黒猫ふぅの徒然日記

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玄太はきっちりした仕事をする。

しかも仕事が早い、信頼に値する奴だ。


宵闇が頼んだ事は、その日の夕方には報告が上がった。

襲われた童は上野泉の守の落とし胤

上野泉の守の正妃にも側室にも子供はいたが

全て女子だった。




上野泉の守が正妃を娶る前の事だ。

先の戦で負傷し、傷の養生にと1ヶ月ほど

御忍びで身分を隠し、世話になった片田舎の秘湯温泉宿

そこにいた店子として働いていた女といい関係になった。

しかし、上野泉の守は傷が癒えれば城へと帰らなければならない。

女に別れを告げ、せめてもの情けにと

自ら恋慕の和歌をしたためた扇子を手渡した。

女はその時、赤子を身ごもった。

男の身分も正体すら知らずにいたが

女は男がいつか迎えに来てくれる。

そう信じ、身ごもった子供を産み落とし1人で育てた。





男は城で周りに勧められるまま婚姻を結び女を忘れた。

時は流れその時の子は10歳になった。

上野泉の守の実母が体調崩した。

養生するならと、あの時の温泉宿が良かったと思い出し

実母を連れ宿に行くと、10年の時を経てもなお男を信じ続け

変わらず待っていた女と、その元に10歳になる童

見れば見るほど若かかりし頃の自分に似ている。

上野泉の守は涙ながらに喜び

そのまま童を跡目にするべく側室に迎え入れた。



それを気に入らなかったのは正妃と他の側室だ。

何処の馬の骨ともわからない温泉宿の女が

上野泉の守の寵愛を受け男子を産んだ。

なんとか貶めてやろうと画策した。

女と童が少人数のお供を連れ、神社へ祈願に行く事を知ると

正妃は動いた。

山賊のせいに見せかけ女と童を亡き者にしようとしたのだ。

女は従者と共に童を守り目の前で殺された。

童はそのまま走り、怒塚山の中へと迷い込んだ。