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Step6 胡蝶蘭男子と約束しました
スズメノエンドウ④
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「その通りだな。怜、お前が怒るのは当然のことだ。本当にすまなかった」
「怜、私が浅はかだったわ。ごめんなさい」
ご両親そろって頭を下げられて、怜さんは怒りの矛先を向ける先が無くなったようだった。拳を強く握り締めて、自らの膝をガツッと一回叩いた。
その姿があまりにも痛々しくて、私は思わず握る手に力を籠める。
怜さんが直ぐに反応してくれた。伝わってくる強い意志。
この手だけは絶対離さない。そう言っているようで嬉しかった。
「明香里がお前に危害を加えるとは思わなかったから、呑気に考えてしまっていたんだ。だが、その矛先が水樹さんに向かってしまったのは、本当に申し訳なく思っている」
社長が私にも頭を深く下げた。
「怜のことを支えてくださって、本当にありがとうございました」
怜さんのお母さんも一緒に頭を下げてくれたの。
想像していたようなご両親では無かった。ううん。きっと怜さんもご両親がこんなに優しい方たちだったってこと、今初めて知ったんだろうな。
きっととても混乱しているはず。
「いえ、そんな。私は怜さんが好きで、だから怜さんと一緒にいられるようにがんばろうって思っただけなんです」
「あの時の私たちに、そんな純粋な気持ちがあったら、今こんなことにはなっていなかったかもしれないな」
「いいえ、あの時のあなたに選択肢は残っていなかったはず。あなたは会社のことを一番に考えて自分を犠牲にされたんです。でも、私は違った。勝手に子どもを産んで、勝手に預けて……身勝手だったんです。その付けを、怜が一方的に払うことになってしまった。怜の苦労は私のせいです」
「いや、それは違うだろう。別れた時、君は怜がお腹にいることを知らなかった。気づいた時にはまだ中絶だってできたはずなのにそれをしなかったのは、怜が大切だったからだろう。怜を私に預けたのだって、怜の為を思って」
互いを責めずに思いやっている二人が、今も愛し合っていることは会話から伝わってくる。それなのに、一緒にいられなかったんだ……。悲しいな。
「二人とも。俺の前で互いに庇いあうのは止めてくれ。俺からしたら、二人とも酷い。自分たちで勝手に俺の人生を決めやがって。そのせいで俺がどれほど寂しい思いをしたか。どれほど辛い思いをしたかなんて。そんなの今更知ったようなこと言われても遅いんだよ」
社長と真美さんが、怜さんを見つめた。そして、その通りだと頷いた。
「だから、俺は同じ轍は踏みたくない。頼む。水樹さんと結婚すること、認めて欲しい。俺には彼女しかいないんだ」
そう言って頭を下げた。私も慌てて一緒に頭を下げる。
「二人の気持ちは分かった。もちろん私も真美さんも応援している。だから、明香里の強硬手段に備えて、銀行の融資を断る準備をしていたんだ。いざとなったら、明香里とも縁を切る覚悟だ」
「父さん……」
「会社のことは、心配しなくていい。私の目の黒いうちは、なんとかするから。だから、お前はお前の理想に向かって、水樹さんと計画をたてなさい。それを、私たちも応援するから」
思いがけない言葉に、怜さんの体から力が抜けた。
良かった―――
「怜、私が浅はかだったわ。ごめんなさい」
ご両親そろって頭を下げられて、怜さんは怒りの矛先を向ける先が無くなったようだった。拳を強く握り締めて、自らの膝をガツッと一回叩いた。
その姿があまりにも痛々しくて、私は思わず握る手に力を籠める。
怜さんが直ぐに反応してくれた。伝わってくる強い意志。
この手だけは絶対離さない。そう言っているようで嬉しかった。
「明香里がお前に危害を加えるとは思わなかったから、呑気に考えてしまっていたんだ。だが、その矛先が水樹さんに向かってしまったのは、本当に申し訳なく思っている」
社長が私にも頭を深く下げた。
「怜のことを支えてくださって、本当にありがとうございました」
怜さんのお母さんも一緒に頭を下げてくれたの。
想像していたようなご両親では無かった。ううん。きっと怜さんもご両親がこんなに優しい方たちだったってこと、今初めて知ったんだろうな。
きっととても混乱しているはず。
「いえ、そんな。私は怜さんが好きで、だから怜さんと一緒にいられるようにがんばろうって思っただけなんです」
「あの時の私たちに、そんな純粋な気持ちがあったら、今こんなことにはなっていなかったかもしれないな」
「いいえ、あの時のあなたに選択肢は残っていなかったはず。あなたは会社のことを一番に考えて自分を犠牲にされたんです。でも、私は違った。勝手に子どもを産んで、勝手に預けて……身勝手だったんです。その付けを、怜が一方的に払うことになってしまった。怜の苦労は私のせいです」
「いや、それは違うだろう。別れた時、君は怜がお腹にいることを知らなかった。気づいた時にはまだ中絶だってできたはずなのにそれをしなかったのは、怜が大切だったからだろう。怜を私に預けたのだって、怜の為を思って」
互いを責めずに思いやっている二人が、今も愛し合っていることは会話から伝わってくる。それなのに、一緒にいられなかったんだ……。悲しいな。
「二人とも。俺の前で互いに庇いあうのは止めてくれ。俺からしたら、二人とも酷い。自分たちで勝手に俺の人生を決めやがって。そのせいで俺がどれほど寂しい思いをしたか。どれほど辛い思いをしたかなんて。そんなの今更知ったようなこと言われても遅いんだよ」
社長と真美さんが、怜さんを見つめた。そして、その通りだと頷いた。
「だから、俺は同じ轍は踏みたくない。頼む。水樹さんと結婚すること、認めて欲しい。俺には彼女しかいないんだ」
そう言って頭を下げた。私も慌てて一緒に頭を下げる。
「二人の気持ちは分かった。もちろん私も真美さんも応援している。だから、明香里の強硬手段に備えて、銀行の融資を断る準備をしていたんだ。いざとなったら、明香里とも縁を切る覚悟だ」
「父さん……」
「会社のことは、心配しなくていい。私の目の黒いうちは、なんとかするから。だから、お前はお前の理想に向かって、水樹さんと計画をたてなさい。それを、私たちも応援するから」
思いがけない言葉に、怜さんの体から力が抜けた。
良かった―――
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