15 / 19
気付いた気持ち
しおりを挟む
昼休み、自分の机で本を読んでいると、ふいに、ドアの所からうちのクラスを覗く及川くんが目に入った。
咄嗟に気付かない振りをして、手元の本に視線を落とす。
「あ、鈴木くん!」
そう呼ぶのが聞こえて、窓際の私の位置から二人の会話が聴こえるはずもないのに、つい耳を澄ましてしまう。
何の話をしているんだろう、そう思った矢先に、
「早野!」
鈴木くんが私を呼んだ。
「な、なに…?」
呼ばれるままにドアまで向かい、遠慮がちに聞く。
「及川がさ、話があるっていうんだ。俺も一緒でいいって言うんだけど、今日俺日直でさ、職員室呼ばれてるから。聞いてきなよ」
「え…っ、いいの、鈴木くん」
及川くんが驚いた顔をして鈴木くんを見る。
「いいよ。早野への嫌がらせの話だろ」
「う、うん」
「でも、どさくさに紛れて口説くなよ」
一言そう釘を指すと、鈴木くんはニッと笑って教室を出ていった。
「じゃあ、ちょっといいかな」
そう言って及川くんが廊下を歩き出す。
頷いて私も横を歩いた。
「まさか二人にさせてくれると思わなかったから、ちょっとびっくり」
頬を掻きながら及川くんが天井を見上げる。
同感だ。
そして、久しぶりのこの距離に、少し緊張する。
渡り廊下に出ると及川くんが立ち止まり、話し始めた。
「楓音ちゃんに嫌がらせしていた子、わかったよ」
「え…っ」
「鈴木くんの言う通り、俺に関係してた。ちゃんと話して、もうしないって約束してくれたから、もう大丈夫」
「そっ…か…」
「誰か知りたい?」
「う、ううん!もうしないなら、それでいい」
「うん。楓音ちゃんならそう言うと思った。嫌な思いさせてごめんね」
「ううん!あ、ありがとう。及川くん」
「なんで楓音ちゃんがお礼言うのさ」
そう言って呆れたような顔をして及川くんが笑った。優しい瞳と目が合って、急に恥ずかしくなって目を反らした。
「そ、それにしてもっ、やっぱり及川くんってモテるんだね…!」
「急に、何それ。つーか、モテてるの楓音ちゃんでしょ」
「え…、モテてないよ、何言ってるの…」
「鈴木くん。強敵すぎるでしょ」
そう言いながら、及川くんは困ったような顔をして笑った。
「楓音ちゃんの上履きに落書きされてた日さ」
「うん…?」
「あのとき、鈴木くんが言ってくれなかったら、俺は楓音ちゃんが嫌がらせされてるのに気付けなかった」
「…うん」
「俺のせいで楓音ちゃんが嫌がらせされてたのにな。鈴木くん、わざと教えてくれたのかな」
「思わず怒鳴ってしまったって言ってたけど…」
「どうかな。鈴木くん真っ直ぐだからね。楓音ちゃんじゃない子を好きになってくれれば良かったのに」
そう言って及川くんが笑った。
言葉とは裏腹に、穏やかな表情…
その顔を見て、ふと思った。及川くんって、もしかしたら、鈴木くんのこと結構好きなのかも。
性格が真反対だからこそ、惹かれるものがあるのかもしれない。
次の日は土曜日だった。
学校は休みだったけど、朝から予備校で模試だった。
全教科終わったのは夕方で、鈴木くんと駅まで帰ってきたのだけれど、あたしは駅の本屋に寄りたくて、改札の所で鈴木くんと別れた。
9階の本屋に向かおうとエスカレーターに乗ろうとしたところで、目の前のカップルに足が止まった。
エスカレーターの一段上には女の子。
見たことがある。名前まではわからないけど、及川くんのクラスの女の子だ。
一段下の男の子と仲良く繋がれた手。
女の子の嬉しそうな表情。
どう見たって仲良しのカップル。
だけど、そんなわけない。
あの後ろ姿も、一瞬見えた横顔も、
及川くんに間違いないのだ…
私は咄嗟に方向転換すると、改札に向かった。
なんで…?
帰り道、私の頭の中はその言葉でいっぱいだった。
及川くんが好きなのは、私ではなかったのだろうか。鈴木くんが強敵だと、昨日話していたばかりじゃないか。
人のことを好きだとか言っておいて、他の女の子とあんな風に手を繋いだり笑ったりできるなんて、信じられない。
いや、でもよく考えれば " 好きだ " という言葉を本人から聞いたのは一度しかない。現に私だって、及川くんの気持ちがどこまで本気かわからないと、疑っていた。
私が疑っていた通り、元々そこまで本気ではなかったということなんだろうか。
鈴木くんは私が答えを出すまで待てるよと言ってくれたけど、及川くんだってそうとは限らない。そもそも始まりだって、『ゲーム』だったじゃないか。
それにしたって…
一言ぐらい言ってくれたっていいじゃない。
どんなに優しくされても、いつもどこかで思っていた。及川くんが私なんかを好きになる理由がないと。
その通りだっただけのことだと自分に言い聞かせながら、胸が痛むのを抑えていた。
なのに、家に帰って部屋で一人になったら、涙が止まらなかった。
嬉しかったの。
勉強ばっかりだった私を、初めて女の子として扱ってくれた。
可愛いって言葉も、優しい笑顔も、私にとっては特別なものだった。
私を好きになる理由がないと予防線を張っていたけど、惹かれていた。
好きになって傷付くのが怖かっただけだ。
今なら、わかる。
私、及川くんが好きなんだ。
咄嗟に気付かない振りをして、手元の本に視線を落とす。
「あ、鈴木くん!」
そう呼ぶのが聞こえて、窓際の私の位置から二人の会話が聴こえるはずもないのに、つい耳を澄ましてしまう。
何の話をしているんだろう、そう思った矢先に、
「早野!」
鈴木くんが私を呼んだ。
「な、なに…?」
呼ばれるままにドアまで向かい、遠慮がちに聞く。
「及川がさ、話があるっていうんだ。俺も一緒でいいって言うんだけど、今日俺日直でさ、職員室呼ばれてるから。聞いてきなよ」
「え…っ、いいの、鈴木くん」
及川くんが驚いた顔をして鈴木くんを見る。
「いいよ。早野への嫌がらせの話だろ」
「う、うん」
「でも、どさくさに紛れて口説くなよ」
一言そう釘を指すと、鈴木くんはニッと笑って教室を出ていった。
「じゃあ、ちょっといいかな」
そう言って及川くんが廊下を歩き出す。
頷いて私も横を歩いた。
「まさか二人にさせてくれると思わなかったから、ちょっとびっくり」
頬を掻きながら及川くんが天井を見上げる。
同感だ。
そして、久しぶりのこの距離に、少し緊張する。
渡り廊下に出ると及川くんが立ち止まり、話し始めた。
「楓音ちゃんに嫌がらせしていた子、わかったよ」
「え…っ」
「鈴木くんの言う通り、俺に関係してた。ちゃんと話して、もうしないって約束してくれたから、もう大丈夫」
「そっ…か…」
「誰か知りたい?」
「う、ううん!もうしないなら、それでいい」
「うん。楓音ちゃんならそう言うと思った。嫌な思いさせてごめんね」
「ううん!あ、ありがとう。及川くん」
「なんで楓音ちゃんがお礼言うのさ」
そう言って呆れたような顔をして及川くんが笑った。優しい瞳と目が合って、急に恥ずかしくなって目を反らした。
「そ、それにしてもっ、やっぱり及川くんってモテるんだね…!」
「急に、何それ。つーか、モテてるの楓音ちゃんでしょ」
「え…、モテてないよ、何言ってるの…」
「鈴木くん。強敵すぎるでしょ」
そう言いながら、及川くんは困ったような顔をして笑った。
「楓音ちゃんの上履きに落書きされてた日さ」
「うん…?」
「あのとき、鈴木くんが言ってくれなかったら、俺は楓音ちゃんが嫌がらせされてるのに気付けなかった」
「…うん」
「俺のせいで楓音ちゃんが嫌がらせされてたのにな。鈴木くん、わざと教えてくれたのかな」
「思わず怒鳴ってしまったって言ってたけど…」
「どうかな。鈴木くん真っ直ぐだからね。楓音ちゃんじゃない子を好きになってくれれば良かったのに」
そう言って及川くんが笑った。
言葉とは裏腹に、穏やかな表情…
その顔を見て、ふと思った。及川くんって、もしかしたら、鈴木くんのこと結構好きなのかも。
性格が真反対だからこそ、惹かれるものがあるのかもしれない。
次の日は土曜日だった。
学校は休みだったけど、朝から予備校で模試だった。
全教科終わったのは夕方で、鈴木くんと駅まで帰ってきたのだけれど、あたしは駅の本屋に寄りたくて、改札の所で鈴木くんと別れた。
9階の本屋に向かおうとエスカレーターに乗ろうとしたところで、目の前のカップルに足が止まった。
エスカレーターの一段上には女の子。
見たことがある。名前まではわからないけど、及川くんのクラスの女の子だ。
一段下の男の子と仲良く繋がれた手。
女の子の嬉しそうな表情。
どう見たって仲良しのカップル。
だけど、そんなわけない。
あの後ろ姿も、一瞬見えた横顔も、
及川くんに間違いないのだ…
私は咄嗟に方向転換すると、改札に向かった。
なんで…?
帰り道、私の頭の中はその言葉でいっぱいだった。
及川くんが好きなのは、私ではなかったのだろうか。鈴木くんが強敵だと、昨日話していたばかりじゃないか。
人のことを好きだとか言っておいて、他の女の子とあんな風に手を繋いだり笑ったりできるなんて、信じられない。
いや、でもよく考えれば " 好きだ " という言葉を本人から聞いたのは一度しかない。現に私だって、及川くんの気持ちがどこまで本気かわからないと、疑っていた。
私が疑っていた通り、元々そこまで本気ではなかったということなんだろうか。
鈴木くんは私が答えを出すまで待てるよと言ってくれたけど、及川くんだってそうとは限らない。そもそも始まりだって、『ゲーム』だったじゃないか。
それにしたって…
一言ぐらい言ってくれたっていいじゃない。
どんなに優しくされても、いつもどこかで思っていた。及川くんが私なんかを好きになる理由がないと。
その通りだっただけのことだと自分に言い聞かせながら、胸が痛むのを抑えていた。
なのに、家に帰って部屋で一人になったら、涙が止まらなかった。
嬉しかったの。
勉強ばっかりだった私を、初めて女の子として扱ってくれた。
可愛いって言葉も、優しい笑顔も、私にとっては特別なものだった。
私を好きになる理由がないと予防線を張っていたけど、惹かれていた。
好きになって傷付くのが怖かっただけだ。
今なら、わかる。
私、及川くんが好きなんだ。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる