わたし沖縄で働くことにしました(沖縄の風や味が忘れられなくて)

なかじまあゆこ

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大人の参観日

ゴニョゴニョ

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「どうしようか、真理子?」

「どうしよう、みどりちゃん?」

 わたし達は顔を近づけ合いゴニョゴニョ、ゴニョゴニョと相談する。

「そうだね!」 と言い合う。


 わたしと真理子は、あのバカ親四人に、何をするのか決めた。真理子と話をしている演技をしながら、両親達のいる木に近づく。

 そして。

 塵取りの中に入っている夏の落ち葉をいっせいのでと真理子と目で合図を仕合、「えいっ!」と親達目がけバサバサバサとぶっかける。

「うぎゃ~!」

「ぎゃーっ!」

「なんだ~!」

「ふぎゃ~!」

 と、親達がほぼ同時に叫ぶ。

 その時、わたしとお母さんの目が合った。

「あ、みどりに真理子ちゃん、なんて酷いことをするのよ~」

 お母さんは、頭の上に夏の葉っぱをのせて顔を真っ赤に上気させ怒っている。その顔は真っ赤な赤鬼みたいでめちゃくちゃ面白い。

 他の三人の親達も顔を真っ赤にして怒っている!

「真理子~逃げよ~」

「よし、逃げよ~」

 わたしと真理子は、キャッキャと笑い合いながら逃げた。

 わたしのお母さんは、「待ちなさい、みどり~」と叫び追いかけて来るものだからなんだか楽しい。


「あはは」

 もう、笑ってしまう。面白い。

 逃げて逃げて逃げまくるわたしと真理子。

 もうダメだ。とっても楽しいよ。だって、わたしのお母さんは本気で追いかけてくるのだから。わたしは、後ろを振り向きお母さんの様子を窺いながら走る。

 と、その時、ドスンという衝撃を感じた!!

 わたしは、よそ見をしていて何かにぶつかったのだ。

 何だろう?   と、顔を上げると……。


 真中さんの恐ろしい顔が目の前にあった。


「並木さんに梅木さん!」

 真中さんの甲高い声が響いた!

「……」

「何をやっているんですか~」

 ひぇ! 恐ろしい。

「す、すみませ~ん」とわたしと真理子は謝る。

 振り返ると、わたしを追いかけていた、お母さんの足がスローモーションのように止まった。

 慌てた表情のお母さんは、

「あ、あの。すみません。並木みどりの母です」

 真中さんも目を見開きびっくりした表情をしている。それはそうでしょう。娘達の勤務中に追いかけっこをするなんて信じられないと思う。


 続いて。

「みどりの父です」とお父さんはぺこりと頭を下げる。

「真理子の父です」

「真理子の母です。いつも娘がお世話になっております」

 と親達が真中さんに挨拶をした。

「こ、これはこれはどうも。お父様にお母様」

 真中さんはとってつけたをつけた笑顔を浮かべている。だけどきっと内心なんなんだこの親子はと思っているに違いない。

 今回のこの出来事でわたし達の印象はより悪くなったと思う。流石のお母さんもしまったというような表情になっている。

 夏の暑い日差しと転がったほうきに塵取り。

 真中さんにわたしと真理子と両親達。

少し異様な緊張感が流れる沖縄の午後。


「す、すみません~わたし達が娘達の仕事の邪魔をしてしまいまして……」

 お母さんは、深く頭を下げた。

 ペコペコと続いて残りの三人も頭を下げた。

「頭を上げてください。」

 真中さんは、まあまあと眉間に皺を寄せ困った表情をしている。

「すみませんでした。わたし達は観光に行ってまいりますので……」

お母さんは頭を上げて言った。

「久しぶりに娘さん達の顔を見たら仕事ぶりを見たくなるのは分かりますよ。今日一日見学されてもいいですよ」

真中さんは笑顔で言った。

真中さん!    

有り難い御言葉ですが、わたしと真理子にとっては有り難迷惑ですよ。
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