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Step2 胡蝶蘭男子の部下になりました
ツクシ①
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そこは少人数用の打ち合わせ室。
一瞬何かされるのかと身を固くしたけれど、妄想のような怪しい展開にはならなかった。
当たりまえだけれど。
向かいの席に座るように促されて、私は機械人形のように黙って腰を下ろした。
「もしかして、いじめられてる?」
あまりにも単刀直入に聞かれて、思わず困惑の顔で見つめてしまった。
「なるほど。真山さん、自分が仕事ができるからかな。できない人を見下すところがあるんだよね」
「いえ、真山さん本当にお忙しかったので。それに私に何のスキルも無いのは事実ですし……」
「でもさ、上司は部下を育てるのも仕事のうちだからね。君を使えない時点で彼女も仕事ができないってことを証明しているようなもんなんだけれどね」
うわー、厳しい言葉。
でも、ちょっと意外。
高梨室長、本当は部下のことをよく見ていて、どうやって育てようかと考えている方だったんだ。
今回の私の採用にも、そんな意図があったなんて。
ずっーと、ほっぽって置かれて心細かったんだけれど、私の事もちゃんと見ていてくれたんだなと思ったら、心の中がぽっと温かくなった。
こうやってヒヤリングもしてくれて、案外細やかな人なのかも。
でもこのままだと、真山さんが悪いみたいなのも後味悪いな。実際、今日いただいた仕事は手も足も出なかったし……
「きっと真山さんが想像できないほど私が頼りないので、任せるのを躊躇されたんだと思います。すみません」
その言葉に、今度はイライラした顔になる高梨室長。
あれ? 私また失言したのかな。
「水樹さん、君はずいぶんと自分を卑下するのが好きなようだね。なんでも自分のせいにするのは感心しないな。できないのはやってないからだし、やって直ぐにできるようにもなるものでも無いんだよ。失敗を恐れずに経験を積むしかない。だったら、仕事をくれない人を庇うよりも、チャンスをくれないことに、もっと怒っていいと思うよ」
思ってもみなかった言葉に驚いて、思わず高梨室長の顔を見つめてしまう。
私の瞳を真正面から受け止めた彼がニヤリと笑った。
「雑草男子のこと認めて欲しいって言った時は、ずいぶんとはっきり物が言えたのに。自分のことになるとからきしだめなんだね。でも、まず君が信用されないと、君の主張も信用されないよ。俺はあの時の君のハングリー精神に期待していたんだけれどな」
え! あの時のこと、ちゃんと覚えていてくれたんだ。それに、怒ってもいなかったんだわ。
そう思ったら、ふわっと体の力が抜けたの。
私、今初めて、ここに居ていいんだって思えた気がする……
この職場に来てから、ずっと落ち着かない気持ちでいたの。居場所が無いって思って。
でも、高梨室長は、何もかもわかっていて私を採用してくれたんだ。そう思ったらすーって気持ちが落ち着いたの。
私にだって、私にしかできない役割があるはず!
「あ、ありがとうございます。わかりました! もう一度チャンスをください。がんばります」
「それでこそ、雑草男子推しだね」
一瞬何かされるのかと身を固くしたけれど、妄想のような怪しい展開にはならなかった。
当たりまえだけれど。
向かいの席に座るように促されて、私は機械人形のように黙って腰を下ろした。
「もしかして、いじめられてる?」
あまりにも単刀直入に聞かれて、思わず困惑の顔で見つめてしまった。
「なるほど。真山さん、自分が仕事ができるからかな。できない人を見下すところがあるんだよね」
「いえ、真山さん本当にお忙しかったので。それに私に何のスキルも無いのは事実ですし……」
「でもさ、上司は部下を育てるのも仕事のうちだからね。君を使えない時点で彼女も仕事ができないってことを証明しているようなもんなんだけれどね」
うわー、厳しい言葉。
でも、ちょっと意外。
高梨室長、本当は部下のことをよく見ていて、どうやって育てようかと考えている方だったんだ。
今回の私の採用にも、そんな意図があったなんて。
ずっーと、ほっぽって置かれて心細かったんだけれど、私の事もちゃんと見ていてくれたんだなと思ったら、心の中がぽっと温かくなった。
こうやってヒヤリングもしてくれて、案外細やかな人なのかも。
でもこのままだと、真山さんが悪いみたいなのも後味悪いな。実際、今日いただいた仕事は手も足も出なかったし……
「きっと真山さんが想像できないほど私が頼りないので、任せるのを躊躇されたんだと思います。すみません」
その言葉に、今度はイライラした顔になる高梨室長。
あれ? 私また失言したのかな。
「水樹さん、君はずいぶんと自分を卑下するのが好きなようだね。なんでも自分のせいにするのは感心しないな。できないのはやってないからだし、やって直ぐにできるようにもなるものでも無いんだよ。失敗を恐れずに経験を積むしかない。だったら、仕事をくれない人を庇うよりも、チャンスをくれないことに、もっと怒っていいと思うよ」
思ってもみなかった言葉に驚いて、思わず高梨室長の顔を見つめてしまう。
私の瞳を真正面から受け止めた彼がニヤリと笑った。
「雑草男子のこと認めて欲しいって言った時は、ずいぶんとはっきり物が言えたのに。自分のことになるとからきしだめなんだね。でも、まず君が信用されないと、君の主張も信用されないよ。俺はあの時の君のハングリー精神に期待していたんだけれどな」
え! あの時のこと、ちゃんと覚えていてくれたんだ。それに、怒ってもいなかったんだわ。
そう思ったら、ふわっと体の力が抜けたの。
私、今初めて、ここに居ていいんだって思えた気がする……
この職場に来てから、ずっと落ち着かない気持ちでいたの。居場所が無いって思って。
でも、高梨室長は、何もかもわかっていて私を採用してくれたんだ。そう思ったらすーって気持ちが落ち着いたの。
私にだって、私にしかできない役割があるはず!
「あ、ありがとうございます。わかりました! もう一度チャンスをください。がんばります」
「それでこそ、雑草男子推しだね」
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