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泊まりがけの同窓会とオレンジ色
閉じ込められたら
しおりを挟む閉じ込められてしまう。それだけは嫌だ。もし、電車が動かなかったらどうしよう。雨がザアザアと窓を打ちつける音が聞こえる。
「亜沙美ちゃん」
「あ、うん、雨困ってしまうね。ちょっと雨の様子を見ようかな」
窓を開けて外の様子を見るとザーザーザーザーと土砂降りの雨が降っていた。
「美奈ちゃん、凄い雨だね」
「うん、さっきまで晴れていたのにね」
「天気予報見ていなかったね……」
「うん、明日には晴れているといいんだけどね。帰る前に見たい所もあるもんね」
「……そうだね」
外は大粒の雨が地面を叩きつけるように降っている。この並外れた雨はオレンジ色の提灯キーホルダーの仕業だったりしてなんて考えてしまった。
「亜沙美ちゃん、今日はもう寝ようか」
美奈は大きく伸びをした。
「うん、ねえ、美奈ちゃん、そのオレンジ色の提灯キーホルダーはどうするの?」
「あ、そうだった。この提灯キーホルダーちょっと気持ち悪いよね。スチールラックに置いておくかな」
美奈はそう言って歩き出した。
「美奈ちゃん、待って」
わたしは美奈の背中を追いかけた。
オレンジ色の提灯キーホルダーをどこに置いたのか確認しなくては気になって眠ることもできない。
美奈はリビングの植木鉢などが飾られているスチールラックにオレンジ色の提灯キーホルダーを置いた。
「取りあえずここに置いておくよ」
くるりと振り返り美奈は言った。
「うん、本当はごみ箱に捨てたいけど仕方ないね」
ごみ箱に捨ててもスチールラックやテーブルの上に戻ってきていたらそれこそ恐ろしい。それを想像するとゾクッとした。
余計なことは考えない、考えないようにしなくちゃ。わたしは両手で自分を抱きしめた。
「明日の朝、提灯キーホルダーをオーナーの真下さんに渡すね」
「うん、分かったよ」
「じゃあ、今日は早めに寝ようね」
わたしと美奈は部屋に向かう薄暗い廊下を歩いた。窓を叩く雨の音、長い木目調の廊下がミシミシと鳴る。
ザーザー、ミシミシ、ザーザーザーザー、ミシミシ。
この薄暗い廊下がどこまでも続くのではないかなんて錯覚に陥りそうになる。
「じゃあ、また明日ね」と美奈が部屋の前で立ち止まり言った。その声にほっとする。
「あ、うん、また明日ね」
わたしは、美奈に手を振った。
そして、わたしは一番奥の角部屋へ向かって歩こうとしたが、立ち止まり振り返る。
ツインテール姿の美奈が部屋のドアノブを握っていた。
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