BAD END後

なゆか

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自己中な意思

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コイツの頭どうかしてんじゃ無いの?

何で私のバイト先知ってんだよ…
それに風船待ちの子供達を
押し退けるとか、やばいでしょ…

そんな傍若無人な狭間に嫌悪感を抱く。

これ以上謝り続けるコイツを無視し続けたら、
周りに迷惑が掛かるなと、
バイトが終わるまで待ってろと
その場を済ませた。



「今谷さん困るよ、さっきのさー
キャラクターを売ってるんだから」

バイト終わりに社員に注意され、
狭間に対して、更に苛立ちが増す。

今谷「すみません」

「次は無いからねー」

何で私が怒られないと
いけないんだよと退勤し、
昨日の公園に向かうと
狭間がベンチに座っている。

狭間「お疲れ様です。
遅かったですね」

何様だよと私は自転車に跨ったまま、
狭間に近付く。

狭間「今谷さんが何で腹を立てているのか
俺には分かりませんが、
立武さんを助けて欲しいんです」

言い方腹立つな、
本当なんなんだよコイツ…

狭間「今日もあの後、
朝行った空き教室で立武さんは…」

コイツ、この場に及んで
私が帰った事を責めてきてんのか…

今谷「…帰るわ」

私は自転車を逆方向に向ける。

狭間「え…帰るって」

今谷「疲れてんだよね」

狭間「あぁ」

あぁじゃねーよと、私は苛立ちながら
その場を後にした。





苛立ちのせいで寝付きが悪く、
外は土砂降りで雷も鳴っている。

不意に窓から外を見た時、
庭に何かが居ることに気づいた。

前、台風の時にどっかの犬が
迷い込んで来た事があったっけな…

部屋の電気をつけて、庭を照らし
私は愕然とした。

今谷「…は?」

犬では無い、庭に人…狭間が居る。

今谷「…まじ、なんなのアイツ」

とち狂ってんのか土砂降りの中、
体育座りで何してんだよ…

電気を点けたからか、
立ち上がって近づいて来た。

ぱくぱくと何か言っていて、
不気味過ぎんだろと少し窓を開けると
こっちが聞こえてると思ってんのか
私に話しかけているようだった。

狭間「…それで、
今谷さんを怒らせたままで」

私は自転車で、狭間は徒歩だったはず…
それにあの公園から自転車で
30分くらいあるのに
どうやって着いてきたんだ?

それに、時計を見ると
深夜2時を回っている
この土砂降りの中、制服のままだし
家に帰らないまま、
ずっと庭に居たのかと
まじで頭おかしいんじゃないかと思う。

今谷「…ちッ」

親にバレたら面倒だと、
私は狭間を部屋に招き入れた。

狭間「ご親切にありがとうございます」

今谷「あり得ないんだけど」

狭間「何がですか?」

今谷「何がって…」

狭間「それで、俺思い出したんですよ」

今谷「何?」

狭間「俺は前世で奴隷だったんです。
それで前世が勇者だった立武さんに
救われて…」

今谷「…何言ってんの?」

前世?奴隷?勇者?
狭間は突飛な事を言い始めた。

狭間「君坂君は魔王だったんですよ!
だから、勇者だった立武さんは
君坂君に固執しているんですよ。
俺も前世で立武さんに恩があるから、
救済意識が強いんです」

雨に打たれて、
更に頭おかしくなってんなと
掛けていたタオルケットを
びしょ濡れな狭間に投げつけた。

狭間「それで、俺は奴隷だから
勇者の立武さんを助ける事が出来なくて…」

タオルで拭く間も、
ずっと意味分からない話をしてくる。

今谷「漫画かなんかの話だか知らないけど、
こんな夜中に不法侵入して来てまでする話し?
人の迷惑考えられないわけ?」

狭間「迷惑だなんてそんな」

今谷「受け取り方違うだろ、
私が迷惑だっつってんの」

狭間「でも、断言したじゃ無いですか。
苦労掛けさせるって」

私に迷惑だと理解しての
この行動だったのか…

理解出来なさ過ぎて
怒りよりも呆れた。

今谷「私に拒否権無いって言いたいわけ?」

狭間「はい」

そこも断言かよと頭を抱える。

今谷「自ら助けを求められてるわけでも、
特別仲良くも無いクラスメイトを
無償で助けろと?」

狭間「はい、そうです。
だって、今谷さんはドラゴンなので」

コイツ、何言ってんだよ…

今谷「ふざけんなよ、
私がバイト先で被ってたのが
龍だったから、そんな事言ってんの?」

狭間「ふざけてません、
今谷さんの前世はドラゴンです」

今谷「ふざけてんだろ、
私を変な話しに巻き込むな」

狭間「先日も言いましたが
今谷さんは困ってる人を
見て見ぬ振りするんですか?
今の今谷さんは、
立武さんを陥れる
最低な君坂君と同じです」

今谷「は?」

狭間「ただのクラスメイトであっても、
手助けするのは当たり前です。
それをしないなんて、
ふざけてるのは今谷さんの方です」

再び怒りが勝ってきた。

今谷「…そこまで言うなら、
お前はどうなんだよ。
立武さんの為に、なんかしてるわけ?」

狭間「今してるじゃ無いですか」

今谷「は?他力本願でその態度なわけ?」

狭間「他力本願であろうが、最善策です。
奴隷の俺が出来るのは
ドラゴンである今谷さんを導く事で」

真っ直ぐな目をして、
また意味分からない事を言い出し
私は血管が切れそうになる。

今谷「へー、立武さんを助ける為に
お前は私を利用するって事ね」

狭間「はい」

断言され、もう殴りたくなって来た。

時計を見ると既に3時に近い…

私はろくに寝てない…
今日は普通に平日で、
一時限目から数学の小テストだ。

そして、コイツに何を言っても
無意味でしかない。

今谷「…ちッ、仕方ない」

狭間「分かってくれました?」

今谷「なんて言うとでも思った?」

呆れさせた末に根負けして
手伝わせる作戦だとしたら、
上出来だと思えるが、
その段階を超えるほど
私の怒りはピークだった。

今谷「クソ」

狭間「なんですか、クソって」

今谷「お前の事だよ」

狭間「今谷さんにクソ呼ばわりされるなんて、
心外ですね」

今谷「流暢に喋んな、まじで帰れよ」

狭間「矢野さんを無償で助ける
今谷さんなら、協力してくれますよね?」

今谷「私は何言われても、
不利益でしかない事はやらないから」

狭間「なら、利益があればやると
言うことですね?」

コイツ小狡い奴だな…

今、私が言った事を引き出す為に
誘導されてたんだなと理解した。

狭間「やはり、ドラゴンだ。
貢ぎ物が必要なんですね…
お金ですか?それのも生贄ですか?」

狭間は自分のワイシャツの
ボタンを外し出した。

狭間「立武さんを救う為なら、
俺はドラゴンに身を捧げます」

今谷「は?」

狭間はワイシャツを脱ぎ、
両手を広げた。

狭間「お召し上がりください」

そう言って、濡れたワイシャツを
私のベットに置きやがった。

今谷「本当に気持ち悪い…
冗談でも笑えない。
ベット汚すな早く帰れ」

狭間「身体以上に何を御所望なんですか?」

今谷「まじで帰れってのを望んでるから」

召し上がれとか、なんなの?
気持ち悪過ぎて、やばいだろ…

私は適当なスウェットを引き出しから出し、
狭間に投げる。

今谷「そのタオルケットとスウェット、
貸すんじゃなくてあげるから、
まじで帰れよ」

狭間「立武さんを…」

今谷「うるせーな、帰れって言ってんだろ」

狭間「なんで、そこまで頑なに嫌がるんですか」

今谷「今更、何抜かしてんの?
お前が嫌だから断ってんだよ」

狭間「俺ですか?」

今谷「まじでしつけーから、出てけよ」

私は狭間の腕を掴み、窓から外に出した。

今谷「丁度良く雨止んでるから、
じゃあ、2度と私に関わるなクソ野郎」

そう言って狭間の反論を聞く前に
窓とカーテンを閉めた。

勿論、狭間の濡れたワイシャツは外に捨て
シーツを変え、結局苛つきで眠れず
不眠のまま登校を余儀なくされた。
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