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ならまちに住む町屋奈夜
ならまちの家はうなぎみたい
しおりを挟む狛子と狛助は鹿のボールペンを大事そうに握りしめ文具店の奥にあるカフェ部屋に向かって歩いた。
「おばあちゃんのお家は奥行きが広くて細長いね」
狛子がキョロキョロしながら言った。
「うふふ、そうね。うなぎの体に似ているでしょう?」
「うなぎ? あ、わたしうなぎ食べたいな」
「僕もうなぎ食べたいです」
「あ、狛助ってばヨダレを垂らしちゃダメだよ~」
「だって、狛子ちゃん香ばしくて柔らかいふわふわのうなぎを想像してごらんよ。ヨダレが垂れちゃうよ」
「う~ん、ふわふわで柔らかいうなぎね。わぁ、わたしもヨダレが垂れそうになった~」
「あらあら、うなぎね。美味しいよね。おばあちゃんも食べたくなるわ。でもね、そのうなぎを食べる話じゃなくてね」
おばあちゃんは口元に手を当てて笑った。
「えっ? あ、うな丼やうな重の話じゃないんだね」
「違うんですか~」
狛子と狛助はなんでも食べ物の話に結びつける。なんとも食いしん坊な狛犬だなと思うと呆れてしまう。
「おばあちゃんの家はね、細長い体を持つうなぎのように長くて奥行きがあるから似ているかなって話しだったのよ」
おばあちゃんがそう言うと、狛子は、「ふ~ん、よくわからないけどおばあちゃんの家は細長いもんね」と言った。
「うふふ、分かりにくい表現でごめんなさいね。じゃあ、お菓子を持ってくるから座っててね」
「は~い! お菓子待ってるよ」
「待ってま~す!」
狛子と狛助はおばあちゃんが用意した座布団に腰を下ろした。
わたしも座布団に腰を下ろし「食いしん坊~」と言ってやった。
「ふん、奈夜ちゃんも食いしん坊のくせに」
「えっ? わたしは食いしん坊じゃないよ」
「神社で美味しい食べ物がたくさん食べられますようにって祈っていたのは誰かな?」
狛子はふふんと鼻を鳴らして笑った。
「わっ! どうしてそれを……神社で聞いていたの? 狛子ちゃんって人の心を読むことが出来るのかな?」
わたしはびっくりして勝ち誇った表情の狛子の顔を見て訊ねた。
「あはは、人の心を読むって……奈夜ちゃんってば神社の拝殿に向かって声を張り上げてお祈りしてるよね」
「……わたし声を張り上げていたかな!?」
「気づいてなかったんだ~」
「あ、うん。心の中でお祈りしているつもりだったよ」
「残念ながら丸聞こえでした~」
「丸聞こえでした~」と狛子と狛助はクスクス笑う。わたしはなんだか恥ずかしくなり穴の中に隠れたくなった。
「お待たせ~お菓子とお茶を持ってきたわよ」
お盆にお菓子とお茶を載せて入って来たおばあちゃんが天使のように見えた。
「わ~い、待っていました~お菓子~」
「わ~い、もうヨダレが垂れちゃう~」
狛子と狛助はお菓子と言う言葉に目を輝かせむくっと立ち上がりぴょんぴょんと飛び跳ねた。全く騒がしい狛犬達だ。
「あらあら、そんなに喜んでもらえるとおばあちゃん嬉しいわ」
おばあちゃんは言いながらテーブルに最中と奈良漬にそれから湯気の立った緑茶を置いた。
「わっ、最中だ~奈良漬もあるよ」、「美味しそう~」狛子と狛助は満面の笑みを浮かべる。
「さあさあ、食べてね」
「いただきま~す」と狛子と狛助は声を合わせて言った。
わたしも「いただきます」と手を合わせた。
狛子と狛助は最中をパクパク食べ「美味しい~」と笑みを浮かべている。
そんな二人(二匹)を眺めているとわたしは微笑ましい気持ちになりながらお箸を奈良漬に伸ばし口に運んだ。
うん、美味しい。酒粕の香りがふわりとしてちょっとクセのある味だけどわたしは幼い頃から奈良漬が好き。
因みに奈良漬は白瓜、キュウリ、スイカ、生姜などの野菜類を塩漬けにして酒粕に漬け込み酒粕を何度も替えながら漬け込んで作られた奈良県の伝統的な漬物なのだ。
「奈夜ちゃんは奈良漬が好きよね」
わたしが奈良漬をパリパリシャリシャリと食べているとおばあちゃんが声をかけてきた。
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