どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせて

なかじまあゆこ

文字の大きさ
3 / 83
死んだお兄ちゃんに会いたい

わたしの住む町

しおりを挟む

  わたし達の住むこの町は、人口の少ない小さな町だ。

 駅前には大型スーパーもコンビニもなくて小さな商店しかない。若者が好きなファッションビルはおろか、マクドナルドなどのファストフードもない。

  自然がいっぱいで緑に溢れたそんな場所なのだ。

  わたしと、ゆかりと真由の三人は幼なじみだ。小さい頃からずっと一緒にいる。

  二人がいるからわたしは、いつも笑顔でいられた。


 
 そして、いつもわたしの近くに三つ年上のお兄ちゃんもいた。

  わたし達三人は中学一年生。お兄ちゃんは生きていれば今年高校一年生だったのだけど……。

  わたしは、いつもお兄ちゃんの後を追いかけていた。大好きなお兄ちゃんだった。

  ある日お兄ちゃんが言った。

「史砂も大きくなったらこの町から出て行くだろう?  俺は、きっと食堂を継ぐからこの町に残ると思うけれど」

  お兄ちゃんは、少し長めの前髪をかきあげ、その切れ長の瞳で遠くを見つめながら言った。

「わたしも、この町にずっといたいな」
  
「まだ、小六だからそんなことを言ってるんだよ」

  お兄ちゃんは、わたしの顔を真っ直ぐ見て言った。

「ううん、きっと、大人になっても気持ちは変わらないかなって思う」

  当時のわたしは、小学六年生だったけれど、わたしは、ここに残るもんっと思っていた。

「都会には、夢が溢れているお店や、そうだな、格好いい奴だっていて史砂もいつか、結婚するんじゃないかな~」

  お兄ちゃんは、そう言って笑うと少し細くなる切れ長な目でにひひっと笑った。

「しない、しないよ。わたしは、結婚なんて絶対にしないから!」


「なんでだよ?」

  お兄ちゃんは、不思議そうな表情でわたしを眺めた。

「だって、わたしはお兄ちゃんが大好きだから、名字が変わるのなんて嫌だもん!  お兄ちゃんと同じ名前でいたいんだから!」

  絶対に、嫌だ嫌だと、わたしは両腕をバタバタさせた。


  お兄ちゃんはそんなわたしを見て、

「何を言っているんだよ。まだ、史砂は幼いからそんなことを言ってるんだよ。でも大きくなってお兄ちゃんなんかと話もしたくないよなんて言われたら、俺は泣いちゃいそうだな」

  なんて言ってお兄ちゃんは、切なげに笑った。

  この時のお兄ちゃんの笑顔は、なんだか儚げで綺麗だなと思ったことを覚えている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ママのごはんはたべたくない

もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん たべたくないきもちを ほんに してみました。 ちょっと、おもしろエピソード よんでみてください。  これをよんだら おやこで   ハッピーに なれるかも? 約3600文字あります。 ゆっくり読んで大体20分以内で 読み終えると思います。 寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。 表紙作画:ぽん太郎 様  2023.3.7更新

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)

カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ…… 誰もいない野原のステージの上で…… アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ——— 全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。 ※高学年〜大人向き

処理中です...