猫屋敷先輩の怪奇奇譚

MOKO

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「落ち着いた? 落ち着いたんなら
次は僕に何があったのか 
最初から最後までの経緯
詳しく聞きかせてね。」

いつも存在感が無いはずの
先輩の、恐ろしい程の低い声。

何となく感じる怒りのオーラに

僕の心臓は縮み上がった。

吉田の心臓も縮み上がってるはず


…たぶん。




吉田はゴクリと生唾を飲んだ。


気を確かに持て
心の中でさ吉田にエールを送る。


吉田はその身に起こった
奇妙な出来事を
ポツリポツリと話し始めた。





吉田の話





数ヶ月前から野良猫に餌付けしていました。
ほんとはイケない事なんだけど
雨の日に見つけたダンボールの中
か細い声で鳴く
チビ猫達を見た時
衝動を抑えられなかったんです。

家では猫アレルギーの
ばあちゃんいるから飼えないし
仕方ないので
雨が振り込まない
近くにある廃れた神社に運んで
保護する事にしました。

家から自転車だと5分ほどだし
あんまり人こないし
なんか廃れてても神社だし
もしそこに神様がいるなら
猫たちを不憫に思って助けてくれるかもしれない
なんてチラッと思って場所を選びました。


連れ周りに飼える人がいないか打診し
3匹中2匹はなんとか見つかったんですが
真っ黒な猫だけは貰い手がつかなかったので
その猫にクロって俺が名付けました。

慣れて甘えるクロに
このまま飼い主見つからなくて
ずっとここにいて、餌持ってくるのも
良いかなって思いながら
毎日餌を持って
いそいそと神社に通って
餌やりの日課
実は楽しみになってました。

しばらくは癒しタイムを満喫出来ました。

事の発端になった
原因はきっと多分あの日

あれはいつだったっけ?
もう記憶がその辺か曖昧なんですが

夏休み前だったのは確かです。

その日は7月だというのに
曇天のせいか少し肌寒かった様に思います。

当たり前の様に
学校帰り神社に寄ったんですが
いつもは僕が行くと
すぐ寄ってくるクロが
どうした事かその日に限って
呼んでもなかなか出てこない…。
その辺を探していたら
社殿の中から大きな音がしたから
嫌な予感して
覗いてみたら扉が壊れて開いていました。

中でクロか威嚇して暴れてるみたいだったので
例えボロでも社殿の中なんて
荒らすのはバチ辺りだから
クロを早く回収しなければと思ったんです。

だから手を合わせてから
コソッと入ってコソッと
クロを連れ出すつもりでした。

あっ…もちろん靴を脱ぎましたよ!

他に野良猫でも居たのかなと思ったんですが
暗くてあんまりよく見えなかったんですが
クロしかいない様でした。

でも、その日のクロは
なんかいつもより
様子がおかしくて、
名前呼んでも餌をチラつかせても
何かに威嚇して
暴れて走り回ったりして全然来なかったんです。

もしかして僕には見えないけど
蛇かネズミかなんか
いるのかも知れないって思って
毒蛇とか毒虫だとヤバいから
クロを早々に回収しようと思って追いかけてたら
突然、床が抜けて僕、転けたんです。
その時、クロも驚いて何かを倒して
めっちゃ大きな音がして
中央の壁にあった掛け軸を引っかけたんじゃないかな
掛け軸少し破れた音が聞こえた気がしました。

中は暗かったんだけど
最初から掛け軸だけは見えてたんです。

目も暗さに慣れて少し見えてたから
倒れた物と掛け軸はちゃんとかけ直しました。

そうしてる間に
クロが外に出たから
本当はダメな事だと思ったんだけど

近いうちに壊れた箇所は
直しに来ますごめんなさいって
手を合わせて外に出ました。

外に出てクロを呼んだけど
その日クロは全く出て来てくれなくて

お賽銭ちょっと多くして餌だけ置いて
そのまま帰ったんだと思います。

帰り雷が鳴って大雨にも降られて
足も痛くて
びしょ濡れになって
散々な目にあった事だけは
なんとなく覚えてますが
帰り道なんか体調悪くて
頭痛と吐き気が酷くて
靴履いてたのか自転車ちゃんと乗って
帰ったのかすら覚えてなくて 

あとはなんか、もうほぼ記憶なくて…。


気がついたら知らない間に
夏休み入ってて
気がついたら今になってました。
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