黒猫ふぅの徒然日記

12

ここまで宵闇からその詳細を聞き天河はため息をついた。

人の世界の政で人同士が傷つけ合う事など些末な事だ。

天河にとって迷い込んだ童の存在など気にも留めない、ただの侵入者。

迷惑なだけで、さっさとこの領域から追い出したかった。


宵闇がどうしても、しばらくここに匿うと言い出した時

気でも触れたのかと声を荒げたくらいだ。



「好きにしろ！」



天河は不貞腐れて素知らぬふりを決め込むと言い切った。


しかし、言っては見たものの宵闇が人化し童に話しかけ

祠に連れ込み色々話し込み。

宵闇が甲斐甲斐しく世話をやき始めると

結局気になって仕方ない天河は

ついに折れ 人化し童を構い始める。



童の名前は大地。

大地は母が無事だったならこのまま、何処かに2人で逃げて

前みたいに静かに暮らしたかった。

お金や身分、権力なんて欲しくなかった。

事を大きくしようとも思わなかった。

ただ、自分に父がいる事が嬉しかっただけ。

それだけなのに…。

どうしてこんな事に…。


大地の思いとは裏腹に事態は変わった。

母は死んだ。追いやった正妃は絶対に許せない。

自分はこのまま死ぬわけにいかない。

例え殺される事になろうとも、

できる事なら城に帰り母を殺した仇を討ちたい。

大地の覚悟が見えた。