オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖

なかじまあゆこ

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泊まりがけの同窓会とオレンジ色

負けない

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  店の中に入るわたしの足は不安に震え歩くのもやっとだった。息が苦しくなるほどの動悸で心臓が痛くなるほどだ。

  どうして、断らなかったのだろうかと後悔したけれど時すでに遅しだ。怖くて恐ろしいけれど、きっと大丈夫なはずだ。

  オレンジ色の提灯を見るとあの夢の中で見た真っ赤に染まった血溜まりとむせるような血の臭いを思い出してしまう。

  でも、あれは夢だしそれにこの店はあの店内とは違う。恐怖で体は今もブルブル震えているけれど、負けてなんかいられない。

  わたしは夢なんかに負けないんだからと拳をギュッと握った。

「いらっしゃいませ~何名様ですか?」

  店員さんの明るい声が聞こえてきた。わたしはその声にホッとする。

「八名です」

  美奈の明るく答える声が聞こえた。

  わたし達は店員さんに席に案内された。


  わたし達は四人掛けのテーブル二つに別れて座った。

 わたしは真由香に松木、それから真夜と同じテーブルに着いた。もう一つのテーブルには、美奈、久野君、佐和にそれから多香子だ。

  店員さんがお水をテーブルに置き「お決まりになりましたらお呼びください」と言ってキッチンに戻って行った。

「お腹が空いたね。何を食べようかな~」

  隣のテーブルに座っている美奈がメニュー表を手に取り言った。

「定食や単品メニューが豊富だね」

  わたしの左隣に座る真由香がメニュー表をめくり目を輝かせている。

「これはめちゃくちゃ迷うよな。唐揚げ定食も食べたいしメンチカツ定食も美味しそうだぜ」

  わたしの目の前に座る松木がメニュー表に目を落とし言った。

  わたしもメニュー表を手に取り眺める。

  確かにメニューは豊富でカキフライ定食、アジフライ定食、野菜炒め定食、塩サバ定食、カツ丼、オムライス、納豆、お味噌汁など豊富だった。

  美味しそうなメニュー表を眺めているとオレンジ色の提灯のことなんて忘れることができそうだ。

  わたしは、わくわくしながらメニュー表に目を落とした。

  何を食べようかなと迷った末ようやく決まった。
「そうだ、みんな大人になったんだからビールも飲もうよ」と美奈が笑顔で言うと、みんなが「賛成~」と言った。

  そして、同窓会メンバー全員の注文メニューが決まり店員さんを呼ぶ。

  わたしは、唐揚げ定食とビールを頼んだ。



  しばらくすると店員さんが料理を運んできた。わたしの目の前に美味しそうな唐揚げ定食とビールジョッキが置かれた。

  みんなの目の前にも料理とビールジョッキが置かれている。

「では、久しぶりの再会に乾杯~」と美奈が乾杯の音頭をとりその合図のあと一同声をそろえて「乾杯~」と言った。

  グラスジョッキがカチーンと良い音を鳴らす。わたしはグラスに口をつけてぐびぐびと飲んだ。みんなもビールをぐびぐびと飲んでいる。

  一気に飲んだビールが喉に流れ込み最高に美味しい。

  ビールを飲んでいるとわたし達は高校生ではないのだなとふと当たり前のことを思った。

   この瞬間はオレンジ色の提灯のことなんてすっかり忘れていた。

  そして、みんなで「いただきます」と言ってお箸を取り料理を食べ始めた。

  唐揚げは柔らかくてジューシーでそれはもう美味しかった。肉汁が口の中に広がりたまらない。

  みんなに視線を向けると幸せそうにご飯を食べている。

  さっきまであんなに恐れていたのに単純なわたしは笑顔になれた。

  オレンジ色の提灯なんてあれはただの夢なんだから気にしないのだ。

  わたしは唐揚げを口に放り込んだ。うん、とても美味しい。

「ねえ、そういえば」

「美奈ちゃん、どうしたんだい?」

  久野君が長めの前髪をさらりとかきあげ尋ねた。
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