潔癖症

なゆか

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ゴミ箱

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友成「…ねえ」

後ろから声がして振り返ると友成君が
真顔で立っていた。

間藤「友成君⁈」

友成「間藤、なんでそこに居るの?」

間藤「智近君に制服盗られて」

友成「汚いな」

冷めた目で、ボソッと言われた。

智近「あ、なり君」

友成「なんでゴミ箱から出たの?」

智近「ゴミ箱なんかじゃない!」

知孝「お前ら、喧嘩すんなよ。
つか、制服取り戻したから俺はリビングに戻る」

一触即発の2人の空気を割いた知孝君は、
私の横を通り過ぎた。

友成「で、間藤はゴミ箱に入ったと?」

間藤「ゴミ箱って、何の事?」

友成「理解力疎いな…智近の部屋の事」

友成君はかなり苛ついているようで、
初めて彼のこんな姿を見た。

智近「なり君…間藤さんは、もう汚れてるから
僕のだよね」

友成「…汚物が喋るな」

弟の事…汚物って…
友成君を相当怒らせてしまった。

間藤「…友成君、
勝手に家動きまわってごめん」

とにかく、謝らないとと私は頭を下げると
友成君はため息を吐いた。

友成「そうだね、かなり不快だよ」

不快そうに目を細められ、
拒絶されたのだと伝わってくる。

間藤「…ご…ごめ」

智近「間藤さんが謝ってるのに、その言い方は
ないじゃないか!」

私は後ろから智近君に肩を掴まれ、
それに友成君は顔をしかめ、私の事を押した。

間藤「友成君⁈」

初めて触れられたのが突き飛ばす行為なんてと
私は智近君にぶつかる。

友成「…」

智近「じゃあ僕のだね」

私は智近君に後ろから羽交い締めにされ、
部屋に引き摺り込まれた。

間藤「うッ…友成君ッ
本当にごめんなさいッ…友成君ッ!」

バタンッ

ドアを閉められ、ゴミの中に倒れ込んだ。

ガチャン

智近「間藤さん…へへ、俺初めて彼女が出来たよ」

間藤「げほッ…」

臭い臭い臭い臭い臭い臭いッ

意味が分からない…こんな部屋でよく平然と…
身体が拒否反応を起こし、涙が出てきた。

智近「…へへ」

ぼりぼり

黒ずんだ歯に、フケだらけで伸びっぱなしの髪…

間藤「ひッ…離れて!」

こんな不潔な人初めて見た…
押し返しようにも汚くて触りたく無い。

智近「…そんな嫌そうな顔しないでよ…へへ」

ヘラヘラと笑い、口からも
ドブのような臭いがする。

間藤「…ゔ…ぁ…やばい」

本当に臭くて、汚くて…身体が痒くなってきた。

間藤「汚いッ」

智近「汚いって…酷いよ…
あぁ、赤いポツポツが出来てるね」

智近君に首筋を撫でられ、
堪らず押し返した。

間藤「触んないでッ!」

智近「そんなに…騒がないでよ…」

私はドアノブを回すが、ドアが開かない。

間藤「…嘘」

閉じ込められた…

バンバンバンバンッ

間藤「友成君ッ…友成君!」

バンバンバンバンッ

ドアを叩いても
いくら名前を叫んでも、
友成君はドアを開けてくれない。

臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭いッ

汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚いッ

こんな不潔な空間に居たら、
気が狂ってしまう。

間藤「嫌ッ…無理無理無理無理ッ」

早く出たい…本当に臭い…早く出たい…早くッ

身体中が更に痒くなり、更にドアを叩く。

間藤「出してッ!
早くッ…ここから出してッ!」

智近「そんなに…ドアを叩いたら
手が痛くなっちゃうよ」

間藤「うるさいッ…友成君ッ!
お願いだから出してよッ」

ドンドンドンドンッ

私はドアを蹴り、叫び続けると
ようやくドアが開かれた。

ガチャ

知孝「うっさいんだけど」

友成君じゃなかった…
でも、こんな不潔なところから出られた。

知孝「…はぁ」

早く帰りたい…早く身体を洗いたい…早く…

智近「…間藤さん」

汚い…汚い汚い汚いッ

間藤「近付かないでッ!」

智近「…うぅ、怒らないでよ」

間藤「汚いッ!
まじで…近付くな…」

本当に無理…

バタン

知孝「…はぁ」

知孝君が智近君を押し退け、
部屋のドアが閉めた。

智近「あー!たか君、開けてよ!
まだ、間藤さんとお話しするんだから!」

ドンドンドンドンッ

知孝「うるせー!
ドア壊れんだろ」

知孝君は智近君に怒鳴り、
私の腕を掴んだ。

知孝「とりま、帰んな」

間藤「…理解出来ない…あんな…」

知孝「分かったから…帰れよ」

間藤「…信じられない…
友成君に閉じ込められた」

私は床に落としていた自分の制服を掴み、
立ち上がる。

知孝「おい」

そして、リビングに走った。





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