7 / 10
第7話 私でも役にたてる
しおりを挟む
ごろりと寝転がったアルドール様。
直ぐに寝入ると思いきや、ごそごそもぞもぞ。
もう一度起き上がって。
「俺のことは」
「アルドール様のこと、ですか?」
「……どう、思う?」
すうぅっと視線を外されて、相変わらず不機嫌な顔をされている。
アルドール様のこと……
「ちょっと口は悪いですけど」
「はあ!?」
「とっても優しくて、何でもできる信頼できる方だなと思っていますよ」
「おぉ、そうか」
ふふ。
必死で無表情を装っていらっしゃるけど、口元が緩んできたわ。
「ふん、そうか。レオンよりも頼りになる男か」
そこまでは言ってないけどね。
「そうですね。いつも助けていただいて、感謝しています」
これは本心だからね。
この学園に入学してから、私がピンチに陥った時、いつも助けてくださったのはアルドール様だから。本当に感謝しているもの。
「そうか」
ぼそりと呟くと、「寝るっ」と言って再び寝転がった。
「おやすみなさい、アルドール様」
「……おやすみ」
今度は直ぐに、すやすやと寝息を立てられた。
良かった。ゆっくりおやすみなさい。
次の日の放課後。
いつものようにアルドール様を待っていたら、見知らぬ男子生徒がやって来たの。
赤毛に琥珀色の瞳。色白で眼鏡の奥の眼差しが知的で……誰かしら?
何も言わずに目の前の席に腰を下ろしてしまった。
初めてお会いしたので名前もわからないけど、今その席に座られてしまったら、アルドール様の寝る場所が無くなってしまうわ。
ううん、それより何より、放課後アルドール様がここに来ていることがバレてしまう!
「あの、ごめんなさい。この席は先約が」
「俺だ」
「えっ?」
「俺だよ」
「俺って、どこの俺様ですか?」
堪えきれないように、ぶはっと笑い出した目の前の男子生徒。「どこの俺様って」と言いながら、またぷはっと笑い出す。
しまいには涙まで流して。
なんか失礼しちゃうわ。
でも、私は気がきじゃ無くて。
「あの、退いてもらえませんか」
言葉を選んでる余裕がなくなっちゃった。
そんな私をぴたりと見据えた赤毛野郎様の姿が、ゆらゆら変化していく。
すっと眼鏡を外したら。
あれ、アルドール様だ!?
「変身術ですか」
「ああ」
「凄いっ」
もう、焦って損した……
驚きの後にきたのは不満。
つい、非難の色が出てしまったみたい。
「悪い、そんな顔するなよ」
「……秘密がバレたらと思って、焦ったんですよ」
「焦らせてごめん。でも、拗ねた顔もいいな」
「なっ」
「それに、必死な顔も」
「もう、知りません」
くくくっともう一度。
アルドール様が笑い出した。
もう、本当に……楽しそうで良かった。
「フェリス、驚かせて悪かったな」
「もういいです。それより、こんな風に変身できるんでしたら、ここへ来る時いつも変身してからいらしたらどうですか?」
思わず提案してみたのだけど。
「そうしたいんだけどさ、変身術って魔力消費量がでかいんだよな」
ああ、確かに。
普通の魔法より、状態を維持する時間が長いから、何気に魔力を使うのよね。
あ、でもそれだったら―――
私でもお役に立てるかもしれない!
「あの、もしよろしければ、私の魔力を差し上げます」
「フェリス……いや、それは」
なんて遠慮されるから、さっさと両手を掴んで手の平を合わせたの。
「いきますよ」
心を込めて。
私からアルドール様への感謝の気持ち。
合わせた手の平が熱を持つ。
アルドール様の顔がどんどん赤味を増していって……あれ、大丈夫かしら?
「フェリス、これ以上は」
「は、はい。しんどかったですか?」
「いや……ちょっと心臓に負荷が」
「えっ、それは大変っ」
思わず、本当に無意識に。
熱を測ろうとアルドール様のおでこに伸ばした手が、ガシッと遮られた。
「あ、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だから」
私ったら、なんてことを!
魔力供給なんて言いながら、王族の身体に勝手に触れてしまったなんて、罰されても仕方ないわ。
しゅんとして青ざめた私を見て、アルドール様がはあっとため息を吐かれた。
「あー、別に俺はお前に触れられても怒りはしないぞ。ただ、ちょっと心臓に悪いというか」
それって、もっと悪いのでは!?
「申し訳ございません」
「謝る必要は無いが、一気に長時間は難しいな」
ああ、恥ずかしいわ。
アルドール様にはいつも助けていただいてばかりだから……つい、こんな私でも恩返しができるかもしれないなんて、思い上がってしまったの。
「あの、アルドール様」
「だから、少しずつ慣らそう」
「えっ」
「いや、フェリスが嫌なら無理にとは」
「よろしいんですか!」
「ああ」
「良かったぁ」
ほっとしたら、なんだか涙が出そうになっちゃった。
そんな私を見て、アルドール様の瞳が柔らかくなる。
「お前は本当にお人好しだな」
アルドール様はいつもそう仰ってくださる。
でも……違うわ。
私だって、誰にでも魔力をあげたいなんて思わないもの。
妹のリーズには義務感から。
アルドール様へは感謝の気持ちから。
そう思っていたけど、本当は……
私が差し上げたいんだわ!
「そんなことはありません。アルドール様だからです」
次の瞬間、アルドール様がぐはっとのけぞって白目を向かれた。
不味い!?
また私、何かやらかしたみたい。
「寝るっ」
「えっ、大丈夫ですか?」
「ああ、もう、大丈夫だから。ちゃんと見張っていろよ」
「はいっ」
「ふん」
さっさと壁と同化されてしまった。
「おやすみなさい。良い夢を」
「……おやすみ」
直ぐに寝入ると思いきや、ごそごそもぞもぞ。
もう一度起き上がって。
「俺のことは」
「アルドール様のこと、ですか?」
「……どう、思う?」
すうぅっと視線を外されて、相変わらず不機嫌な顔をされている。
アルドール様のこと……
「ちょっと口は悪いですけど」
「はあ!?」
「とっても優しくて、何でもできる信頼できる方だなと思っていますよ」
「おぉ、そうか」
ふふ。
必死で無表情を装っていらっしゃるけど、口元が緩んできたわ。
「ふん、そうか。レオンよりも頼りになる男か」
そこまでは言ってないけどね。
「そうですね。いつも助けていただいて、感謝しています」
これは本心だからね。
この学園に入学してから、私がピンチに陥った時、いつも助けてくださったのはアルドール様だから。本当に感謝しているもの。
「そうか」
ぼそりと呟くと、「寝るっ」と言って再び寝転がった。
「おやすみなさい、アルドール様」
「……おやすみ」
今度は直ぐに、すやすやと寝息を立てられた。
良かった。ゆっくりおやすみなさい。
次の日の放課後。
いつものようにアルドール様を待っていたら、見知らぬ男子生徒がやって来たの。
赤毛に琥珀色の瞳。色白で眼鏡の奥の眼差しが知的で……誰かしら?
何も言わずに目の前の席に腰を下ろしてしまった。
初めてお会いしたので名前もわからないけど、今その席に座られてしまったら、アルドール様の寝る場所が無くなってしまうわ。
ううん、それより何より、放課後アルドール様がここに来ていることがバレてしまう!
「あの、ごめんなさい。この席は先約が」
「俺だ」
「えっ?」
「俺だよ」
「俺って、どこの俺様ですか?」
堪えきれないように、ぶはっと笑い出した目の前の男子生徒。「どこの俺様って」と言いながら、またぷはっと笑い出す。
しまいには涙まで流して。
なんか失礼しちゃうわ。
でも、私は気がきじゃ無くて。
「あの、退いてもらえませんか」
言葉を選んでる余裕がなくなっちゃった。
そんな私をぴたりと見据えた赤毛野郎様の姿が、ゆらゆら変化していく。
すっと眼鏡を外したら。
あれ、アルドール様だ!?
「変身術ですか」
「ああ」
「凄いっ」
もう、焦って損した……
驚きの後にきたのは不満。
つい、非難の色が出てしまったみたい。
「悪い、そんな顔するなよ」
「……秘密がバレたらと思って、焦ったんですよ」
「焦らせてごめん。でも、拗ねた顔もいいな」
「なっ」
「それに、必死な顔も」
「もう、知りません」
くくくっともう一度。
アルドール様が笑い出した。
もう、本当に……楽しそうで良かった。
「フェリス、驚かせて悪かったな」
「もういいです。それより、こんな風に変身できるんでしたら、ここへ来る時いつも変身してからいらしたらどうですか?」
思わず提案してみたのだけど。
「そうしたいんだけどさ、変身術って魔力消費量がでかいんだよな」
ああ、確かに。
普通の魔法より、状態を維持する時間が長いから、何気に魔力を使うのよね。
あ、でもそれだったら―――
私でもお役に立てるかもしれない!
「あの、もしよろしければ、私の魔力を差し上げます」
「フェリス……いや、それは」
なんて遠慮されるから、さっさと両手を掴んで手の平を合わせたの。
「いきますよ」
心を込めて。
私からアルドール様への感謝の気持ち。
合わせた手の平が熱を持つ。
アルドール様の顔がどんどん赤味を増していって……あれ、大丈夫かしら?
「フェリス、これ以上は」
「は、はい。しんどかったですか?」
「いや……ちょっと心臓に負荷が」
「えっ、それは大変っ」
思わず、本当に無意識に。
熱を測ろうとアルドール様のおでこに伸ばした手が、ガシッと遮られた。
「あ、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だから」
私ったら、なんてことを!
魔力供給なんて言いながら、王族の身体に勝手に触れてしまったなんて、罰されても仕方ないわ。
しゅんとして青ざめた私を見て、アルドール様がはあっとため息を吐かれた。
「あー、別に俺はお前に触れられても怒りはしないぞ。ただ、ちょっと心臓に悪いというか」
それって、もっと悪いのでは!?
「申し訳ございません」
「謝る必要は無いが、一気に長時間は難しいな」
ああ、恥ずかしいわ。
アルドール様にはいつも助けていただいてばかりだから……つい、こんな私でも恩返しができるかもしれないなんて、思い上がってしまったの。
「あの、アルドール様」
「だから、少しずつ慣らそう」
「えっ」
「いや、フェリスが嫌なら無理にとは」
「よろしいんですか!」
「ああ」
「良かったぁ」
ほっとしたら、なんだか涙が出そうになっちゃった。
そんな私を見て、アルドール様の瞳が柔らかくなる。
「お前は本当にお人好しだな」
アルドール様はいつもそう仰ってくださる。
でも……違うわ。
私だって、誰にでも魔力をあげたいなんて思わないもの。
妹のリーズには義務感から。
アルドール様へは感謝の気持ちから。
そう思っていたけど、本当は……
私が差し上げたいんだわ!
「そんなことはありません。アルドール様だからです」
次の瞬間、アルドール様がぐはっとのけぞって白目を向かれた。
不味い!?
また私、何かやらかしたみたい。
「寝るっ」
「えっ、大丈夫ですか?」
「ああ、もう、大丈夫だから。ちゃんと見張っていろよ」
「はいっ」
「ふん」
さっさと壁と同化されてしまった。
「おやすみなさい。良い夢を」
「……おやすみ」
0
あなたにおすすめの小説
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる