また、おいで」

久世施設長達は心が広くて良い人だな。

そんな人達を疑ったなんて、
本当申し訳なかったな…

私は頭を下げて、施設を後にした。



国岡「と言うわけで、元子の考察は
ハズレたよ」

元子「えー私の勘は当たるって有名なのにー」

国岡「そういう映画の観過ぎ」

元子「うーん」

元子は腑に落ちていないようだが、
そうそうスラッシャー映画のような展開には
ならないだろと思う。

国岡「映画じゃないんだから」

元子「でも人知れず建つイケメンスタッフしか
居ない施設とか、怪しさ満載なのに」

国岡「はぁ…とにかく、施設の人は良い人で
寧々とミモはクズだってオチだよ」

元子「うーん、会社クビになってまで
行く旅行ってなんなの?」

もうクビになってるんだな…

国岡「辞める気だったんじゃない?」

元子「それでも辞表なり、普通出すでしょ。
あと、飼い猫放置ってのも」

国岡「ミモは、だらしないから」

元子「だらしないからって、
飼い猫放置して、旅行ってヤバ過ぎでしょ」

そんな話しをしながら、
この日は終わり、私は眠りについた。

~~

寧々「助けて」

ミモ「こんなはずじゃなかった」

寧々「1人だけ助かるなんて酷い」

ミモ「卑怯者」

寧々「一緒に来て」

ミモ「友達だよね?」

~~

バサッ

国岡「…夢か」

昨日、勘違いだって分かったのに、
元子がスラッシャーとか言うから
血だらけの寧々とミモが夢に出て来た。

国岡「はぁ…」

あまりにもリアルな夢に、
私は2人から送られて来た写真を開いた。

国岡「随分楽しそうな旅行だな」

写真は、寧々とミモは笑顔のアップだ。

そう言えば、何件か着信あったけど
何だったんだろ…

時刻的に2人からの着信は、この写真の前に
掛かって来ていて、電話が繋がらなかったから
写真に変えたのかなと思う。

だとしても、何の文章もなく写真のみって…

国岡「…全く」

スマホを置き、再び目を瞑る。

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