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第六章 古の泉
第54話 翠生翁
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それから間もなく、近衛兵の舜祥率いる小隊に任せて、古の石碑を王宮内の飛王の寝室へと運び入れた。
飛王と瑠月と李秀の三人で、石碑を繋ぎ合わせる。
そうして現れ出た第二章の文言は、やはり微妙に内容が変えられていたが、飛翔の無事だけは確信できたので、飛王はほっと胸を撫でおろした。
けれど、星砕剣の真実は、飛王の胸を息苦しくさせた。
重い責任に押しつぶされそうになる。
相談できる飛翔がいない寂しさが、飛王をより一層孤独の岸へと誘っていった。
ある日、王宮内の廊下を、一人の老人が歩いていた。
着ている服は質素だが、皺ひとつなく手入れされており、背筋がピンと伸びた姿は颯爽としている。背はそれほど高くは無いが細身で筋肉質な体格、浅黒く日に焼けた顔と節くれだった手は、長く外での労働を続けてきた証だった。
すれ違う人々が皆、彼を見ると顔をほころばせて嬉しそうに挨拶するところを見ると、王宮内では有名で慕われている人物だと言うことが推し量られた。
彼は誰に案内されることも無く、飛王たちが話し合いをしている部屋のドアをノックすると、いきなり腹の底からの大きな声で中の皆に声をかけた。
「おーい! いつまで長々と会議をしているつもりだい! 美味しい飯でも食べて、少し休憩したほうがいいぞ!」
話し合っていた人々は、この聖杜国の中枢を担う政務官たち。
飛王を中心に、右宰相の開項と左宰相の斉覚も居た。
「翠生翁!」
飛王の嬉しそうな声に扉に目をやった政務官たちの顔も、一気に和やかな雰囲気になった。
「飛王! 立派になったな。いや、もう王だった。ははは」
「これは翠生翁。お久しぶりです」
右宰相の開項と左宰相の斉覚も穏やかな表情になり、翠生翁を招き入れた。
「みんな色々大変だったな。だからしっかり栄養を取ってもらおうと思ってな。美味しい野菜を一杯持ってきたぞ。今、厨房に頼んで料理してもらっている」
「翠生翁、いつもありがとうございます!」
久しぶりの飛王の明るい笑顔に、横に控えていた瑠月もほっと顔をほころばせた。
「みんな料理ができるまで、ちょっと休憩しないか? で、わしはちょっと飛王を借りていくぞ」
翠生翁と呼ばれた老人は、茶目っ気のある笑顔をみんなへ向けると、返事も待たずに飛王の腕を引っ張って外へ連れ出した。
政務官たちの顔が一瞬あっけにとられたような顔になったが、こんなことをしても許されるほどの人物なのか、誰も異議を唱える者はいなかった。
飛王も嬉しそうに翠生翁に引っ張られたまま付いて行き、開項と斉覚に、食事の後まで休憩しようと声を掛けて出て行った。
翠生翁はそのまま飛王の腕を掴んだままずんずん進み、やがて王宮の門を出てしまった。瑠月と李秀は慌てて二人に付いて行く。
そのまま宝燐山の方角へ進み、緑の森へと入って行った。
この道は、先日飛王たちが古の泉の都へ向かったのと同じ道。
だが、その遥手前の城壁の内側で、翠生翁は脇道へ逸れると、少しばかり斜面になった森の中の畑へと案内したのだった。
「久しぶりに来ました! 相変わらず翠生翁の畑の作物の実は大きい!」
飛王が目を輝かせて作物を見つめている。
「食べたいの、どれでも採って食べていいぞ」
翠生翁はそう言うと、三人に小さな籠のようなものをほいっと手渡して、どんどん食べるように促した。
飛王にとって、久しぶりに自然と触れ合う機会になった。
夏の太陽の元、真っ赤に実った蕃茄に胡瓜、玉蜀黍……こどもの頃に戻った気持ちで、無心に収穫して、洗ってそのままかぶりついた。
「うまい! やっぱり翠生翁の野菜は最高だよ」
「そうだろう、そうだろう」
満足そうに頷く翠生翁。
「飛翔も一緒だったら、さぞ喜んだだろうに……」
飛王が思わずつぶやくと、翠生翁は穏やかな笑顔を向けた。
「そうだな。飛翔にも食べさせてやりたいな」
この翠生翁は、彰徳王の昔からの知り合いであり、作物栽培の第一人者だった。
翠生翁が手間暇かけて作る野菜は、生産性の高い強い品種の種を生み出し、聖杜国の食料事情が飛躍的に向上したのだった。
政務官の多くが、翠生翁の行動を咎めずに受け入れていたのは、彼の功績を認め称えているからに他ならなかった。
そして、飛王と飛翔にとっては、ここは第二の遊び場であり、翠生翁は大好きなおじいさんのような、親しい間柄であった。
子どもの頃は、度々父の彰徳王と共にここを訪れて、作物についての知識や、自然に関する蘊蓄をたくさん話してもらっていたのだ。
もちろん、今日のように、好きなように収穫したり、時には作付けの手伝いをしたり……
「ここは変わらないな」
ぽつりと言った飛王の言葉に、翠生翁が笑う。
「変わった物と変わらない物があるぞ」
そう言って、飛王を一番高いところにある畑に案内する。
「ここの畑はおまえさんが生まれた頃から、あまり広さが変わって無いけれど、育てている作物は少しずつ変わってきているんだよ。ほら、これが何か知っているかい?」
「木の実ですよね? でも見たことも食べたことも無いな」
「そうだろう!」
翠生翁はちょっと自慢げな様子だ。
「これはな、昔バルディア国から来ていた商人がいただろう……名前なんていったっけ?」
「リュミエールですか?」
「ああ、そうそう、あの若い商人な。あいつが砂漠の木の実だって言ってくれた実を種にして、育ててみたものなんだよ。ここは湿気が多いからなかなか育たなくてな。試行錯誤して、ようやくここまで育ってきたとこさ。まだ実は少ないけどな」
「凄いな~」
飛王は無邪気に感嘆の声を挙げる。
「一見変わって無いように見えることでも、少しずつ変化して、進歩しているってことさ。だから、心配することも無いし、逆に変化することを恐れる必要も無いのさ」
翠生翁のその言葉に、飛王は素直に耳を傾けた。
そして、胸のもやもやを吐きだすように、思い切って尋ねてみた。
「翠生翁、もしも……もしも『知恵の泉』が無くなったら、この先エストレア星の人々はどうなると思いますか?」
「別に、どうもならないさ。今までと同じだよ」
思ってもみなかった翠生翁の言葉に、飛王はスッと肩の力が抜けた。
「今までと同じ?」
「ああ、みんな目の前のことを一生懸命こなしながら、寿命がつきるまで生きるだけさ」
飛王は少し考えてからまた尋ねてみた。
「でも、今まで私たちは『知恵の泉』が授けてくれた知識で、色々なことができるようになったし、今よりもっと良い生活を送れるように頑張ってきたんですよね。もし、『知恵の泉』が無くなったら、もうこれからは新しい知識を得ることが出来なくなってしまうじゃないですか。そうしたら、進歩が止まってしまいますよね。より豊かな生活も望めなくなってしまう」
翠生翁は飛王の瞳をじーっと見つめると、穏やかな声で話始めた。
「飛王よ、おまえさんから見て、今の世の中はどう映っている? 確かに『知恵の泉』は我々に多くの知恵を与えてくれた。そのお陰で、今こうやって豊かに暮らすことができていることは紛れもない真実だ。そして、この泉があればこれからも、もっとたくさんの知恵を授けてくれて、もっと豊かな生活ができるかもしれない。でも、もっと豊かな生活ってなんだ?」
「それは……」
「明日の食べ物があって、優しい家族がいて、住むところがあって、やりたい仕事をやって、そんな生活があれば、わしはそれ以上望む必要は無いと思っているんだよ。まあ、人それぞれの考え方だけどな」
翠生翁は目の前の葉を愛しそうに撫でながら言葉を続ける。
「実はわしは『知恵の泉』へ知恵をもらいに行ったことは一度もないんだよ」
「そうだったんですか!」
飛王は驚きの声を挙げた。
「じゃあ、今まで翠生翁が作り出してきたたくさんの作物栽培法は、翠生翁が自分で考えたことばかりなんですか?」
「わし一人の考えでは無いな。もともとは『知恵の泉』から授かった知識だと思うよ。でもその後に連綿と、その知恵に工夫を凝らして栽培してきた人々の知恵が加わって、そこにわしが工夫した知恵が加わって、そうして出来上がっているのが今の栽培方法さ。だから、一人の力だけでも無いし、『知恵の泉』の力だけでも無いってことさ」
飛王は、翠生翁の言っている意味が分かってきた気がした。
「『知恵の泉』がくれたのは知識だけではないんだよ。人々に情熱と創意工夫の心をくれた。だからここまで来れたんだ」
翠生翁は優しい眼差しを飛王に向けた。
「飛王よ、もう世の中には、幸せになるためのヒントが溢れていると思わないかい? もう、充分なんじゃないかな」
飛王も、翠生翁の言葉を噛み締めるように大きく頷いた。
「そのヒントを上手く使うか使わないかは、これからの人次第さ」
森の緑に冷やされた風が、二人の頬を撫でていく。
飛王はもう一度畑を見回して、清々しい空気を吸い込んだ。
「もう一つ、大切なことがあるぞ。わしから新しい王への贈物だ」
翠生翁は飛王の肩を叩いて言った。
「人間は未来を考えることができるから、ついつい先のことが心配になって、あれこれ備えようとしてしまう。だがな、自然に対して人間ができることなんてちっぽけなものさ。だから、必要以上に憂うな。今を生きろ。そして『足る』を知れ。余分に蓄える必要はない。今ある物を受け入れる気持ちさえ忘れなければ、奪い合いの戦なんておきないんだからな」
そして、真剣な目で飛王を見つめると、こう締めくくった。
「飛王よ。未来は、その先の誰かのものだ。お前が一人で責任を負う必要はないんだぞ」
飛王と瑠月と李秀の三人で、石碑を繋ぎ合わせる。
そうして現れ出た第二章の文言は、やはり微妙に内容が変えられていたが、飛翔の無事だけは確信できたので、飛王はほっと胸を撫でおろした。
けれど、星砕剣の真実は、飛王の胸を息苦しくさせた。
重い責任に押しつぶされそうになる。
相談できる飛翔がいない寂しさが、飛王をより一層孤独の岸へと誘っていった。
ある日、王宮内の廊下を、一人の老人が歩いていた。
着ている服は質素だが、皺ひとつなく手入れされており、背筋がピンと伸びた姿は颯爽としている。背はそれほど高くは無いが細身で筋肉質な体格、浅黒く日に焼けた顔と節くれだった手は、長く外での労働を続けてきた証だった。
すれ違う人々が皆、彼を見ると顔をほころばせて嬉しそうに挨拶するところを見ると、王宮内では有名で慕われている人物だと言うことが推し量られた。
彼は誰に案内されることも無く、飛王たちが話し合いをしている部屋のドアをノックすると、いきなり腹の底からの大きな声で中の皆に声をかけた。
「おーい! いつまで長々と会議をしているつもりだい! 美味しい飯でも食べて、少し休憩したほうがいいぞ!」
話し合っていた人々は、この聖杜国の中枢を担う政務官たち。
飛王を中心に、右宰相の開項と左宰相の斉覚も居た。
「翠生翁!」
飛王の嬉しそうな声に扉に目をやった政務官たちの顔も、一気に和やかな雰囲気になった。
「飛王! 立派になったな。いや、もう王だった。ははは」
「これは翠生翁。お久しぶりです」
右宰相の開項と左宰相の斉覚も穏やかな表情になり、翠生翁を招き入れた。
「みんな色々大変だったな。だからしっかり栄養を取ってもらおうと思ってな。美味しい野菜を一杯持ってきたぞ。今、厨房に頼んで料理してもらっている」
「翠生翁、いつもありがとうございます!」
久しぶりの飛王の明るい笑顔に、横に控えていた瑠月もほっと顔をほころばせた。
「みんな料理ができるまで、ちょっと休憩しないか? で、わしはちょっと飛王を借りていくぞ」
翠生翁と呼ばれた老人は、茶目っ気のある笑顔をみんなへ向けると、返事も待たずに飛王の腕を引っ張って外へ連れ出した。
政務官たちの顔が一瞬あっけにとられたような顔になったが、こんなことをしても許されるほどの人物なのか、誰も異議を唱える者はいなかった。
飛王も嬉しそうに翠生翁に引っ張られたまま付いて行き、開項と斉覚に、食事の後まで休憩しようと声を掛けて出て行った。
翠生翁はそのまま飛王の腕を掴んだままずんずん進み、やがて王宮の門を出てしまった。瑠月と李秀は慌てて二人に付いて行く。
そのまま宝燐山の方角へ進み、緑の森へと入って行った。
この道は、先日飛王たちが古の泉の都へ向かったのと同じ道。
だが、その遥手前の城壁の内側で、翠生翁は脇道へ逸れると、少しばかり斜面になった森の中の畑へと案内したのだった。
「久しぶりに来ました! 相変わらず翠生翁の畑の作物の実は大きい!」
飛王が目を輝かせて作物を見つめている。
「食べたいの、どれでも採って食べていいぞ」
翠生翁はそう言うと、三人に小さな籠のようなものをほいっと手渡して、どんどん食べるように促した。
飛王にとって、久しぶりに自然と触れ合う機会になった。
夏の太陽の元、真っ赤に実った蕃茄に胡瓜、玉蜀黍……こどもの頃に戻った気持ちで、無心に収穫して、洗ってそのままかぶりついた。
「うまい! やっぱり翠生翁の野菜は最高だよ」
「そうだろう、そうだろう」
満足そうに頷く翠生翁。
「飛翔も一緒だったら、さぞ喜んだだろうに……」
飛王が思わずつぶやくと、翠生翁は穏やかな笑顔を向けた。
「そうだな。飛翔にも食べさせてやりたいな」
この翠生翁は、彰徳王の昔からの知り合いであり、作物栽培の第一人者だった。
翠生翁が手間暇かけて作る野菜は、生産性の高い強い品種の種を生み出し、聖杜国の食料事情が飛躍的に向上したのだった。
政務官の多くが、翠生翁の行動を咎めずに受け入れていたのは、彼の功績を認め称えているからに他ならなかった。
そして、飛王と飛翔にとっては、ここは第二の遊び場であり、翠生翁は大好きなおじいさんのような、親しい間柄であった。
子どもの頃は、度々父の彰徳王と共にここを訪れて、作物についての知識や、自然に関する蘊蓄をたくさん話してもらっていたのだ。
もちろん、今日のように、好きなように収穫したり、時には作付けの手伝いをしたり……
「ここは変わらないな」
ぽつりと言った飛王の言葉に、翠生翁が笑う。
「変わった物と変わらない物があるぞ」
そう言って、飛王を一番高いところにある畑に案内する。
「ここの畑はおまえさんが生まれた頃から、あまり広さが変わって無いけれど、育てている作物は少しずつ変わってきているんだよ。ほら、これが何か知っているかい?」
「木の実ですよね? でも見たことも食べたことも無いな」
「そうだろう!」
翠生翁はちょっと自慢げな様子だ。
「これはな、昔バルディア国から来ていた商人がいただろう……名前なんていったっけ?」
「リュミエールですか?」
「ああ、そうそう、あの若い商人な。あいつが砂漠の木の実だって言ってくれた実を種にして、育ててみたものなんだよ。ここは湿気が多いからなかなか育たなくてな。試行錯誤して、ようやくここまで育ってきたとこさ。まだ実は少ないけどな」
「凄いな~」
飛王は無邪気に感嘆の声を挙げる。
「一見変わって無いように見えることでも、少しずつ変化して、進歩しているってことさ。だから、心配することも無いし、逆に変化することを恐れる必要も無いのさ」
翠生翁のその言葉に、飛王は素直に耳を傾けた。
そして、胸のもやもやを吐きだすように、思い切って尋ねてみた。
「翠生翁、もしも……もしも『知恵の泉』が無くなったら、この先エストレア星の人々はどうなると思いますか?」
「別に、どうもならないさ。今までと同じだよ」
思ってもみなかった翠生翁の言葉に、飛王はスッと肩の力が抜けた。
「今までと同じ?」
「ああ、みんな目の前のことを一生懸命こなしながら、寿命がつきるまで生きるだけさ」
飛王は少し考えてからまた尋ねてみた。
「でも、今まで私たちは『知恵の泉』が授けてくれた知識で、色々なことができるようになったし、今よりもっと良い生活を送れるように頑張ってきたんですよね。もし、『知恵の泉』が無くなったら、もうこれからは新しい知識を得ることが出来なくなってしまうじゃないですか。そうしたら、進歩が止まってしまいますよね。より豊かな生活も望めなくなってしまう」
翠生翁は飛王の瞳をじーっと見つめると、穏やかな声で話始めた。
「飛王よ、おまえさんから見て、今の世の中はどう映っている? 確かに『知恵の泉』は我々に多くの知恵を与えてくれた。そのお陰で、今こうやって豊かに暮らすことができていることは紛れもない真実だ。そして、この泉があればこれからも、もっとたくさんの知恵を授けてくれて、もっと豊かな生活ができるかもしれない。でも、もっと豊かな生活ってなんだ?」
「それは……」
「明日の食べ物があって、優しい家族がいて、住むところがあって、やりたい仕事をやって、そんな生活があれば、わしはそれ以上望む必要は無いと思っているんだよ。まあ、人それぞれの考え方だけどな」
翠生翁は目の前の葉を愛しそうに撫でながら言葉を続ける。
「実はわしは『知恵の泉』へ知恵をもらいに行ったことは一度もないんだよ」
「そうだったんですか!」
飛王は驚きの声を挙げた。
「じゃあ、今まで翠生翁が作り出してきたたくさんの作物栽培法は、翠生翁が自分で考えたことばかりなんですか?」
「わし一人の考えでは無いな。もともとは『知恵の泉』から授かった知識だと思うよ。でもその後に連綿と、その知恵に工夫を凝らして栽培してきた人々の知恵が加わって、そこにわしが工夫した知恵が加わって、そうして出来上がっているのが今の栽培方法さ。だから、一人の力だけでも無いし、『知恵の泉』の力だけでも無いってことさ」
飛王は、翠生翁の言っている意味が分かってきた気がした。
「『知恵の泉』がくれたのは知識だけではないんだよ。人々に情熱と創意工夫の心をくれた。だからここまで来れたんだ」
翠生翁は優しい眼差しを飛王に向けた。
「飛王よ、もう世の中には、幸せになるためのヒントが溢れていると思わないかい? もう、充分なんじゃないかな」
飛王も、翠生翁の言葉を噛み締めるように大きく頷いた。
「そのヒントを上手く使うか使わないかは、これからの人次第さ」
森の緑に冷やされた風が、二人の頬を撫でていく。
飛王はもう一度畑を見回して、清々しい空気を吸い込んだ。
「もう一つ、大切なことがあるぞ。わしから新しい王への贈物だ」
翠生翁は飛王の肩を叩いて言った。
「人間は未来を考えることができるから、ついつい先のことが心配になって、あれこれ備えようとしてしまう。だがな、自然に対して人間ができることなんてちっぽけなものさ。だから、必要以上に憂うな。今を生きろ。そして『足る』を知れ。余分に蓄える必要はない。今ある物を受け入れる気持ちさえ忘れなければ、奪い合いの戦なんておきないんだからな」
そして、真剣な目で飛王を見つめると、こう締めくくった。
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