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第8話 目が離せない(アルドールSide)
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人族との見合いのための学園!?
親父から指令を受けた時、俺は物凄く腹が立った。
何を今更!?
ここ、カリスト魔帝国は、元々ヴァンドール王国の一部だったが、三百年ほど前に袂を分かったのだと言われている。
理由は明白だ。
傲慢で排他的な人間どもが、醜いから、危険を感じるからと言う、甚だ身勝手な理由で、おとなしい魔者や魔獣を差別し駆除し始めたから。
かくいう俺も、吸血鬼一族の末裔だ。
当時の吸血鬼狩りで、多くの同胞を失ったと聞いている。
だから、血脈を守るために、ずっと今までは純血種同士での結婚しか許されなかったのに。
いくら停戦協定を結んだからって、差別が無くなるわけがない。
どうせ我らを蔑み、あっという間に協定違反で振り出しに戻るに違いない。
そんな危険があるのに、人族と魔族のお見合いだと!?
親父のお花畑頭ぶりに、怒りの気持ちでいっぱいだったんだ。
でも、続いた親父の言葉には考えさせられた。
このまま純血種交配を重ねていけば、何れ血が濃くなりすぎて『種』の存続が危ぶまれること。
互いに混ざり合い家族になればこそ、差別が難しくなって、何れは種族間の垣根が低くなるだろうという願い。
その先駆けになって欲しいと言われたら、断れなかった。
レオン王子とは、『ソフィア学園』に入学前に話す機会があった。想像していたよりも何倍もいい奴で、こいつとなら上手くやっていけそうだと思ったんだよな。
そして気付いた。
ああ、彼の父親と親父も、きっとこんな気持ちになったから、停戦協定&見合い学園設立、なんてとんでもアイデアが締結されたんだろうなと。
まあ、でも、実際に入学したら地獄だった―――
毎日毎日、黄色い声に追いかけられる。
昼夜問わずの待ち伏せ、プレゼント攻撃に甘ったるい声音、あざとい視線。
特に、聖女とか名乗る女は最悪だった。
どこが聖女だっ。
ちやほやされないと気に入らない自己中人間!
はぁ~
挙げ句に喧嘩や足の引っ張り合いまで見せられたら……人族不信に拍車がかかってしまった。
疲れて逃げ出した図書館で、聖女の姉と遭遇したと知った瞬間は、絶望すら感じたよ。
でもこの姉、全然妹と似ていない。
見た目もそうだが、中身はまるっきり正反対。
まず、俺を見てもキャーキャー言わない。
流し目も舌足らずな話し方もしない。
口数は多くない。寧ろみんなの陰に隠れて、静かに目立たず、本だけ読んでいたいって感じ。
でも、全然暗い感じは無くて、真っ直ぐに目を見て話すし、俺の昼寝時間を死守しようと気を配ってくれて優しい。
妹にいいように使われても文句を言わない忍耐強さ、思慮深さを見せる一方で、サーヤの計略にまんまとハマる迂闊さと人を疑わない超がつくお人好し。
かと思えば、落とし穴で居眠りする豪胆さ。サーヤと想い人を引き合わせる行動力。
会う度に、くるくるといろんな魅力を見せてくれて、なんだか目が離せないんだよな。
いや、危なっかしくて見ていられないの間違いか?
でも、レオンと親しげに話しているのは、物凄く嫌だった。
居ても立ってもいられない。
今直ぐにでも駆け寄って、二人を引き剥がしてしまいたい。
えっ!?
なんで俺、こんなことを思ったんだ?
レオンはいいやつだって分かっているから。もしかしたら、フェリスもレオンが好きになってしまうかもしれない……
でも、問題ないよな。
サーヤはレオンじゃなくてヴィルヘルムが好きだし。
ああ、そうか。
昼寝の見張り役が来なくなったら困るからだ。
そりゃ、困る。
放課後はレオンとデートだからもう来ません、なんて言われたらどうすりゃいいんだ?
よし、ちゃんと直接確認しておこう。
やっぱり聞いて良かった。
当面の間、見張り役の交代は必要なさそうだな。
安心したのも束の間……魔力供給って!?
フェリスが軽い気持ちでやったのは分かっている。
うん、そうだ。
単なる、礼ってところだな。
でもさ、魔族にとって、特に吸血鬼にとって魔力供給は、愛の証明なんだよ!
そう、普通は首筋のキス。
互いに魔力を与え与えられることで愛を伝え合う。
今回は手の平だったけど……なんだかドキドキと心臓が煩くて、頭もぼうっとして彼女の唇にばかり目がいってしまって。
なんとかギリギリのところで踏ん張ったけど、ちょっと乱雑に手を掴んで拒んでしまった。
その時見せた、彼女の悲しそうな顔が忘れられない。
きっと彼女は今まで、魔力供給しか能が無いとか、出来損ないの娘とか言われてきたんだろう。
だから、俺に魔力を差し出すことで、自分も役に立てると、自分で自分に示したかったのかもしれない。
ふうぅ~
彼女の気持ちが救われるなら。
平常心を保てるかわかんないけど。
『少しずつ慣らそう』
と提案した時のフェリスの笑顔。
可愛かったな……
それに!
『アルドール様だからです』
俺だから……
それって、単なる感謝以上の気持ちってこと、だよな!?
俺の心臓が、再びぎゅっと掴まれてしまった。
痛い。
でも、嬉しい。
ああ、昼寝の時間のはずなのに。
俺はこの先、ゆっくり眠れるのだろうか?
親父から指令を受けた時、俺は物凄く腹が立った。
何を今更!?
ここ、カリスト魔帝国は、元々ヴァンドール王国の一部だったが、三百年ほど前に袂を分かったのだと言われている。
理由は明白だ。
傲慢で排他的な人間どもが、醜いから、危険を感じるからと言う、甚だ身勝手な理由で、おとなしい魔者や魔獣を差別し駆除し始めたから。
かくいう俺も、吸血鬼一族の末裔だ。
当時の吸血鬼狩りで、多くの同胞を失ったと聞いている。
だから、血脈を守るために、ずっと今までは純血種同士での結婚しか許されなかったのに。
いくら停戦協定を結んだからって、差別が無くなるわけがない。
どうせ我らを蔑み、あっという間に協定違反で振り出しに戻るに違いない。
そんな危険があるのに、人族と魔族のお見合いだと!?
親父のお花畑頭ぶりに、怒りの気持ちでいっぱいだったんだ。
でも、続いた親父の言葉には考えさせられた。
このまま純血種交配を重ねていけば、何れ血が濃くなりすぎて『種』の存続が危ぶまれること。
互いに混ざり合い家族になればこそ、差別が難しくなって、何れは種族間の垣根が低くなるだろうという願い。
その先駆けになって欲しいと言われたら、断れなかった。
レオン王子とは、『ソフィア学園』に入学前に話す機会があった。想像していたよりも何倍もいい奴で、こいつとなら上手くやっていけそうだと思ったんだよな。
そして気付いた。
ああ、彼の父親と親父も、きっとこんな気持ちになったから、停戦協定&見合い学園設立、なんてとんでもアイデアが締結されたんだろうなと。
まあ、でも、実際に入学したら地獄だった―――
毎日毎日、黄色い声に追いかけられる。
昼夜問わずの待ち伏せ、プレゼント攻撃に甘ったるい声音、あざとい視線。
特に、聖女とか名乗る女は最悪だった。
どこが聖女だっ。
ちやほやされないと気に入らない自己中人間!
はぁ~
挙げ句に喧嘩や足の引っ張り合いまで見せられたら……人族不信に拍車がかかってしまった。
疲れて逃げ出した図書館で、聖女の姉と遭遇したと知った瞬間は、絶望すら感じたよ。
でもこの姉、全然妹と似ていない。
見た目もそうだが、中身はまるっきり正反対。
まず、俺を見てもキャーキャー言わない。
流し目も舌足らずな話し方もしない。
口数は多くない。寧ろみんなの陰に隠れて、静かに目立たず、本だけ読んでいたいって感じ。
でも、全然暗い感じは無くて、真っ直ぐに目を見て話すし、俺の昼寝時間を死守しようと気を配ってくれて優しい。
妹にいいように使われても文句を言わない忍耐強さ、思慮深さを見せる一方で、サーヤの計略にまんまとハマる迂闊さと人を疑わない超がつくお人好し。
かと思えば、落とし穴で居眠りする豪胆さ。サーヤと想い人を引き合わせる行動力。
会う度に、くるくるといろんな魅力を見せてくれて、なんだか目が離せないんだよな。
いや、危なっかしくて見ていられないの間違いか?
でも、レオンと親しげに話しているのは、物凄く嫌だった。
居ても立ってもいられない。
今直ぐにでも駆け寄って、二人を引き剥がしてしまいたい。
えっ!?
なんで俺、こんなことを思ったんだ?
レオンはいいやつだって分かっているから。もしかしたら、フェリスもレオンが好きになってしまうかもしれない……
でも、問題ないよな。
サーヤはレオンじゃなくてヴィルヘルムが好きだし。
ああ、そうか。
昼寝の見張り役が来なくなったら困るからだ。
そりゃ、困る。
放課後はレオンとデートだからもう来ません、なんて言われたらどうすりゃいいんだ?
よし、ちゃんと直接確認しておこう。
やっぱり聞いて良かった。
当面の間、見張り役の交代は必要なさそうだな。
安心したのも束の間……魔力供給って!?
フェリスが軽い気持ちでやったのは分かっている。
うん、そうだ。
単なる、礼ってところだな。
でもさ、魔族にとって、特に吸血鬼にとって魔力供給は、愛の証明なんだよ!
そう、普通は首筋のキス。
互いに魔力を与え与えられることで愛を伝え合う。
今回は手の平だったけど……なんだかドキドキと心臓が煩くて、頭もぼうっとして彼女の唇にばかり目がいってしまって。
なんとかギリギリのところで踏ん張ったけど、ちょっと乱雑に手を掴んで拒んでしまった。
その時見せた、彼女の悲しそうな顔が忘れられない。
きっと彼女は今まで、魔力供給しか能が無いとか、出来損ないの娘とか言われてきたんだろう。
だから、俺に魔力を差し出すことで、自分も役に立てると、自分で自分に示したかったのかもしれない。
ふうぅ~
彼女の気持ちが救われるなら。
平常心を保てるかわかんないけど。
『少しずつ慣らそう』
と提案した時のフェリスの笑顔。
可愛かったな……
それに!
『アルドール様だからです』
俺だから……
それって、単なる感謝以上の気持ちってこと、だよな!?
俺の心臓が、再びぎゅっと掴まれてしまった。
痛い。
でも、嬉しい。
ああ、昼寝の時間のはずなのに。
俺はこの先、ゆっくり眠れるのだろうか?
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