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肌に刺す冷えた空気。
朝一の空気は好きだ。
土曜日の朝5時30分
寮の前には、すでに待機している部員達が騒いでいた。
「同好会の子達、訓練 どのくらい持つかなぁ。」
「行程半分くらいがいいとこじゃね?」
「何なら 賭けるか?」
「おっ!いいねぇ。」
おいおい、朝から楽しそうだな 。
俺を含め部員達も、全員が、女子に鬼島式訓練に追て来れるなんて思っていない。
合同練習でも3軍ペースで丁度いいくらいじゃないかと思っているのに
一緒に試合なんて有り得ないだろ。
だからこそ、この鬼島式訓練で同好会の奴らにグラウンドから
早々に退散してもらう様に仕掛けたんだから…。
部員達の気持ち、わかる。
俺だって正直、半分行程に一口かけたい衝動を抑えている。
副部長として彼らに注意をしなければならない立場だ、仕方ない。
俺が注意をしようとする、その前に淳也が吠えた。
「おい!お前ら、コーチや顧問の先生達からも通達があっただろう!
南ヶ丘とは紳士的な態度で付き合う様にと
それだけじゃない!
本気で挑戦しようとしている者を
賭け事の対象にするなんてスポーツマンとしてあり得ん!
お前達だって自分が尊敬する先輩達に同じ様に
自分の本気を賭けの対象にされたらいい気はしないだろ?
星稜サッカー部の一員として内面から恥じない生き方をしろ!」
チッ…。
淳也は誰に対しても本気で相手を想う。
そして小さい事でも本気で向き合う事が出来る奴だ。
俺みたいに打算と建前で生きていない。
この鬼島式訓練の提案だって本当のところ
昨日、試合を途中で中断させて
邪魔したあの女にイラついたので
「泣かす!」事を前提で進めた話だ。
淳也の言わんとしている事こそ星稜の模範的思想
…残念な事に女を前にすると、同じ事が同じ様に言えない
会話を成立させる事もままならない。
淳也はそれさえ無ければ、本当に紳士で、男の中の男だ。
パンパンと手を打ちその場の空気を仕切り直して声を上げる。
「淳也の言う通りだぞ!
それに今日の訓練だって俺達自身の血肉になるんだ。
俺達は俺達で訓練を本気で立ち向かうだけだ。
おらっ!行くぞ!」
「「「「うっす!」」」」
ボヤけていた頭の中が覚めたみたいに引き締まった顔を上げる部員達
南ヶ丘のグラウンドまでランニングで向かった。
チラリと淳也を見る、心なしか緊張しているのがわかる。
何事もなく終わればいいんだが…。
朝一の空気は好きだ。
土曜日の朝5時30分
寮の前には、すでに待機している部員達が騒いでいた。
「同好会の子達、訓練 どのくらい持つかなぁ。」
「行程半分くらいがいいとこじゃね?」
「何なら 賭けるか?」
「おっ!いいねぇ。」
おいおい、朝から楽しそうだな 。
俺を含め部員達も、全員が、女子に鬼島式訓練に追て来れるなんて思っていない。
合同練習でも3軍ペースで丁度いいくらいじゃないかと思っているのに
一緒に試合なんて有り得ないだろ。
だからこそ、この鬼島式訓練で同好会の奴らにグラウンドから
早々に退散してもらう様に仕掛けたんだから…。
部員達の気持ち、わかる。
俺だって正直、半分行程に一口かけたい衝動を抑えている。
副部長として彼らに注意をしなければならない立場だ、仕方ない。
俺が注意をしようとする、その前に淳也が吠えた。
「おい!お前ら、コーチや顧問の先生達からも通達があっただろう!
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それだけじゃない!
本気で挑戦しようとしている者を
賭け事の対象にするなんてスポーツマンとしてあり得ん!
お前達だって自分が尊敬する先輩達に同じ様に
自分の本気を賭けの対象にされたらいい気はしないだろ?
星稜サッカー部の一員として内面から恥じない生き方をしろ!」
チッ…。
淳也は誰に対しても本気で相手を想う。
そして小さい事でも本気で向き合う事が出来る奴だ。
俺みたいに打算と建前で生きていない。
この鬼島式訓練の提案だって本当のところ
昨日、試合を途中で中断させて
邪魔したあの女にイラついたので
「泣かす!」事を前提で進めた話だ。
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…残念な事に女を前にすると、同じ事が同じ様に言えない
会話を成立させる事もままならない。
淳也はそれさえ無ければ、本当に紳士で、男の中の男だ。
パンパンと手を打ちその場の空気を仕切り直して声を上げる。
「淳也の言う通りだぞ!
それに今日の訓練だって俺達自身の血肉になるんだ。
俺達は俺達で訓練を本気で立ち向かうだけだ。
おらっ!行くぞ!」
「「「「うっす!」」」」
ボヤけていた頭の中が覚めたみたいに引き締まった顔を上げる部員達
南ヶ丘のグラウンドまでランニングで向かった。
チラリと淳也を見る、心なしか緊張しているのがわかる。
何事もなく終わればいいんだが…。
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