ティアル・ナ・エストレア ―青髪の双子の王子―

涼月

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第二章 使命を探す旅

第25話 ミザロへの買い出し

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「お父さん!」
 またまたバーンと作業場の扉が蹴破られて、フィオナが飛び込んできた。

「また飛翔を拉致ったわね!」
「人聞きの悪い事言わないでくれないかな~、お嬢さん」
 ドルトムントは逃げ腰で抗議する。

「今日は私の番だから!」
「はあ?」「え!」

 戸惑う男性二人に頓着無く、フィオナはまじまじと飛翔の事を見つめると、ちょっと言いにくそうな様子で聞いてきた。

「あのね……飛翔。あなた悪いことして逃げているとか、お金を踏み倒して逃げているとかってことは、無いわよね?」
「は? そ、そんなことは無いよ!」
「本当に、本当よね! あなたと歩いていたら、衛兵に追いかけたれたり、借金取りに脅されたりするようなことは、ぜ~ったい無いわよね!」
「そんなことあるわけないだろう」
「良かった~。いやねー飛翔を信用してないわけじゃ無いんだけど、一応聞いてみないとわからないでしょ。だから、ごめんね! 変なこと聞いて! 疑ってごめん!」

 フィオナは両手を合わせて拝むような格好で謝った。

「いや、見ず知らずの俺をこんなにもてなしてくれている人に、まだ、何も話せていない。不安にさせてすまなかった」
「すまないと思うなら、ちょっとは肉体労働して恩返ししてくれないかしら? 働かざる者食うべからず! これから市場に買い出しに行くから、荷物持ちで一緒に行ってちょうだい」
「そんなことなら、おやすいごようだよ!」
「でも、その髪の毛の色はちょっと目立つかも……。そうだわ、ジオのターバン借りて巻いていけばいいわ。取ってくるから、あなたも支度して食堂に来てくれる?」

 まだまだ話し足りない顔をしているドルトムントを残して、さっさと飛翔を引っ張り出した。

 
 食堂でフィオナに髪の毛にターバンを巻いてもらうと、早速二人は市場へ向かって丘を下って行った。

「近道を行くわよ!」

 フィオナに付いて行くと、木々の中を抜ける小道に入った。整備されているわけではないのでデコボコしているが、周りの木々を渡る風が涼しくて気持ちが良い。

「あら、その腕輪、どこで? ああ! お父さんのところね。そんな錆びた腕輪を気に入ったの? よく洗ってから使ったほうがいいわよ~」
「ああ、後で洗っておくよ」

 飛翔は苦笑いしながら頷いた。フィオナはドルトムントの事になると、容赦が無い。

「ハダルとジオはどこに行ったんだ?」
「ハダルとジオは、今日は町で荷物運びの仕事をしてくれているわ。うちは見てのとおり、お父さんがアンクルムも働きが無いからねー。ハダルとジオが働いてお金を稼いでくれなきゃ、発掘の費用だって無いんだから。二人には感謝してもし足りないわ」

 フィオナは真っすぐにおろした金髪を風になびかせながら、くるくるとよく表情の出る蒼い瞳を飛翔に向けて話を続けた。

「ハダルはね、海洋都市バンドスの出身らしくてね。語学も堪能だし、武術も強いし、算術や商品の目利きも上手で、自分の店を開いたら繁盛させるだけの能力を持っているのよ。交渉も上手で、上手くお偉いさんたちに話を通して、父さんの発掘費用を捻出してくれたりね。何もかもハダルのおかげ。どうして、うちなんかに住んでくれているのか、不思議でしょうがないわ」

 フィオナは心底不思議そうに、でも感謝の気持ちを込めて言った。

 残念ながら、フィオナはハダルの想いにまだ気づいて無いらしい……

 飛翔は心の中でハダルにエールを送った。
 そして、サラサラの黒髪に、煌めきを秘めた金の瞳を持つハダルの顔を思い浮かべた。
 確かに、どこでもやっていけそうだ。
 ましてやお店なんか開いたら、女性陣が殺到しそうだよな。

「ジオはね、北の方の出身みたいよ。詳しいことは聞いてないんだけど、動物のことに詳しくて、エクゥスの世話とか上手なのよ。町の人達から荷馬車の馬の世話を頼まれたり、動物のお医者さんみたいなこともしているわ。ああ見えて、結構役にたつのよ」

 ああ見えてって、フィオナにはジオがどう見えているんだろう?

 飛翔は密かに心の中で突っ込みを入れた。
 そして、ジオの茶目っ気たっぷりな濃い飴色の瞳を思い出す。まだまだ可愛らしい顔立ちをしているけれど、将来はきっと精悍で頼りになる男に成長するに違いない。

 北の方とは、どの辺りを指すのだろうか? 

 近道と言う名の急斜面を下り切ると、すぐに家々が立ち並んだ通りに出た。

「ほら! 近いでしょー。でも、帰りは地獄よ~!」
 フィオナはふふふっと笑った。
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