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オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしは

早く寝てしまおう

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  コテージの部屋に戻ったわたしは今日は早く寝てしまおうと思った。そうすれば朝がやって来て家に帰ることができるのだから。

「 お風呂だけ入って寝るぞ」

  わたしは部屋を出て薄暗い廊下を歩きお風呂に向かった。ギシギシミシミシと不快な音が鳴る。

  女湯と書かれた暖簾をくぐる。脱衣場の木製の古めかしいロッカーにわたしは脱いだ服を入れた。タオルを持って浴室の扉をガラガラと開け中に入る。

  わたしは体を洗い湯船に浸かった。先程までの恐怖と疲れがふわふわと和らぐ。湯気で満たされて幸せだ。

  温かいお湯に全身浸かると緊張がほぐれていくようだ。うふふ、心地よい。

  今度こそはオレンジ色の提灯キーホルダーにさようならするし、それから浴衣の恐怖からも抜け出せる。わたしは明日は町田に帰る。

    もう何も恐れることはない。わたしはふわふわと温かいお湯に包まれた。

  わたしは湯槽から出た。

  脱衣場で体を拭き服を着て髪をドライヤーで乾かした。さてと、髪も乾いたから部屋に戻ろうと思ったその時、ふと思った。

  あのオレンジ色の提灯キーホルダーはどこにいってしまったのだろうかと。ああ、もうオレンジ色の提灯キーホルダーのことなんて考えるのはよそう。

  今、オレンジ色の提灯キーホルダーがどこにあるかなんてどうでもいいことなのだから。



  わたしは、着替えた服や下着類を袋に詰め脱衣場から出ようとした。その時、コトンと音がした。何かが落ちたようだ。何だろう?  と思いわたしは振り返った。ちょっと嫌な予感がする。

  見たくないけれど音がした方向に目を向けると床にオレンジ色の提灯キーホルダーが落ちていた。

「わっ!  ど、どうして!?」

  びっくりして心臓が止まるかと思った。

  オレンジ色の提灯キーホルダーがそこにあることが当たり前であるかのように存在している。浴衣の恐怖からやっと落ち着いたかと思ったのに今度はオレンジ色の提灯キーホルダーだと思うと嫌になる。

  わたしはオレンジ色の提灯キーホルダーなんて見なかったことにして脱衣場から出ることにした。

  オレンジ色提灯キーホルダーなんて存在していないんだから。そう自分自身に言い聞かせわたしは扉をそっと開いた。

  すると、扉の前に艶やかな黒髪のロングストレートヘアが美しい多香子が立っていた。

「わっ、多香子ちゃんびっくりするじゃない」

「えっ?  わたしはお風呂に入ろうと思って立っていただけだよ」

  見ると多香子は着替えが入っている袋を持っていた。

「あ、そうだったんだね。わたし今、お風呂から上がったんだけどいい湯だったよ」

  オレンジ色の提灯キーホルダーが落っこちているけれど……。

  多香子はオレンジ色の提灯キーホルダーなんて気にしてないはずだから言わなくてもいいかな。

「じゃあ、ごゆっくり」と多香子に手を振りわたしは急いで部屋に戻ることにした。

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