私の推しは雑草男子

Step2 胡蝶蘭男子の部下になりました

ツクシ②

　高梨室長は私の言葉に満足したように頷くとさっさと立ち上がった。

「じゃ、期待しているよ」
「はい」
　
　私が深く御辞儀をしている間にさっさと部屋を出て行ってしまった。
　ちょっと拍子抜けするくらいあっさりで、寂しい気持ちが霞めたけれど……

　あ、でも、一緒に会議室から出るところを見られるのは危険だものね。ちゃんと気を付けていらっしゃるんだわ。

　自分の心の中の声が、急に敬語になっていて思わず笑ってしまった。
　ゲンキンな自分にちょっと呆れてしまう。

　でも、甘やかされた坊ちゃんで、何の苦労も無い胡蝶蘭男子だと思っていた高梨室長が、実はとても話の分かる人で、本当はものすごく努力の人なのかもしれない。
　そんな風に思ったんだ。
　自分の方が偏見に満ちた見方をしていたんだと反省。
　
　これからは、もっとちゃんと周りの人のことを良く見なくちゃ。

　今までは自信が無くて、下を向いてばかりいて……ちゃんと見る勇気が無かったんだよね。

　心の中に灯った光を胸に部屋から外へ出れば、何の変哲も無い廊下が新しい世界のように見えるから不思議。

　
　ちょうど週末でもあったから、真山さんからいただいた課題に一生懸命取り組んだの。
　ダメ元で、なんでも意見をまとめて言ってみる。それしか、認めてもらえる方法なんて無いのよね。

　『ハキダメギク』の不屈の精神よ。
　と思いながら『ひなたぼっこ』さんを覗いて見たら、あった！

　新しい写真。

　―――ツクシ。いつの間にか土手にニョキニョキ生えていた。
　花言葉は『向上心』『努力』『意外』『驚き』。まあ、このすっとした立姿を見るとなんとなくわかるような気がする。
　頑張る人を見ていると、自分もがんばろうと思えるから不思議―――

　思わず携帯画面にキスしたくなってしまったわ。
　このタイミングで、なんて素敵な言葉！

　今日、私が頑張ろうって思ったら、『ひなたぼっこ』さんもがんばろうって思っていたなんて。
　なんて素敵なシンクロなのかしら。

　一人で勝手に舞い上がってしまったわ。

　しかも、誰かの頑張る姿を見て、頑張ろうって思えたなんて……

　そうだよね。頑張る姿って、元気をもらえるよね。
　だったら私も、頑張る姿を見せられる人になろう。
　例え成果は小さくてもね。気にしないで進もう。

　それにしても……ニョキニョキって、可愛すぎる！