【完結】公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

文字の大きさ
81 / 105
〜11. エピローグ〜

特別な来客

しおりを挟む
一週間後──

「ねぇ、レイラ、ちょっと張り切り過ぎではなくて…?」

朝から慌ただしく使用人たちがわたくしの部屋を出入りするなか、髪を結ってくれているレイラに、わたくしは鏡越しにそう声を掛けた。

「そんなことありませんわ…! 今日は大切な御客様がお越しになる日ですもの…!」

レイラの気合いの入りように戸惑う。先ほど着付けられたドレスはわたくしが事前に指示していたものよりも豪華だし、髪の結い方もいつもより手が込んでいる。

「大切な御客様って…、それほどの人では…」
「あぁ、ほら、動かないでじっとしてて下さい…!」

そう言って、レイラが真剣な表情でわたくしの髪に大きな白い花飾りを付ける。殿下がいつもわたくしにくださる薔薇、ロゼ・ブランシュによく似ている。

「この花飾りは…?」
「今日のためにサイラス殿下から贈られたものですわ。いつもの薔薇はもう花の時期が過ぎてしまったからと、職人に特注で作らせたそうですよ」

レイラの言葉に、殿下まで関わっていることに気付く。もちろん、このドレスを着付けられた段階で、それは薄々感じてはいたけれど。

薄桃がかった白色を基調にしたドレス。レースが幾重にも重なった裾は薔薇の花びらのように広がり、このドレス自体がまるでロゼ・ブランシュのようだ。

「このドレスも、殿下の仕業ね…?」
「ふふ。はい。よくお似合いですわ」
「たかが一人の来客にドレスまで特注するなんて…」
「婚儀にお越しになれなかったロザリア妃殿下の御父上様に、今日は最高に美しい姿を見せるのだと、殿下も張り切っていましたわ」

嬉々としてそう答えたレイラに苦笑する。そう。今日は父上がこの城に来ることになっているのだ。



「ロザリア…!」

全ての支度を終えて部屋を出ると、殿下がちょうど迎えに来てくれたところだった。

「殿下…」

正装に身を包んだ殿下の姿にドキッとする。落ち着いた光沢感のある銀色の装いが殿下の雰囲気に良く似合っている。

胸元に金糸で施されたレリック公国の荘厳な紋章。それは殿下がこの国の王子である証。一度は失ったその地位を、血の滲む努力で取り戻し、こうして今、殿下はここにいる。

「よく似合っている、ロザリア…」

大きな手が頬に触れた瞬間、それまで殿下に見惚れていたわたくしは我に返った。

「あの、やりすぎですわ、殿下…」
「何がだ…?」
「たかが一人の来客にわたくしのドレスまで特注するなんて…」
「あぁ、そのことか。貴女の父上が来るのだ。やり過ぎということはない。それに…」

そう言いながら、殿下がわたくしの手を取り、甲に優しく口吻キスをする。

「ロゼ・ブランシュのドレスに身を包む愛しい妻を、何よりも僕が見たかったのだ」
「─…っ!」

嬉しそうに微笑む殿下に、わたくしはカァ…っと頬を熱くする。想いが通じ合ったあの夜以降、殿下は自分の気持ちを真っ直ぐに伝えてくれるようになった。そんな殿下を嬉しく思いながらも、わたくしはまだ慣れずにいる。

「レ、レイラもいるのですから、控えてくださいませ…!」
「いや、しかし…」
「ふふ。大丈夫ですわ、ロザリア妃殿下。サイラス殿下は以前から大して変わっておりませんから」

そう言ってレイラが笑う。実は、殿下の想いに気付いていなかったのはわたくしだけで、周りにいる使用人や殿下の側近の者たちは、とうの昔に気付いていたらしい。彼らは、殿下とわたくしの様子を見るたびに、嬉しそうに笑っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒
恋愛
「地味な令嬢は妃に相応しくない」──そう言い放ち、セレナとの婚約を一方的に破棄した子爵令息ユリウス。彼が次に選んだのは、派手な伯爵令嬢エヴァだった。貴族たちの笑いものとなる中、手を差し伸べてくれたのは、幼馴染の第2皇子・カイル。「俺と婚約すれば、見返してやれるだろう?」ただの復讐のはずだった。けれど──これは、彼の一途な溺愛の始まり。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

処理中です...