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さあ、行こう

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「でもさ、俺ちょっとワクワクしてきたよ」

「俺のじいちゃんはあてにならないけど」

「うん、それでも希望の光がチラチラと見えてきたぜ」

  そうだ。ちょっとだけど、俺以外に人間がいるかもしれない希望が持てた。無いより有る方が嬉しい希望の光だぜ。

「それは良かったよ。じいちゃんも草葉の陰で喜んでいるよ」

「はぁ?  猫助のじいちゃん生きてるじゃん!  しかもめちゃくちゃ元気じゃないか」

「あ、そうだった。今日はマラソン大会に参加するって言ってたな」

  猫助は照れたように肉球のある手で頭をぽりぽり掻いた。どうして照れているのかさっぱり分からない。

「ねえ、さっきから猫太君と猫助はコントしてるの?」

「あ、にゃんぴ居たんだ!」

  猫助の奴はとんでもないことを言う。

「猫助君!  わたしを怒らせたいのかな?」

「そんなことないよ。にゃんぴ、君の美しい白い毛並みは輝いているさ。みんなが感動する美しさだぜ!」

「ふん!  猫助君、馬鹿にしないでよね」

   にゃんぴはぷりぷり怒っているけれど、その口元はぷくっとしていてちょっと嬉しそうに見えた。

「さあ、ケンカしないで楽しもうぜ!」

  俺はニカッと笑い二人(二匹)の肩をぽんぽんと叩いた。

「ケンカしないでだって、にゃんぴ」

「分かったわよ。猫太君に免じて許してあげるわよ。楽しもう。それにわたしもちょっとだけワクワクしているよ」

  にゃんぴはにゃははと笑った。

 「さあ、行こうぜ~」

「よ~し!」

「にゃはは、行こう~」

  俺達は元気よく歩き出した。
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