奥手の恋ほど、めんどくさいモノはない。

MOKO

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練習試合を中断し

俺は淳也のチームメンバー達を俺達のベンチに呼んだ。

校庭に吹く風は生ぬるく、汗で濡れたシャツが体にまとわりつく

シャツをパタパタと仰ぎながらベンチに座って

薄い笑みを浮かべ、彼女を紹介する。


「こちらの彼女、“サッカー同好会のマネージャー様” の赤城さん。

南ヶ丘サッカー同好会達が僕たちと試合をしたいらしい。

一応僕たちはグラウンドを借りている身だしね。

彼女達の意見も尊重しなきゃいけない…とは言え

僕個人の意見だけど、練習とは言えど本気で試合する訳だし

もし怪我させてしまったらって考えると躊躇する。

だから提案なんだけど、もし南ヶ丘サッカー同好会の有志が

僕達の鬼島式訓練に最後まで付き合えれたら、

試合参加を考えてみても良いんじゃないかって思うんだけど

皆んなどう思う?」



俺は南ヶ丘の同好会の意思を皆んなに丁寧に教え俺の意見を伝えた。

おそらく誰も俺の提案には意見しない…。

淳也以外は…。

しかし今は女子高のグラウンド、ただでさえギャラリーも多い

練習試合を中断させた事で余計に騒ぎ立てられ

周囲から関心と注目を集めている。

「あっ…あなたが部長さんよね!どうかよろしくお願いします。」

赤城さんが淳也に向かって走って行き深々と頭を下げた。

やったね!淳也はヘタレなので女が近づくと言葉が出ないはずだ。

意志の確認のために、淳也とちらっと視線を合わす。

案の定、近過ぎて顔を真っ赤にしながら

口をぱくぱくしながら

助けを求める様に俺の顔を見た。

…っとに残念な奴だ。

何を考えているか、わからないから、この際あいつの意思はスルーしよう。

皆んなの顔を見渡してみる。

クスクスと笑う者や半分呆れた顔をした者

辺りの温度が一気に冷え、多少ざわついた。

思うことは多分俺と同じだろう。

「俺らは良いですけど…。大丈夫ですか?」

「いいんじゃないか?」

「やりたいって言うんなら。」
 
「無理だと思うけど…。」

「うひゃー鬼島式だなんて、副部長は腹黒…。」

口々に言うそれは仕方ない。

最後の一言は荒木だ。よし、覚えておこう。




俺らは本気でプロを目指してこの星稜にいる。

その中でも鬼島と呼ばれる城島コーチの

鬼畜基礎訓練についてこれないでリタイアする奴は毎年少なからずいる。

付け焼き刃では到底ついては来れないと知りつつ提案している俺も

ある意味鬼畜なのかも知れんが

そもそも遊び気分でサッカーしている奴らと

俺達を一緒にされたら、それこそ星稜サッカー部の部員としてのプライドが許さない。

同好会でマネージャーっていう存在がいるのも笑える。

しかも、試合を中断させた。

イラついたので“泣かす” 事を前提に物事を進める。

悟られない様に笑顔で

「とりあえず、淳也がいいなら、今日はもう時間的に無理だから

明日にでも試してみる?」

淳也の方へと回りこみ肩に手に力を込めながら淳也に聞いた。

「おい、淳也いいか?」

「ん?あ…ああぁあ?」

「そう、いいんだって、赤城さん、これでいい?」

女に聞いてみると

「ええ!ありがとう!

練習おじゃましてしまってごめんなさい。」

「じゃ明日ちょうど土曜日だし

朝6時にこのグラウンド集合 弁当、水筒持参いいかな?」

「6時、お弁当と水筒持参!分かりました。

ありがとうございます。」


女は深々と頭を下げて走り去って行った。

そして視界から女が消えた途端、はっとした顔で淳也が俺をみる。

「おい!仮にも女の子なんだ鬼島式は無理なんじゃ…。」

「いいんじゃない? コーチや顧問に言われているんだ。

練習する為にグラウンド借りてる。

遊びに来ている訳でもない、些末ごとで時間を割きたい訳じゃない。

着いて来れなきゃ仕方ないで済ませられる。

顔を立てる為にも、落し所っているだろう?」







ニヤッと笑うと、部員全員が黙り込んだ。
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