私の推しは雑草男子

涼月

文字の大きさ
17 / 62
Step2 胡蝶蘭男子の部下になりました

ツクシ①

しおりを挟む
 そこは少人数用の打ち合わせ室。
 一瞬何かされるのかと身を固くしたけれど、妄想のような怪しい展開にはならなかった。
 当たりまえだけれど。

 向かいの席に座るように促されて、私は機械人形のように黙って腰を下ろした。

「もしかして、いじめられてる?」

 あまりにも単刀直入に聞かれて、思わず困惑の顔で見つめてしまった。

「なるほど。真山さん、自分が仕事ができるからかな。できない人を見下すところがあるんだよね」
「いえ、真山さん本当にお忙しかったので。それに私に何のスキルも無いのは事実ですし……」

「でもさ、上司は部下を育てるのも仕事のうちだからね。君を使えない時点で彼女も仕事ができないってことを証明しているようなもんなんだけれどね」

 うわー、厳しい言葉。
 
 でも、ちょっと意外。
 高梨室長、本当は部下のことをよく見ていて、どうやって育てようかと考えている方だったんだ。
 今回の私の採用にも、そんな意図があったなんて。

 ずっーと、ほっぽって置かれて心細かったんだけれど、私の事もちゃんと見ていてくれたんだなと思ったら、心の中がぽっと温かくなった。
 こうやってヒヤリングもしてくれて、案外細やかな人なのかも。

 でもこのままだと、真山さんが悪いみたいなのも後味悪いな。実際、今日いただいた仕事は手も足も出なかったし……

「きっと真山さんが想像できないほど私が頼りないので、任せるのを躊躇されたんだと思います。すみません」


 その言葉に、今度はイライラした顔になる高梨室長。
 あれ? 私また失言したのかな。

「水樹さん、君はずいぶんと自分を卑下するのが好きなようだね。なんでも自分のせいにするのは感心しないな。できないのはやってないからだし、やって直ぐにできるようにもなるものでも無いんだよ。失敗を恐れずに経験を積むしかない。だったら、仕事をくれない人を庇うよりも、チャンスをくれないことに、もっと怒っていいと思うよ」

 思ってもみなかった言葉に驚いて、思わず高梨室長の顔を見つめてしまう。
 私の瞳を真正面から受け止めた彼がニヤリと笑った。

「雑草男子のこと認めて欲しいって言った時は、ずいぶんとはっきり物が言えたのに。自分のことになるとからきしだめなんだね。でも、まず君が信用されないと、君の主張も信用されないよ。俺はあの時の君のハングリー精神に期待していたんだけれどな」

 え! あの時のこと、ちゃんと覚えていてくれたんだ。それに、怒ってもいなかったんだわ。

 そう思ったら、ふわっと体の力が抜けたの。
 私、今初めて、ここに居ていいんだって思えた気がする……

 この職場に来てから、ずっと落ち着かない気持ちでいたの。居場所が無いって思って。
 でも、高梨室長は、何もかもわかっていて私を採用してくれたんだ。そう思ったらすーって気持ちが落ち着いたの。
 
 私にだって、私にしかできない役割があるはず!


「あ、ありがとうございます。わかりました! もう一度チャンスをください。がんばります」
「それでこそ、雑草男子推しだね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...