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第3話 魔法披露会
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今日は一日、演武場で魔法披露会が開かれることになっている。
この学園、表向きは紳士淑女の魔法学園となっているけれど、目的は人族と魔族のお見合い。
なので、互いの特技を披露して、交流しやすくするのが今日の授業の狙いらしい。
と言っても、全員が披露するわけでは無くて、一部の、強力な魔力をお持ちの方々だけが指名されるはずだから、私は関係ないのだけれど。
「お姉様、今日はいっぱい魔力をくださいね」
朝からご機嫌のリーズが押しかけてきた。
「リーズはどんな魔法を披露するの?」
「それはもちろん、癒しの魔法よ。男性方は対戦形式で攻撃魔法を披露される方も多いみたいなの。だから、怪我された方全員を治療して差し上げるわ」
「それは良いわね。じゃあ、今ある魔力を全部あげるわね」
「うふふ。やっぱりフェリスお姉様は優しい」
こんな時ばかり、私を褒めてくるリーズはちょっと憎らしいけれど、今日は皆さんのために頑張ると言っているのだから、私も純粋に応援したいと思ったの。
両手を合わせて、ありったけの魔力を送り込んだ。
「ありがとう。お姉様」
演武場では、次々に色々な魔法が披露されていく。
植物魔法で演武場の壁いっぱいに緑の蔦を絡ませたり、音の魔法で一人で五重奏を奏でたり、みんな素敵な魔法を持っていて羨ましい。
アルドール様の妹姫のサーヤ様はちょっといたずらが過ぎて、土の魔法で出現させた砂の迷路に皆を閉じ込めて楽しんでいらしたけれど。
でもやっぱり、本日一番の盛り上がりを見せたのは、人族の王子レオン様と、魔族の王子アルドール様の魔法対戦だった。
火の魔法を操るレオン様が、アルドール様に強烈な火力砲を打たれた時は驚いたけれど、水魔法のアルドール様が分厚い水の盾で全て防がれて素晴らしかったわ。
でも、何よりも素敵だったのは、水の盾が火力砲で熱せられて水蒸気となって霧散して、それに日の光が当たってきらきらと反射した光景。
とても綺麗だったの!
なんだか戦いというよりは、息の合ったショーを見ているみたいだった―――
うふふ。
レオン様とアルドール様って、実は仲が良いのじゃないかしら。
だって、とっても息がぴったりなんですもの。
魔法対戦が光の舞になって、当然お二人は怪我することなく、決着がつくこともなく。
時間になって対戦は引き分けで終わりになった。
良かったわ……
と思ってないのがリーズだった。
彼女の中では、お二人共に怪我をされて自分が颯爽と治療すると言うイメージが出来上がっていたのね、きっと。
他の対戦の方々を治療して、鼻高々だったのに、今回は出番無し。
しばらく爪を噛んでいたけれど、何やら良いことを思いついた顔で司会の先生のところへ駆けていったのが見えた。
「えー、次の魔法対戦は姉妹対決です。リーズ・ロエベール嬢とフェリス・ロエベール嬢。演武場の中へどうぞ」
えっ!!?
青天の霹靂とも言うべき事態。
これ、絶対リーズが仕組んだわね。
私は披露できるような魔法の能力は発現して無くて、ただそれなりに魔力量が多いだけの出来損ない。
その上、今朝リーズに魔力を全部あげてしまったから、今はまだそれほど魔力量も溜まっていない状態。
これで対戦って……
私、一方的にやられちゃう。どうしよう!
リーズは癒しの魔法の他にも、水魔法と風魔法が使えるから……やっぱり、棄権しよう。
大急ぎで司会の先生のところへ行こうとしたら、リーズの友人に捕まった。
伯爵令嬢のハリエット嬢とマリナ嬢。
二人に両手を繋がれて演武場の入り口へ連行されてしまったの。
「リーズ、私はこのまま棄権するから」
「駄目よ、お姉様。私の魔法を受けてくださらないと」
「何故こんなことを」
「私は癒せるだけじゃ無くて、戦う強さもあるって証明したいの」
「そんなの必要な」
言いかけた言葉はつむじ風に遮られた。
「きゃっ」
演武場の砂を巻き上げながら、くるくると回る風に巻き込まれて、私はドレスを押さえるので必死。
目が回っちゃう!
慌てて閉じかけた目の隙間から、リーズが水魔法を発動させたのが見えた。
同時に二つの魔法を発動させるのは、とても高度な技。
そっか、リーズはこれが見せたかったんだ……そうして、最後に私を癒して完璧な姿をアピールしたいんだわ。
そう気づいたら、もうどうでも良くなった。
茶番に付き合わせることができるのは、私だけだってわかっているから。
五、四、三……
後少しで水魔法が着弾する―――
と思っていたのに、じゅわっという水蒸気の音。
続けて、ザザッっと鳴って砂嵐が停止した。
「きゃっ」
地面に激突をギリギリのところで免れたのは、飛び込んで来た人影が振り向きざま私を受け止めてくれたから。
「あ、アルドール様っ」
「大丈夫か?」
驚いたことに、アルドール様が演武場に乱入して、リーズの水魔法を火力砲で水蒸気に変えてくださったの。
リーズの集中力が途切れて、風魔法も中断。お陰で砂嵐が止んだけど、私はそのまま落下して……今アルドール様の腕の中。
「アルドール様、何故こんなところに入っていらしたのですか?」
「……」
黙ったままアルドール様がリーズを睨みつける。その鋭い眼差しに慄いた彼女は、慌てて弁明を始めた。
「あ、姉とは打ち合わせ済みです。最後に私の癒しの魔法で回復。そこまでの一連の流れをお見せしたくて」
「お前、馬鹿か」
「は、えっ!?」
リーズが驚きで目を見開いた。
「癒すから傷つけてもいいなんて、二度と思うな!」
「あ……」
リーズの目にみるみる涙が膨らんでいく。
「……ごめんなさい」
「わかればいい」
それだけ言うと、アルドール様は私を地面に下ろしてくださったの。
「Healing!」
そう唱えて私の小さな切り傷を一瞬で癒してくださり……私には何も言わずに歩き去られた。
「あ、あの、ありがとうございます!」
遅れてしまったお礼の言葉には、右手を挙げただけで振り返らなかった。
この学園、表向きは紳士淑女の魔法学園となっているけれど、目的は人族と魔族のお見合い。
なので、互いの特技を披露して、交流しやすくするのが今日の授業の狙いらしい。
と言っても、全員が披露するわけでは無くて、一部の、強力な魔力をお持ちの方々だけが指名されるはずだから、私は関係ないのだけれど。
「お姉様、今日はいっぱい魔力をくださいね」
朝からご機嫌のリーズが押しかけてきた。
「リーズはどんな魔法を披露するの?」
「それはもちろん、癒しの魔法よ。男性方は対戦形式で攻撃魔法を披露される方も多いみたいなの。だから、怪我された方全員を治療して差し上げるわ」
「それは良いわね。じゃあ、今ある魔力を全部あげるわね」
「うふふ。やっぱりフェリスお姉様は優しい」
こんな時ばかり、私を褒めてくるリーズはちょっと憎らしいけれど、今日は皆さんのために頑張ると言っているのだから、私も純粋に応援したいと思ったの。
両手を合わせて、ありったけの魔力を送り込んだ。
「ありがとう。お姉様」
演武場では、次々に色々な魔法が披露されていく。
植物魔法で演武場の壁いっぱいに緑の蔦を絡ませたり、音の魔法で一人で五重奏を奏でたり、みんな素敵な魔法を持っていて羨ましい。
アルドール様の妹姫のサーヤ様はちょっといたずらが過ぎて、土の魔法で出現させた砂の迷路に皆を閉じ込めて楽しんでいらしたけれど。
でもやっぱり、本日一番の盛り上がりを見せたのは、人族の王子レオン様と、魔族の王子アルドール様の魔法対戦だった。
火の魔法を操るレオン様が、アルドール様に強烈な火力砲を打たれた時は驚いたけれど、水魔法のアルドール様が分厚い水の盾で全て防がれて素晴らしかったわ。
でも、何よりも素敵だったのは、水の盾が火力砲で熱せられて水蒸気となって霧散して、それに日の光が当たってきらきらと反射した光景。
とても綺麗だったの!
なんだか戦いというよりは、息の合ったショーを見ているみたいだった―――
うふふ。
レオン様とアルドール様って、実は仲が良いのじゃないかしら。
だって、とっても息がぴったりなんですもの。
魔法対戦が光の舞になって、当然お二人は怪我することなく、決着がつくこともなく。
時間になって対戦は引き分けで終わりになった。
良かったわ……
と思ってないのがリーズだった。
彼女の中では、お二人共に怪我をされて自分が颯爽と治療すると言うイメージが出来上がっていたのね、きっと。
他の対戦の方々を治療して、鼻高々だったのに、今回は出番無し。
しばらく爪を噛んでいたけれど、何やら良いことを思いついた顔で司会の先生のところへ駆けていったのが見えた。
「えー、次の魔法対戦は姉妹対決です。リーズ・ロエベール嬢とフェリス・ロエベール嬢。演武場の中へどうぞ」
えっ!!?
青天の霹靂とも言うべき事態。
これ、絶対リーズが仕組んだわね。
私は披露できるような魔法の能力は発現して無くて、ただそれなりに魔力量が多いだけの出来損ない。
その上、今朝リーズに魔力を全部あげてしまったから、今はまだそれほど魔力量も溜まっていない状態。
これで対戦って……
私、一方的にやられちゃう。どうしよう!
リーズは癒しの魔法の他にも、水魔法と風魔法が使えるから……やっぱり、棄権しよう。
大急ぎで司会の先生のところへ行こうとしたら、リーズの友人に捕まった。
伯爵令嬢のハリエット嬢とマリナ嬢。
二人に両手を繋がれて演武場の入り口へ連行されてしまったの。
「リーズ、私はこのまま棄権するから」
「駄目よ、お姉様。私の魔法を受けてくださらないと」
「何故こんなことを」
「私は癒せるだけじゃ無くて、戦う強さもあるって証明したいの」
「そんなの必要な」
言いかけた言葉はつむじ風に遮られた。
「きゃっ」
演武場の砂を巻き上げながら、くるくると回る風に巻き込まれて、私はドレスを押さえるので必死。
目が回っちゃう!
慌てて閉じかけた目の隙間から、リーズが水魔法を発動させたのが見えた。
同時に二つの魔法を発動させるのは、とても高度な技。
そっか、リーズはこれが見せたかったんだ……そうして、最後に私を癒して完璧な姿をアピールしたいんだわ。
そう気づいたら、もうどうでも良くなった。
茶番に付き合わせることができるのは、私だけだってわかっているから。
五、四、三……
後少しで水魔法が着弾する―――
と思っていたのに、じゅわっという水蒸気の音。
続けて、ザザッっと鳴って砂嵐が停止した。
「きゃっ」
地面に激突をギリギリのところで免れたのは、飛び込んで来た人影が振り向きざま私を受け止めてくれたから。
「あ、アルドール様っ」
「大丈夫か?」
驚いたことに、アルドール様が演武場に乱入して、リーズの水魔法を火力砲で水蒸気に変えてくださったの。
リーズの集中力が途切れて、風魔法も中断。お陰で砂嵐が止んだけど、私はそのまま落下して……今アルドール様の腕の中。
「アルドール様、何故こんなところに入っていらしたのですか?」
「……」
黙ったままアルドール様がリーズを睨みつける。その鋭い眼差しに慄いた彼女は、慌てて弁明を始めた。
「あ、姉とは打ち合わせ済みです。最後に私の癒しの魔法で回復。そこまでの一連の流れをお見せしたくて」
「お前、馬鹿か」
「は、えっ!?」
リーズが驚きで目を見開いた。
「癒すから傷つけてもいいなんて、二度と思うな!」
「あ……」
リーズの目にみるみる涙が膨らんでいく。
「……ごめんなさい」
「わかればいい」
それだけ言うと、アルドール様は私を地面に下ろしてくださったの。
「Healing!」
そう唱えて私の小さな切り傷を一瞬で癒してくださり……私には何も言わずに歩き去られた。
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