12 / 83
お兄ちゃん!お兄ちゃん!!
わたしの住む小さな町
しおりを挟むわたしは、気分を変えるため、外に出ることにした。
夏の日差しが眩しい。夏休みなんだなと思った。太陽がわたしの肌を焦がしそうなくらい強烈だ。
「史砂ちゃん、こんにちは」
「おじさんこんにちは」
近所のおじさんとも顔見知りで、必ず挨拶を交わす。
人口も少ない穏やかな小さな町。みんなが優しくて、ゆったりと時間が流れているそんな場所。
何もないけど、わたしはみんなに守られている気がして、ここが本当に好きだった。
木々も川も畑もそのすべてがキラキラして見えた。
だけど、そのキラキラして見えたもの達が一瞬にして裏返ってしまった。
そう、あの日から……。
お兄ちゃんが事故に遭って亡くなったあの日から……。
わたしの視界は靄がかかったように見える。
綺麗な木々も小鳥のさえずりも、可愛い猫や犬も大好きだったもの達の輝きも一瞬にしてわたしの心から消えた。
気がつくと足が展望台へと向かっていた。
展望台へは夕方になってから行くつもりだったけれど、まぁいいか。
展望台へと続く道をひたすら歩く。
木々が生い茂り途中にお地蔵さんが三体ありこのお地蔵さんはニコニコ笑っているようにも見える。
そして、木々がざわざわお喋りをしてるみたいだ。
わたしは、黙々と歩き続ける。
鳥達の声も聞こえる。
そして、木々がうっそうとした道を抜けると、煉瓦造りの展望台が見えてきた。
あの場所に果たしてわたしの願いを叶える何かがあるのかな?
本当は半信半疑なんだけれど、何かにすがりたいこの気持ち。
こんなにどこまでも青く晴れている空なのに、展望台はいつもより暗くくすんで見えるのは何故なんだろうか……。
わたしは、一歩一歩展望台へと近づく。展望台を見上げると、史砂よく来たなとでもお兄ちゃんが言ってるかのように見えた。
これは、わたしの勝手な解釈なんだろうけれど……。
そして、わたしは展望台の前に辿り着くと、
「今日も来たよ」と言った。
すると、わたしの周りにある木々がざわざわざわざわと音を立てた。
ざわざわざわざわざわざわと木々が揺れる。史砂ようこそ! と言っているかのように感じた。
「どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせてください」
わたしは、掌を合わせて祈った。
すると風がびゅ~と吹きわたしの髪の毛をなびかせた。
そして、何かが始まりそうな予感がしたのだった。
そう、身体の中から何かが込み上げてくる。ゾクゾクゾクゾクゾワゾワと。
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ママのごはんはたべたくない
もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん
たべたくないきもちを
ほんに してみました。
ちょっと、おもしろエピソード
よんでみてください。
これをよんだら おやこで
ハッピーに なれるかも?
約3600文字あります。
ゆっくり読んで大体20分以内で
読み終えると思います。
寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。
表紙作画:ぽん太郎 様
2023.3.7更新
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
童話絵本版 アリとキリギリス∞(インフィニティ)
カワカツ
絵本
その夜……僕は死んだ……
誰もいない野原のステージの上で……
アリの子「アントン」とキリギリスの「ギリィ」が奏でる 少し切ない ある野原の物語 ———
全16話+エピローグで紡ぐ「小さないのちの世界」を、どうぞお楽しみ下さい。
※高学年〜大人向き
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる