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高尾山とムササビカフェ食堂
ほっぺたが落っこちるアップルパイ
しおりを挟む考えていても仕方がない。今はこの目の前にあるアップルパイを食べたい。
わたしは、「いただきま~す」と言ってアップルパイに手を伸ばす。口に運んだアップルパイは熱々で生地がサクッとしていて中身はゴロゴロとたっぷりのリンゴが甘酸っぱくて美味しい。
「うわぁ~口の中が甘酸っぱくて幸せいっぱいだよ~」
わたしは思わず感嘆の声を上げてしまう。
「お客さんありがとう。そんなに幸せそうな顔をして食べてくれると高男さんが喜ぶよ」
ムササビがうひひと笑いわたしの顔を見ている。
「こちらこそありがとう。このアップルパイを食べて元気が出たよ」
「アップルパイ美味しかったですか。ありがとうございます」
高男さんがニコニコと笑いながらこちらに向かってきた。
「はい、熱々サクッサクッでリンゴが甘酸っぱくてもうめちゃくちゃ美味しいですよ」
「それはアップルパイを焼いた甲斐がありますよ。これ、サービスです」と言って高男さんがわたしの目の前にバニラアイスを置いた。
「わっ、いいんですか?」
「どうぞ。このムササビカフェ食堂を見つけてくれたお礼ですよ」
「では、遠慮なくいただきます」
わたしは目の前のバニラアイスに目を輝かせた。口に入れた瞬間ひやっと冷たくて濃厚なバニラクリームがふわふわふわりと広がる。
「うわぁ~バニラアイスもめちゃくちゃ美味しいですよ」
わたしのほっぺたがぽとりと落っこちた。
「わっ、お客さんのお姉ちゃんのほっぺたが落っこちているよ~拾わなきゃ」
「ちょっとムササビちゃん、わたしのほっぺたを引っ張らないでもらえますか」
わたしのほっぺたをぷにーっと引っ張るムササビの手を掴み抗議をする。
「だって、お姉ちゃんのほっぺたぽとりぽとりと落っこちてしまいそうなんだもん」
「……あのね、ほっぺたは地面に落っこちたりしないから。引っ張らないで痛いよ。それと、わたしの名前は真歌です」
わたしはほっぺたを撫でながらムササビの顔を見た。
「へぇ~真歌ちゃんって名前なんだね。うふふ、可愛らしいな。わたしなんてムササビなんてありきたりな名前で嫌になってしまうよ」
「はぁ? ムササビって変わった名前だと思うよ。聞いたことないもん」
「え!? 真歌ちゃんムササビを知らないの?」
ムササビは目を丸くした。そして、「モモンガは知ってるかな?」と訳のわからないことを聞いてきた。
「モモンガはムササビと似てる哺乳類でしょう。確かムササビの方が大きくて空飛ぶ座布団と呼ばれていてモモンガは空飛ぶハンカチと呼ばれているんだよね? それがどうしたの?」
「ちょっと、真歌ちゃんってばムササビもモモンガも知っているじゃない」
ムササビはわたしの肩をペシペシと叩きながら言った。
「だって、ムササビもモモンガも見たことはないけど高尾山に生息してる動物だよね」
「うん、そうだよ」
ムササビはわたしの目を真っ直ぐ見ている。何だろう? このちょっと妖しげな雰囲気は。
わたしは、ムササビの真っ直ぐ見つめてくるその目に吸い込まれそうになる。
「真歌ちゃんはムササビは見たことがあるじゃない」
ムササビの大きな黒目がキラッと輝く。これはなんだか嫌な予感がする。わたしは、その答えを聞きたくないのに「それってどういう意味?」と尋ねてしまった。
「うふふ、それはもちろん目の前にムササビが居るからだよ」
ムササビはさも当然という顔をした。
「……それは、名前がムササビちゃんってことだよね?」
「うん、 わたし名前もムササビだよ」
「名前も……」
「そうだよ、名前もムササビだからありきたりと言ったんだよ」
ムササビは口を尖らせている。
「ムササビちゃんは何を言ってるのかな?」とわたしは尋ねた。
「それは、わたしがムササビって動物だからだよ~」
ムササビはそう答え胸を張った。
「あはは、ムササビちゃんってば冗談言わないでよ」
わたしは、あははと笑ってみせた。けれど……。
「おい、ムササビ、もう正体をバラしたのかい」
高男さんがやれやれという表情で肩をすくめた。
なんてまさかの言葉が高男さんの口から飛び出した。
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