BAD END後

なゆか

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捨て鉢

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月曜日

身体は怠く、頭も胃も痛いのに
学校へ登校しなければならない。

香穂子「おはよう、乃利。
土日連絡付かなかったけど、どうしたの?」

今谷「…うッ」

土日の地獄が頭を過り
私は堪らず廊下に出てトイレに駆け込んだ。

ビチャビチャッ

嘔吐物が便器に広がり、私は震える手に爪を立てる。

ガチャッ

香穂子「乃利ッ大丈夫⁈」

香穂子の心配する声がして、私は嘔吐物を流し
個室から出た。

今谷「大丈夫」

香穂子「え、大丈夫じゃないでしょ」

香穂子は私に手を伸ばすが、堪らず叩き落とした。

今谷「…大丈夫」

香穂子「…いつでも相談乗るから」

香穂子は俯いて、トイレから出て行った。

ガチャンッ

立武「おはよう、乃利ちゃん。
さっき矢野さんが暗い顔して出て行ったけど、
喧嘩したの?でも、大丈夫だよ。
乃利ちゃんには、花音が居るからね」

立武は私の頬にキスをして、トイレから出て行き
私は頬を擦れるほど拭き、教室に戻った。



君坂「…こ…こんちゃん、
ほっぺから血が出てるよ」

席に戻るなり
タクローが恐る恐る声を掛けて来た。

今谷「…」

君坂「…ご…ごめんね…話し掛けて…
でも、これ使って」

タクローは私の机にハンカチを置き、
自分の席に戻った。

今谷「…」

見覚えのある柄のハンカチ…
そうだ、このハンカチはタクローが
私が使ってたハンカチの色違いを
見つけたとかで使ってたハンカチだ。

私はそれを手に取り、頬に当てる。

今谷「…ッ」

ハンカチから微かにタクローの家の匂いがして、
涙が出て来た為、机に顔を伏せた。



狭間「今谷さん、授業始まりますよ」

いつの間に寝ていて、
私は狭間に起こされ顔を上げた。

狭間「寝不足ですね」

ニヤニヤと不敵に笑う狭間を無視し、
私はハンカチを握り締める。



昼休み

香穂子「…乃利、一緒に」

今谷「…ごめん」

石田「今谷」

今谷「…良伸君もごめん」

私は何も持たずに教室を後にした。

ガラッ

今谷「…はぁ」

滅多に人が来ない視聴覚室。
1人になるには丁度いい…ここが穴場だと
私は知っていた。

ポケットからぐちゃぐちゃになった
タクローのハンカチを出し、涙を拭う。

今谷「…死にたい」

女の立武に犯されるなんて思いもしなかった。

ねっとりと私の身体を這った立武の舌の感触が
身体に残っていて爪を立てて身体を掻きむしる。

今谷「…消えろ…消えろッ…消えろッ!」

ガラッ

君坂「…こんちゃん、居る?」

視聴覚室にタクローが入って来た。

君坂「…ぁ…こんちゃん」

タクローは私に気が付くと近付いて来て、
私の前にしゃがんだ。

君坂「ボクに話し掛けられて不愉快かと思うけど、
こんちゃんに言いたい事があるんだ」

今谷「…」

君坂「…立武に謝罪したよ。
巻き込んだクラスの男子達にも…」

タクローの声は震えている。

君坂「人として許されない事をしたんだって…
謝って…立武はボクの謝罪を
受け入れてくれたんだ…それに、
クラスの男子達も…」

立武のターゲットが私に変わったから、
謝罪を受け入れたんだと思う。

君坂「…かほちゃんにも、石田にも謝ったんだ」

残りは私だと言いたいんだろうが、
今にも泣きそうな顔をしているタクローに
私は手を伸ばした。

君坂「…え…こんちゃん?」

今谷「…キスしよ」

君坂「…キッ…キスって」

タクローは腰を抜かし、後ろに倒れ
私はその上に跨った。

顔が赤く、この一瞬で汗ばんだタクローの顔を
両手で包み、唇を近付けた。

君坂「まッ…ちょっと、待ってよ!
どうしちゃったのッ…こんちゃん」

タクローは私を手で押して、キスを拒んだ。

今谷「…なら、いいや」

私はすぐにタクローの上から退き、
ハンカチを押し付けた。

今谷「ハンカチありがとう…
汚しちゃったけど返すね」

君坂「待って!」

立ち去ろうとする私の手を掴んだタクローは、
驚いた顔のまま訴えて来た。

君坂「狭間に何かされたの?
何かされたなら、ボクが…」

今谷「いい…狭間には何かされたわけじゃない…」

君坂「にはって…他にって事でしょ⁈
誰、クラス男子?」

今谷「違う…もういいや…
で、タクローは謝りに来たんだっけ?
私に謝る事無いでしょ、
問題解決したならもういいよ」

私はタクローの上から退き、壁に寄り掛かる。

君坂「もういいって…何かされたんでしょ?
誰なのか言ってよ、ボクが何とかするから!」

今谷「余計な事しなくていい」

君坂「余計な事させてよ…
ボク…こんちゃんの事…」

そう言えば、私の事好きだったんだっけ…

今谷「なら、ヤらせて」

再びタクローに手を伸ばし、腕を掴んだ。

君坂「…ぇ、何言ってるの」

今谷「立武、今は私の事好きなんだってさ…
だから土日監禁されて犯されたんだよね」

君坂「…なっ」

今谷「…立武をクラスの男子に犯させて
おかしくしたのタクローじゃん」

元々頭がおかしい奴だったのかもしれないが
少なからずタクローにも原因がある。

タクローの顔はみるみるうちに青ざめた。

君坂「…本当に…」

今谷「ほら、見せてあげるよ」

私はワイシャツを脱ぎ、身体中に付けられた
立武の印を見せた。

君坂「…それ」

今谷「気持ち悪いでしょ?
アイツ、頭おかしいね」

私は自分の身体に爪を立てる。

今谷「立武の感触が身体に残ってるんだよね…
…本当に…気持ち悪いッ…」

君坂「こんちゃん…血が…」

タクローは私の手を掴む。

今谷「何」

君坂「駄目だよ…身体傷つけちゃ」

今谷「あぁ…別に肌傷だらけになっても、
立武が結婚してくれんだってさ…」

君坂「…は…何結婚って…」

今谷「知らない…卒業したら、
私と結婚するんだと…
はは…いかれてるでしょ…」

私はタクローの手を振り払い、
肌に爪を立てる。

今谷「まじ笑えるわ…
巻き込むなって言ったそばから
なんでこんな目に遭わないといけないわけ?
意味分かんないんだけど…」

君坂「…ご…ごめん…ボクのせいで」

今谷「ボクのせいだって思うなら、
ヤらせてよ…この気持ち悪い
立武の感触消してくんない?」

最低なお願いをしている事は分かってるが、
タクローを許せなかった。

タクローは俯き、ズボンを握り締めている。

今谷「何、幻滅でもした?
あっそれとも、汚いって思ったでしょ?
女に犯された私の事」

私はタクローの腕を掴み、爪を立てる。

今谷「タクローが立武を受け入れてれば、
私は狭間に悩まされて
胃に穴が空く事はなかった」

タクローは微動だにせずに俯いたままだ。

今谷「タクローが立武を遠ざける為に、
クラスメイトを使って犯させて、
おかしくしなければ
私が立武に犯される事はなかった」

私は、俯いたままのタクローを突き飛ばした。

今谷「私がこんな汚れたのは
タクローのせいだから」

君坂「…ぅッ…ぅう」

ポタポタと床にタクローの涙の跡が出来る。

今谷「お前が泣くなよ」

君坂「…ご…ごめ…」

今谷「謝るな」

君坂「…ボクは…」

今谷「もう何も聞きたくない、
出てけよ」



放課後

狭間「今谷さん行きましょう、
立武さんが待ってます」

地獄への誘い。

今谷「…」

私は吐き気を我慢しながら、
黙ってついて行った。



ガタンッ

立武「花音…学校で乃利ちゃんの事
我慢するの大変だったんだよ」

立武は私が掻き毟った傷口を舐め、啜った。

立武「ちゅ…今日、ずっと目で追っちゃっててね。
ココもずっと…うずうずしちゃって、
トイレで何度もオナニーしちゃった」

クソ変態女…死ね…

立武「それで昼休み、何処に行ってたの?」

今谷「…関係無い」

立武「関係ないわけないよ。
花音と乃利ちゃんは恋人同士でしょ。
いつ何処に誰といるとか、乃利ちゃんの
行動を常に把握しておきたいんだもん」

狭間「今谷さんは今日の昼休みは、
視聴覚室に居ましたよ。
その後、君坂君も視聴覚室に入って行きました」

見張られてたのかと狭間は
ベットの横で淡々と報告した。

立武「何かされた?
何かされたなら言ってね、殺すから」

タクローを殺すとか、
本当にやりかね無い表情をしている立武。

今谷「私が呼び出した」

立武「なんで?」

今谷「反省したのか聞く為」

立武「あはっ、そういえば謝罪しに来てったっけ」

立武の目には、タクローはもう映って無いんだ。

立武「まぁそれだけならいいよ。
花音と乃利ちゃんは愛し合ってるから、
花音達の間に入る隙はないからね」

立武は私に跨ると、下品に口付けられ
汚く私の口を貪った。



次の日

狭間「昼休み、何処かに行かれても迷惑なので
俺と行動してください。
その様子じゃ、ご飯抜いてますね?
俺が栄養がつくお弁当を今谷さんの分も
持って来たので食べましょう」

今谷「…お前が作った物なんて
気持ち悪くて食べれない」

狭間「我儘言わないでください。
栄養失調で体調崩して、迷惑掛ける事だけは
止めてくださいよ」

狭間は相変わらず、立武の事しか考えていない。

狭間に腕を掴まれ、
無理矢理立ち上がらせられ、
それを見ていたっぽいクラスメイト達は
チラチラと見てくる。

勿論、その中には立武も居て
知らんぷりしている。

香穂子と良伸君は、
私が手助けを拒否したせいか
バツそうな顔をしているが
声を掛けてこなかった。

君坂「おい…狭間」

タクローは狭間の手を私から振り払った。

狭間「何ですか?」

君坂「こんちゃんが…嫌がってる」

狭間「貴方はお役御免なので、
関わって来ないでください。
さあ、今谷さん行きますよ」

君坂「お役御免ってなんだよッ…」

狭間「ここは教室の中ですよ?
大声出すの止めてください」

狭間は余裕そうにタクローをあしらい、
私の腕を再び掴むと引き摺るように廊下に出て、
狭間が向かう方向は多分視聴覚室。

狭間「昨日、君坂君と何話したんです?」

今谷「関係無い」

狭間「関係大有りですよ。
君坂君が、立武さんと今谷さんとの関係を
邪魔しよう物なら排除しないといけませんから」

狭間の目は本気で、イカれた奴同士で
仲良くしとけよと尚更思う。

狭間「今谷さんが正直に言わないのなら、
小型のマイクを常に着けておく事になりますからね」

つまり、四六時中見張られると
宣言されたと言う事だろう。

タクローはだいぶ反省してたし、
これ以上はもう関わらせるのは嫌だなと
私は狭間の手を握る。



今谷「お前は、立武の為なら
なんでもするんだよね」

丁度、視聴覚室に着いた。

狭間「当たり前じゃないですか。
俺は奴隷ですからね、
お弁当そこで食べましょうか」

狭間は私の腕から手を離し、
弁当をデスクに広げ出した。

狭間「家でも食べてないようですね、
今谷さんのお母様から聞きましたから」

私の苦悩はコイツから始まった。

狭間「栄養補給出来るように、
野菜のスープも作りましたよ」

コイツが私に頼って来なければ、
今のような状況にはなっていない…

狭間の背中はガラ空きで、
後ろからナイフで刺すなり
首絞めるなり、椅子で殴るなり…

この立武にしか、
興味の無い化け物を殺すなら
油断している今だ。

ガチャン

私は視聴覚室のドアの鍵を閉め、
狭間の背中に近付いた。

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