未来の魔王は図書館の片隅で愛を育む

涼月

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第7話 私でも役にたてる

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 ごろりと寝転がったアルドール様。
 直ぐに寝入ると思いきや、ごそごそもぞもぞ。

 もう一度起き上がって。

「俺のことは」
「アルドール様のこと、ですか?」
「……どう、思う?」

 すうぅっと視線を外されて、相変わらず不機嫌な顔をされている。

 アルドール様のこと……

「ちょっと口は悪いですけど」
「はあ!?」
「とっても優しくて、何でもできる信頼できる方だなと思っていますよ」
「おぉ、そうか」

 ふふ。
 必死で無表情を装っていらっしゃるけど、口元が緩んできたわ。

「ふん、そうか。レオンよりも頼りになる男か」

 そこまでは言ってないけどね。

「そうですね。いつも助けていただいて、感謝しています」

 これは本心だからね。
 この学園に入学してから、私がピンチに陥った時、いつも助けてくださったのはアルドール様だから。本当に感謝しているもの。

「そうか」

 ぼそりと呟くと、「寝るっ」と言って再び寝転がった。

「おやすみなさい、アルドール様」
「……おやすみ」

 今度は直ぐに、すやすやと寝息を立てられた。
 
 良かった。ゆっくりおやすみなさい。



 次の日の放課後。
 いつものようにアルドール様を待っていたら、見知らぬ男子生徒がやって来たの。

 赤毛に琥珀色の瞳。色白で眼鏡の奥の眼差しが知的で……誰かしら?

 何も言わずに目の前の席に腰を下ろしてしまった。

 初めてお会いしたので名前もわからないけど、今その席に座られてしまったら、アルドール様の寝る場所が無くなってしまうわ。

 ううん、それより何より、放課後アルドール様がここに来ていることがバレてしまう!

「あの、ごめんなさい。この席は先約が」
「俺だ」
「えっ?」
「俺だよ」
「俺って、どこの俺様ですか?」

 堪えきれないように、ぶはっと笑い出した目の前の男子生徒。「どこの俺様って」と言いながら、またぷはっと笑い出す。
 しまいには涙まで流して。

 なんか失礼しちゃうわ。

 でも、私は気がきじゃ無くて。

「あの、退いてもらえませんか」

 言葉を選んでる余裕がなくなっちゃった。

 そんな私をぴたりと見据えた赤毛野郎様の姿が、ゆらゆら変化していく。
 すっと眼鏡を外したら。

 あれ、アルドール様だ!?

「変身術ですか」
「ああ」
「凄いっ」

 もう、焦って損した……

 驚きの後にきたのは不満。
 つい、非難の色が出てしまったみたい。

「悪い、そんな顔するなよ」
「……秘密がバレたらと思って、焦ったんですよ」
「焦らせてごめん。でも、拗ねた顔もいいな」
「なっ」
「それに、必死な顔も」
「もう、知りません」

 くくくっともう一度。
 アルドール様が笑い出した。

 もう、本当に……楽しそうで良かった。

「フェリス、驚かせて悪かったな」
「もういいです。それより、こんな風に変身できるんでしたら、ここへ来る時いつも変身してからいらしたらどうですか?」

 思わず提案してみたのだけど。

「そうしたいんだけどさ、変身術って魔力消費量がでかいんだよな」

 ああ、確かに。
 普通の魔法より、状態を維持する時間が長いから、何気に魔力を使うのよね。

 あ、でもそれだったら―――

 私でもお役に立てるかもしれない!

「あの、もしよろしければ、私の魔力を差し上げます」
「フェリス……いや、それは」

 なんて遠慮されるから、さっさと両手を掴んで手の平を合わせたの。

「いきますよ」

 心を込めて。
 私からアルドール様への感謝の気持ち。

 合わせた手の平が熱を持つ。
 アルドール様の顔がどんどん赤味を増していって……あれ、大丈夫かしら?

「フェリス、これ以上は」
「は、はい。しんどかったですか?」
「いや……ちょっと心臓に負荷が」
「えっ、それは大変っ」

 思わず、本当に無意識に。
 熱を測ろうとアルドール様のおでこに伸ばした手が、ガシッと遮られた。

「あ、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だから」

 私ったら、なんてことを!
 魔力供給なんて言いながら、王族の身体に勝手に触れてしまったなんて、罰されても仕方ないわ。

 しゅんとして青ざめた私を見て、アルドール様がはあっとため息を吐かれた。

「あー、別に俺はお前に触れられても怒りはしないぞ。ただ、ちょっと心臓に悪いというか」

 それって、もっと悪いのでは!?

「申し訳ございません」
「謝る必要は無いが、一気に長時間は難しいな」

 ああ、恥ずかしいわ。

 アルドール様にはいつも助けていただいてばかりだから……つい、こんな私でも恩返しができるかもしれないなんて、思い上がってしまったの。

「あの、アルドール様」
「だから、少しずつ慣らそう」
「えっ」
「いや、フェリスが嫌なら無理にとは」
「よろしいんですか!」
「ああ」
「良かったぁ」

 ほっとしたら、なんだか涙が出そうになっちゃった。

 そんな私を見て、アルドール様の瞳が柔らかくなる。

「お前は本当にお人好しだな」

 アルドール様はいつもそう仰ってくださる。
 でも……違うわ。
 私だって、誰にでも魔力をあげたいなんて思わないもの。

 妹のリーズには義務感から。
 アルドール様へは感謝の気持ちから。

 そう思っていたけど、本当は……

 が差し上げたいんだわ!
 
「そんなことはありません。アルドール様です」

 次の瞬間、アルドール様がぐはっとのけぞって白目を向かれた。

 不味い!?

 また私、何かやらかしたみたい。

「寝るっ」
「えっ、大丈夫ですか?」
「ああ、もう、大丈夫だから。ちゃんと見張っていろよ」
「はいっ」
「ふん」

 さっさと壁と同化されてしまった。

「おやすみなさい。良い夢を」
「……おやすみ」

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